2話 ヒロイン紹介 バージョン1
キュルン達を買い取ってから5年
俺が産まれて10年が経過した
つまり俺は10歳になった
「パルス様ー!!」
木の上で寛いでいたら、下から声が聞こえた
降りて相手を確認する
「旦那様が探してましたよ!!」
そこにはキュルンが居た
何故かメイド服を着せられてるキュルン……
これは誰かに着せられたな
「父上が?」
俺はキュルンの格好をスルーして話を続ける
「はい! 家庭教師の人が到着したと……」
家庭教師か……
普通の家庭教師ではないんだよなぁ
魔法を教える家庭教師だ
俺は12歳でキャンダリオンに入学するのは決まっているが……基礎的な魔法は覚えていた方が良いって事で家庭教師が雇われた
因みに、この世界では魔法にランクがあり
EからSまである
Eは誰でも練習したら出来るような基本的な魔法
Dはある程度の応用を効かせた魔法
例えば……火を点けるのはEランクの魔法だが……火を飛ばすのはDランクだ
Cは更に複雑にした魔法……
キャンダリオンを卒業する為に最低でもここまで覚えないといけない
Bは更に複雑に……ここまで習得出来たら、就職には困らないらしい
Aは習得出来たら、かなり自慢できるレベルらしい
王様の護衛とか任されるレベルだ
そしてSは……4種類しか存在しない魔法で、1つでも習得出来たら伝説になれるレベルだ
どうしてそんな事を知ってるかって?
ヒロインのルートの1つが、この魔法関係の話だったからな
キュルンがSランクの魔法を習得して伝説になる話だ
「よし、なら行くか!」
俺はキュルンと二人で家庭教師が待つ部屋に向かう
すると途中の廊下で……
「お兄ちゃん!!」
「パリン? どうした?」
一人の幼女が二人のメイドを連れて向こう側から歩いてきた
幼女の名前はパリン、俺ことパルスの妹だ
パルスと違って両親の良いところに似て美人だったりする
……なんでパルスはこうなれなかった
「遊ぼう!」
「悪いなパリン、これから家庭教師の先生の所に行かなきゃいけないんだ」
「えー!!」
パリンはヒロインの一人だ
学園には1学年後輩として入学してくる
「じゃあキュルン兄ちゃん遊ぼう!」
「申し訳ありません……僕もパルス様に着いていかないといけなくて……」
この様にキュルンにも兄として慕っている
あれだな、妹枠のヒロインだな
パリンのルートに入った場合、普通に交際して、ちょっとしたトラブルがあったりするが
パルスの協力や、レッド達が認めていた事で二人は結ばれる
そしてキュルンは正式にレーガルン家の人間になるわけだ
そんな訳で、俺としてはキュルンとパリンがくっついてくれた方が、色々と楽なんだがな……
「何を考えてるのですか?」
メイドの一人が俺に聞いてくる
「微笑ましいと思ってるだけさ、キャシーとマイラはこれからの予定は?」
キャシーとマイラ……ゲームには出ていないが……
キュルンと一緒に買い取った奴隷の二人だ
銀髪で無表情なのがキャシー
赤髪のツインテールがマイラだ
因みに名前は俺がつけた
キュルンも含めて、三人とも俺が名付けた!!
「パリン様がトラブルを起こさないか見張る予定です!!」
マイラが元気よく答える
余談だが、キャシーは俺より1つ上の11歳
マイラは1つ下の9歳だ
「パリン様、パルス様もキュルンも忙しいのですから邪魔してはいけません」
「ぶー!!」
「また今度御相手しますから……」
「絶対だからねー!!」
パリンは歩き出した
「では、失礼します」
「失礼します!!」
キャシーとマイラもパリンに着いていく
「さて、俺達も行くか」
「そうですね」
俺とキュルンは家庭教師の待ってる部屋に向かう
・・・・・・・
そんな訳で辿り着いたのは勉強部屋だ
自室とは別に勉強用の部屋があるとは……金持ちの考えはわからんな
これが貴族の普通なのか?
「おや、君がパルスお坊ちゃんで?」
本を読んでいた女性が俺を見る
「はい、俺がパルスです」
「そうですか……では」
コホンと女性は軽く咳払いをして礼をする
「初めまして、貴方の教師を命じられた『メーテル』と申します」
俺も礼をしてから
「初めまして、自分はパルス・レーガルンです、よろしくお願いします」
挨拶は大事
「さて、挨拶も終わりましたし……私が貴方に教える事は何か、というのを説明しましょう……その前に君は?」
メーテルはキュルンを見る
「あっ! キュルンと申します!! パルス様の召し使いをしております!」
「授業に召し使いの手はいりません、君は他の仕事をするか……授業が終わるまで休憩でもしていてください」
「わ、わかりました……」
そう言ってキュルンは俺に礼をしてから部屋を出ようと歩き出す
まずいな……どうにかしてキュルンに魔法の才能があることを周りに見せないといけないのに
このままではキュルンがキャンダリオンに入学できない
今、レッドが俺の護衛に入学させようとしているのはキャシーだ……
いや、あの子も入学するのは構わないが……キュルンも入学してくれないと困る
「待てキュルン」
「?」
俺はキュルンを呼び止める
キュルンは振り返る
「お前の主な仕事は俺の世話だろ? 何かあった時の為に、この部屋に居てくれないか?」
「何か……ですか?」
ピンとこないキュルン
当たり前だ、俺だって自分で何を言ってるのかわかってないんだから
「そうそう、ほら……あー、何処からか暗殺者が入ってきて襲ってくるとか、なんか失敗して大怪我を負うとか」
「そんな状況には私がさせないのですがね?」
心外そうに言うメーテル
なんかすいません……
「そんな訳で頼む!」
「わ、わかりました……では邪魔にならないように隅の方に居ますね?」
キュルンはそう言って壁際に向かい、待機する
「……まあいいでしょう」
メーテルはそう言うと羊皮紙を拡げる
「えー、私が貴方に教える事は……1、一般教養……算術やマナー等ですね、2、軍事教養……政治や戦術を教えます、3、魔術教養……魔法はキャンダリオンに入学するそうですから、その時に本格的に教わるでしょうが……基礎を学んでるか学んでいないかで差があります……貴方には入学までにDランクの魔法を4つは習得してもらいます……良いですね?」
「……えっと、1日の勉強時間はどれくらいで?」
「一般教養を三時間、軍事教養を三時間、そして魔術教養を二時間ですね……それを毎日続けます」
「……や、休みはありますか?」
「夜に眠れば充分ですよね?」
おい、この人スパルタだぞ!!?
「それでは、早速初めていきましょう♪」
こうして地獄の様な授業が始まった
・・・・・・・・・
それから2週間後
地獄の授業に1日だけ解放される時が来た
なんでかって?
それは……
『姫様! 10歳のお誕生日! おめでとうございます!!』
そんな声が響いた
そう、お誕生日パーティーだ
祝われてるのはこの国『ペミスト』のお姫様
ヒロインの1人である『マリアン』である
因みにパルスの婚約者は彼女だ
パルスとは想い合ってる訳ではない、親同士が勝手に決めたのだ
マリアンの父親である国王と……大公であるレッドは親戚である
国王の弟の息子がレッドだ
そんなレッドの息子のパルスと、老いてから漸く授かった娘マリアン
その2人が結ばれたら国は安泰だとか言って決められたのだ
だからマリアンもパルスも内心嫌がっている
人生の伴侶は自分で決めたいものだからな
だが、2人は別に嫌い合ってる訳でもない、普通に仲は良い
友人って感じかな……
だから結婚しても割りと上手くいってたりする
「ちょっとパルス……」
まあ、そんな訳でマリアンの事を考えていたら本人が目の前に来ていた
その目には『ここから抜け出させて』という言葉が見える
「あー、マリアン、ちょっと向こうで話さない?」
「ええ、そうするわ」
周りの貴族達が婚約者同士の逢い引きだと囃し立てる
それを無視して俺とマリアンはそれぞれの護衛を連れてバルコニーに出る
「あーもうやだ、こんなかたっくるしいのキツイ!」
バルコニーの扉を閉めた瞬間にぶっちゃけるマリアン
「姫様、声をもう少し下げましょう?」
そんなマリアンに執事服を着た人物が諭すように言う
こいつは『スール』、マリアンの護衛だ
執事服を着ているが……女である
てかヒロインの1人である
普段はこの様に男装しているが、彼女のルートに入るとしっかりと女性らしい一面が見れる
ついでに……濡れ場は1番気合いが入っていたりする
イラストレーターがノリノリで描いたのがわかるレベルだ
キュルンが彼女と結ばれた場合、スールは男装を止めて、女性の姿でマリアンを支える
そしてキュルンは俺を支えて、国を繁栄させていくって話だな
さて、そんなキュルンはと言うと……
「お水を貰ってきました、どうぞ」
人数分の水を持ってきてくれた
「ありがと、キュルン」
「助かります」
「サンキュー!」
俺達は礼を良いながら水を受けとる
「それにしても大変だな、お姫様は…… 」
「あんたの時はこんな風にならないの?」
「流石に他国からは来ねえよ……」
俺はそう言ってガラス張りの扉を見る
会場内では重鎮や貴族達が話し合ってる
利権やら税やら小難しい事を話してるんだろうな……
ボク、子供だからワカラナイ! って事にしておこう
「あ、そうだ、最近家庭教師雇ったって?」
「ああ、色々と教えてくれてるよ……量が多いのだけは何とかして欲しいがな……」
まあ算術やマナーは前世の知識が有ったから余裕で対処できた
問題は軍事と魔法だ
やれ何々の大戦ではこの策が
どこの何が増えたらどこのあれが高くなるとか
結構複雑だ……てか10歳にやらせる内容じゃないだろ?
魔法の方はボロボロだ
『では、魔法をどこまで理解してますか?』
『全くなにも知りません!!』
『そうですか……では魔力を感じるところから始めましょう』
って言われて始まった授業……
魔力の感知……他人の魔力を感知出来る様になるには時間がかかるが、自分自身の魔力を感知するのは2日もあれば出来るらしい
そんな内容に……俺は10日もかかりました!! ちくしょう!
8日頃のメーテルの可哀想なものを見る眼がキツかった!!
因みにキュルンは試したら1日で出来たみたいだ……
これからこっそりとキュルンにコツとか聞いてみるかな……
12歳までに俺は授業を終わらせられるのか?