六章
思いつきで海なんか出すんじゃなかった!
「思いつきで海なんか出すんじゃなかった!」
思ってることが口に出た。
パワーはある。流石は母なる海、しかし操作が難しい。
あらゆる動きを操る、何て願望を描けるほど余裕もなかった。
背後は色々と立て込んでいる、そのことが願望を生み出す"余裕"を奪う。
だから押されてる。
ピンチもピンチ。
大ピンチだ。
しかし。
だが。
そう。
そんなときだからこそ。
"宿敵"は笑った。
(逆転サヨナラ満塁ホームラン優勝って最高に格好良いじゃねーの!)
逆境はスパイス。
海の形が変わる。
まるで巨大な手になって、星を握り潰すように覆い、押し返す。
「ほう・・・・?」
"宿敵"の精神的変化に、最初に気づいたのはゲルドラードの魔王だった。
彼女にしても何だかんだ難点を抱えているのだ。
まず、件の善神によって幼女の姿にさせられたこと。
これは表にこそ出さないが、彼女にとって大きな足かせに実はなっている。
まずリーダーとして、魔王としての威厳に関わる。
舌足らずな幼女がいくら勇ましいことを言っても、侮られる。宣戦布告のときもそうだ。あれはあれで別の意図はあったが、それでも深刻だ。
(ふむ、にゃるほど)
魔王は星の操作に集中するが、上手くいかない。
身体の変化によりそれまでの魔術操作が覚束ないのだ。格闘も、武器にも同じことが言えた。
配下の中で気づいているのは賢王か武王だろう。
しかし、だからどうした?
その程度のことで、主君である大魔王の野望を果たせないことがあってはならない。
すべては大魔王のために。
ゲルドラードの魔王最強の力はこの忠誠心である。忠誠心があるから、善神の呪いで幼女に変えられても、依然と同じような力で、いやそれ以上の力を絞り出せる。
故に。
「負けにゅ」
「うおっ!? やべー!」
星が進む。
海が押される。
負け。
「ねぇ!」
海も負けじと勢いを強めるが、そもそもの相性。水と石。いささか分が悪い。
なので、やりにくいなら、変えることにした。
「海やーめった!」
叫んだ直後、"変わった"。
海は巨大な両刃の剣に変化する。
「斬り進め!」
星に"ザックリ"と突き刺さる。斬ってはいないが、このままいくと斬ることはできる。
石と刃。相性よりも、どちらが硬いか。
少なくとも寄せ集めた石の塊より、より磨かれた刃が勝った。
「舐めるにゃ!」
星が真っ二つに、そう、二つになった。
「はぁぁぁぁぁ!」
斬り離された二つの"星"を、ゲルドラードの魔王は操る。
一つが二つになっただけだ。と、後に彼女は事も無げに語った。
「ふん!」
「んにっ!?」
左右から星が宿敵に激突した。魔王が速度を上げ、宿敵だけに狙いを絞った為、威力と速度はあるが拠点破壊には向かない。
内蔵や骨にダメージを負い、健伸は血を吐く。
「ぐふぉおらっ!」
しかし、同時に魔王も攻撃を受ける。
「くっ!」
巨大な剣の致命傷を避けたものの、左腕を深々と切られ、かろうじて皮一枚繋がるほどの重傷を負う。
二つの星はそのまま地面に落ち、丘へ突き刺さる。
「へっへっへ」
"宿敵"が血を吐きながら笑う。
「ふふ、ふふふ」
"ゲルドラードの魔王"が腕が剥がれないよう支えて、笑う。
視線が合う。
合った瞬間、お互いが飛び出した。
「おおおお!!」
「ふっ!」
二人が殴り合った。
「は、早く使い方を教えろ!」
真っ赤な顔のジャンヌは、自分の尻を撫でる変態神を殴りつける。
事態はまた動いた。
ここで逃してはいけない。
「お前が言うこの弓は本当に当たるのか!?」
「当たる当たるって、何しろ善神様の加護があるんだからね!」
善神は笑う。
書けるときに書いとかないと、書けないとき辛いので。