2 6人
毎日更新とかたくさん書いておられる方すごい。
なんとなしに雑誌を眺めていた少女であったがこんな俗なものを買ったと仲間に知られてしまえばからかわれてしまうと思い、雑誌に触れアイテム化し、とりあえず自身のアイテムボックスにしまっておく。
とりあえずからかわれる種を消し去ったことに満足する少女。そこにとセバス達が出て行った扉とは逆の扉からコンコン、と控えめのノックが聞こえてきた。壁に掛けている細かな装飾を施されている時計を見ると時刻は午後四時四十分であり、真面目なギルドメンバーなら集まり始める頃だった。
「失礼します。」
そう言って扉を開け部屋に入ってきたのは黒色の修道服を着たシスター風の女性だった。しかしその頭にはヴェールの代わりになぜかピンクの糸で継ぎ接ぎに縫われている犬っぽいぬいぐるみが乗っており、その手にも赤い糸で雁字搦めにされている猫っぽいぬいぐるみを持っており、普通の人が見たらやばい人だと思うような恰好をしていた。
「いつも早いですね、まりあさん」
しかし、部屋にいた少女は特に気にした様子もなく、椅子に座りなおしてそのやばい人に話し掛ける。
「本当はもう少し早くこちらに来ることが出来たのですが、途中でかわいいものを見つけてしまって。」
てへっというように笑うまりあと呼ばれたシスター。その頭上にはギルドメンバーの証である金色の三角形とその隣に「まりあ」という文字が浮かんでいた。まりあは円卓をくるっと回り込み少女の隣の椅子に座る。
「そういうシャルちゃんも今日は凄く早いですね。珍しいです。」
「今日はいも・・・用事がなかったので・・・」
「そうですか。でしたらお話しましょう!お話!」
危うくいらないことまで言いかけてしまって咄嗟に言い直す少女改めシャルちゃん。まりあもシャルの事情は知っているので特に気にすることもなく楽しげに話し始める。まりあが見つけたかわいいものの話だ。
まりあは気味の悪いぬいぐるみを持ってはいるが、腰まで伸びているキラキラと輝く灰色の髪に、目尻の下がった優しそうな、髪とおそろい灰色の瞳をし、唇も小さく、比較的ゆったりとした修道服に隠れながらも出るところは出ている整った容姿をしている。
シャルも、身長はまりあに比べてさらに小さいものの、初雪のような真っ白な髪と、それに反するような真っ赤な瞳をしており、少し目尻は上がっているがそれほどきつい印象は受けない。可愛らしい口からは話をしている中で笑うと時折長い犬歯が見え隠れするが彼女の種族を知っている者からすると可愛いものだと思ってしまう。フリルのついたドレスから除く手足は白磁のような透き通るような肌をしており、まるで人形のようだった。
二人が楽しく話していると扉の方が騒がしくなり、そのまま開く。
「じゃから、迎えに来んでも大丈夫だと言っておっただろうに!」
「しかし、拙者はご老公の身を案じてだな・・・」
文句を言っているのはシャルよりも少しだけ身長の高い豊かな髭を蓄えた樽のような体と、筋肉質な丸太のような手足を持った老人で、髭同様豊かな眉毛を吊り上げて怒っている。
老人の文句を受けているほうは逆にシャルと老人が肩車しても届かないであろうほど大きく、何よりもその顔と体は人の物では無かった。顔は蜥蜴のようで全身が青色の鱗に覆われており、種族としては蜥蜴人と呼ばれるものであった。
ぶつくさ文句を言いつつ席につく老人とおろおろしつつ席に着く蜥蜴人の青年。
そんな二人に話を中断して声を掛けるシャル。
「イサジさん、アイデハルト君に迎えに行ってもらうように言ったのはボクです。気分を悪くしたのなら申し訳ありません。」
「「ワシ(拙者)達、仲良しじゃよ(でござるよ)!!」」
目を伏せ悲しげな表情を作るシャル。仲間思いの少女にそんな表情を取らせてしまいすぐにガッチリと握手するドワーフのイサジと蜥蜴人のアイデハルト。
二人が言い争いをしなくなった途端にシャルは笑顔に戻り、まりあとの話に戻る。本気ではなく、演技だったかと二人は思うが見目麗しい女性が楽しそうに話をしているのを見て、怒りよりもほっこりする気持ちの方が強かった。
ほっこりした空気の中各々が話をしたり、アイテム化した飲み物(イサジはお茶、アイデハルトはオレンジジュース)を飲んでいたりすると、扉が勢いよく開かれる。と同時に大きな声が部屋に響く。
「あんだよ、五分前なのにまだあいつら来てねぇのかよ」
部屋に入ってきたのは毛皮のコートを着た狼顔の青年だった。その毛並みは鼻の頭から上は真っ黒で、鼻の下から服で見えなくなる首元まで白い毛皮に包まれていた。頭には毛皮とは違う質感で紫がかった髪が生えており、そこからピンと耳が立っていた。
入ってきた勢いそのままズカズカと歩き、ドカッと椅子に座り机の上に足を乗せる。それを見たまりあはむっとしたような顔を作り、
「こらっ!そんなお行儀の悪いことをしてはいけませんよ!めっ!です。」
と可愛らしく怒る。そんなまりあをチラッと見るとすごすごと足を下ろす。その様子に満足げに頷いていたまりあだったが開け放した扉から飛び込んできた小さな物体が顔に当たり、「へきゅっ」と可愛らしい悲鳴を上げる。何が飛んできたのかと全員が目を向ける中、ぶつかってきた直後に「0」と空中にダメージ判定が出るほどの勢いで突っ込んできた物体は先ほどシャルが呼んでいた雑誌を持った雑誌よりも少しだけ大きい妖精だった。
「ねぇねぇこれ見た?見たっしょ?これ!今日はプレイヤーボスじゃなくてこれ見つけに行こうよ!あっ!ごめんねまりっちゃん!」
真っ赤な髪をしたピンクの瞳の妖精はその髪と同じ色のぴっちりした服を纏い、小さい体をフルに使ってあっちにぱたぱたこっちにぱたぱたしながら雑誌の表紙を見せながらついでのようにまりあにぶつかったことを謝る。
そのついでのように謝る姿勢に、妖精がぶつかってからプルプルしていたまりあがゆらりと立ち上がり、びしっと効果音が付きそうなほどの勢いで指を差す。
「パペマペちゃんもガルー君もお説教です!」
「ちょっ、なんでオレまで!」
「「「普段の行いのせいですね(じゃな)(でござろう)」」」
集合時間の午後五時まであと少し、そこには正座させられ、シスターに怒られ、耳をちぢこませる狼人としょぼんとする妖精がいるのであった。
プレイヤーの名前には平仮名、片仮名、漢字、英語、数字を使うことが出来ます。
このペースは崩さないぞ・・・