ゾンビ、家を買う-3-
僕は平山を社用車の助手席に乗せると、スマートフォンで近くの皮膚科病院を探した。
平山の苦しそうな様子を見てると、小さな病院では駄目だろうと思えた。
(これは、大学病院とか大きいところで見てもらわないとな)
僕は行き先をこの辺りで一番近い大学病院に設定すると、車を発進させた。
「到着時間10分だって!……いけそうか?平山」
「む、無理そう。めっちゃ痒い……」
「おう、そうか!じゃあ、頑張れよ」
僕は平山を元気づけながら、病院へと向かった。
病院の近くまで来ると、何故だか病院の周りを酷い渋滞だった。
「なんだよ、これ。全然進まないじゃないか」
些かの異常さを感じながらも、
横で時折発狂しそうな悲鳴を上げる平山を何とかしなければという思いの方が強かった
「平山、仕方ない。ここで降りるぞ。いけるか?」
「え、ここに車……置いてくのか?会社の車なのに……」
平山は苦しそうな表情を浮かべながらも、意外とコンプライアンスに厳しかった。
「まあ、緊急事態だし仕方ないよ。もしも、レッカーで持ってかれたり、警察に捕まったとしても、
この車は営業の使ってる奴だし、何とか奴らのせいにしてしまおう」
「……なんて、腹黒い奴なんだ……そして、かゆい」
僕は先に社外に出て、助手席のドアを開け、平山を外に出した。
平山はカッターシャツの第3ボタンまでを引きちぎってしまったようで、
そこから赤く染まったランニングシャツが見えていた。
その右胸の辺りまで紫の痣が広がっていて、さっきより断然酷くなっているように感じた。
(考えてなかったけど、これって移る奴かな?……移る奴なら、失敗したなぁ)
僕は腹の底でそんなことを考えながら、平山の左脇を抱えて、病院に連れ立った。
ゾンビ、家を買う-3- 終