4 炎の巨人 後
さくっと戦闘
動き始めた『炎の巨人』に向かって武器を構える7人。
「では、いつものように――――」
「じゃあ、僕はお先に。『隠れ身』」
シャルが配置の指示を出そうとするが、弓を背負っているアッカが自身にとって有利な場所を得るために、スキルを使ってモンスターからヘイトを向けられないようにし、走り出す。そんな勝手な行動にため息をつくシャル。そんなシャルの様子を見て、
「全くもう!アッカ君はいつも仕方ないですね!」
とノースリーブの涼しげな修道服に着替えたまりあが声を掛ける。
「・・・まぁ、役割としては合ってるからいいんですけどね。はぁ・・・」
「アッカ殿はあれできっちりと仕事はこなすので助けられている拙者達からはあまり言えんのでござる。」
「って言ってもほとんどシャルちゃんに良いとこ見せたいからやってるもんね~あれ。」
のんびりと先行したアッカへの愚痴を言うシャルとそれに同意するアイデハルト、からかうように言うパペマペ。その間にも『炎の巨人』は巨体を動かし、地響きを起こしながら近づいてきている。
項垂れていたシャルは顔を上げ、指示を出す。
「では、ガルーとボクで前衛の攻撃役。イサジさんは攻撃役と属性付与の支援を、アイデハルト君は壁役を、まりあさんは支援兼回復役を、パペマペさんは後方から魔法で攻撃役をお願いします。」
「よしっ!つまりいつものってわけだな」
「・・・まぁそうです。」
ガルーから横槍をいれられまたがっくりしてしまうシャル。しかしボスからは目を離さず、すぐに切り替える。
「では、今回こそあのつんつん頭に一泡吹かせてあげましょう」
「「「「「はい(おう!)(そうじゃな)(承知した)(は~い)」」」」」
「『幸運の水』!『氷の衣』!『全能力向上』!」
『炎の巨人』の炎属性に対抗するため火炎耐性を得る魔法と能力値を全体的に上げる魔法を唱えるまりあ。ふわりと薄い水色のオーラを纏ったシャルとガルーは巨人に向かって走り出す。前に出たガルーは両手に爪のような棘がついたナックルダスターを振りかぶり、『炎の巨人』に殴り掛かる。
「『岩砕きの拳』!!」
赤くオーラを纏った拳で殴った先の岩が砕け、『炎の巨人』がバランスを崩し腕をつく。
そこに遅れてきたシャルが小さな体に見合わないほどの大剣を振りかぶり斬りかかる。
「『秘技・国割り』!!」
刀身に白いオーラを纏い、大剣が見えないほどの速度で振り切るシャル。大剣が通ったあとの腕には美しい白い残像が生まれ、爆発する。
足の一部と片腕を失った『炎の巨人』はたまらずといった様子で無茶苦茶に残った腕を振り回し、体から炎を撒き散らす。
しかし、それらの攻撃は何一つ6人には届かなかった。攻撃した後、引いたシャルとガルーの代わりにアイデハルトがその巨体よりも大きな盾を構え6人の前に立ち塞がり、全ての攻撃を受け切ったからだ。
「『吹雪』!『炸裂水』!」
「なんで弱い魔法も唱えてるんですか、パペマペさん」
その間にも、『炎の巨人』にちょっかいをかけ続けるパペマペ。魔法の強さ的には第5深度の『吹雪』は弱点属性も突きダメージが入るだろうが、第2深度の『炸裂水』は効かないのではないかと思いシャルはパペマペに問う。しかし、
「えっ、だって暑いじゃん。涼みたくない?」
と、なに言ってんのというような顔で見られてしまった。
そんなふざけたことも交えながら着実に『炎の巨人』のHPを削っていった7人。しかし、HPを一定以上削ったところで、『炎の巨人』が行ってきた大爆発によりガルーが一度死んだりと苦戦はしていた。
戦い始めてから1時間が経とうとした時、シャルが放った一撃で遂にキラキラとした輝きに変わっていく『炎の巨人』。
「早く、お城に帰って休みたいです。」
まりあが言うように固い、熱い、でかいのめんどくささ満開のボスを倒した感想は喜びよりもまず疲れが先に来る勝利であった。
戦闘シーンをうまく表現できる人しゅごい・・・
ブックマーク圧倒的感謝っ!