1 ワールドクリエイターの噂
なろう初投稿です。
「~『ワールドクリエイター』の噂にせまる!~
目覚ましい技術発達のおかげで意識そのものをゲームに接続し、実際にゲームの中の世界に入っているかのような感覚で遊べるフルダイブシステム。そのシステムを活かし、ゲーム業界は様々なジャンルのゲームを世に送り出していった。その中でも群を抜いて人気があるジャンルがMMORPGと呼ばれる、大規模多人数同時参加型オンラインRPGであった。
次々と出てくるMMORPGのゲームの中にはサービス開始1年未満やひどいときには半年、数か月ほどで人がいなくなってしまったりサービスが終了してしまったりしていた。
そんな中、ゲーム会社インフィニティが発売したワールドクリエイターはその高いゲーム性と自由度の高さ、運営の対応の良さなど様々な理由で、フルダイブシステムが使用されたゲーム機「ポッシブル」が発売されてから7年以上のサービス提供を行っており、今なお新規プレイヤーが増え続ける人気MMORPGの地位を確立していた。
そんなワールドクリエイターの世界では最近おかしな噂が立っていた。なんでもプレイヤーメイキングのあるモンスターを倒すとゲームにログイン出来なくなってしまうというもの。今回の週刊わーくりではこの噂の真偽について確かめていきます。」
冒頭こそ真面目な文章だった雑誌は1ページの半分もかからずにいつものように砕けた文章へと変わり、以降は本当かどうかも分からないむしろ適正レベル120以上のダンジョンで見たとかリリーちゃんの家の風呂場で見たとかギルドの奥の席で飲んでいたというような悪ふざけのような投稿が続いていた。
「これ以上は見るだけ無駄ですね。」
と有力な情報はないかとパラパラページをめくって確認していたが、途中から全く関係のないグラビアが始まった雑誌を机の上に放り投げる小さな人影。表紙にはピンク色の髪をした女性が剣を構えており、その横に「引退?失踪?ワークリの噂にせまる!!」とでかでかと印字されていた。
現在の時刻は午後の四時半。予定していた集合時間より早くログインしてしまった彼はログイン後暇をつぶすために毎週発行されている週刊誌をショップで買ったのだがそこには最近掲示板を賑わせている噂の話ともう知っているアイテムやボスの情報ばかりだった。
いらないものを買ってしまい少しだけへこむが、過ぎたことは仕方ないと切り替え、足がぎりぎり届いていなかった椅子からぴょんと下りこの後の話し合いとその後のボス戦の支度をするため机の上のベルに手を伸ばす。黒を基調としたゴシック風の服から伸びる白磁のように真っ白な手がベルを掴み、チリンチリンと軽いベルの音が大きな丸机と七つの椅子を置いてある大広間に響かせる。すると、少女の正面のドアが開き、フリルをふんだんに使ったメイド服に身を包んだかわいらしい黒髪の少女と、執事服を着て腰に剣を差した髭を蓄えた優しげな紳士が現れた。
「支度をするからアンは服を、セバは鎧と武器をお願いします。今日のは炎を使うらしいから耐性付きと涼しい服がいいです。」
「「かしこまりました、お嬢様。」」
口に指をあて少し考えながら言葉を発した少女に対し、スカートの裾を持ち上げ軽くお辞儀をするアンと呼ばれた少女と胸に手をあて軽く礼をし部屋を出ていくセバと呼ばれた老紳士の二人。
部屋を出て行く二人を見送ったあとメニューから時刻を確認し、そろそろ誰か来る頃だろうと窓の外を見る。外の庭は暖かそうな日光に照らされており、そこに少女が住んでいる城の影を落としている。城の影の先に目をやると轟々と風が吹き雪が舞い、吹雪いている。ここは氷雪エリアのど真ん中に建てられたプレイヤールームであり、モンスターに襲われず、天候の変更もある程度なら可能なセーフゾーン。本来ならあり得ない場所のプレイヤールームの設置だが、少女は作りたいと願い、力を貸した仲間と少女にはそれを実現するだけの力があっただけというだけのことだった。本人たちは吹雪の中にある雪のように白いお城ということで『白雪の城』と呼んでいる。しかし、他のプレイヤー達からはそこに出入りする者たちのあり得なさから『白い悪魔城』と呼んでいた。
外の庭とその周りの吹雪をぼーっと眺めていた少女がふと机に視線を向ける。そこには変わらずにこちらに向けて笑顔を向けるピンク色の髪の女性が写っていた。
よろしくおねがいします。