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二章

"敵"日比谷健伸は、元の世界では"ダメ人間"の烙印を押された男である。

まだ十六歳になったばかりの頃、その世界の用語で"ニート"や"引きこもり"と呼ばれていた。

家族も匙を投げていた。

この少年の未来に。

だが、善神ナーサは違った。


『使える』


と。

どこに? と聞くべきだろう。

何せこの男には長所が存在しない、むしろ短所しかない。

が。


『だからこそ使える、何もないお前だかこそ!!』


善神ナーサは別名"与える神"とも呼ばれている。

あらゆるモノを与えることがてきるのだ。

しかし欠点もある。

それは既に持っている者には何も与えられないということ。

故に、あえて何もないことを装い無能を演じる者が現れたりもした。しかし、この手の人間は神を、その恩恵を誰よりも信じている人間である。

つまり、信仰心があるのだ。

だから与えられない。

そんな中、日比谷健伸は本当に何もない。

信仰心も、異世界の人間である彼には持ち合わせていないもの。

ならば。

と。

ナーサは与えたのだ。

無敵の能力"チート"を。


"敵"日比谷健伸は"チート"の本質を理解した。

それは"願望"。

自身が無敵と信じる力を願えばそれが得られるというもの。

健伸が首を落とされたのにも関わらず生きているのは、"不老不死"を信じたからである。

言葉が通じたのも"あらゆる言葉を理解できる"ことを願ったからだ。


「やるじゃん、あの童貞野郎」


善神ナーサはどこかで笑みを浮かべている。

しかし、何故か健伸のいた世界の女性が身につける下着だけの姿だった。

大きな胸とすらりと伸びた足を惜しげもなく、下着で隠しているとはいえ晒していた。


「これなら、童貞卒業も夢じゃないな! はっはっはっはっは!!」



健伸は悪寒を感じた。

気のせいだと言い聞かせ、改めて二人の方へ。


「つうことでさ、改めてよろしくな」


ニコッと笑って健伸は握手を求めた。


「?」

「?」


どうやらこの世界では握手の習慣はないようで、二人はキョトンとしている。


「あ、あはは。まあいいや! ところでさ、二人とも本当に怪我とかないの?」


話題を変える。

アンヌは、


「はっ、はい!」


と慌てて返事をする。大げな動作で頭も下げる。その度に大きな果実が二つ揺れて、健伸はおおー! と驚嘆した。


「ふん。騎士には怪我はつきものだ」


ジャンヌは腕を組んで不機嫌そうに横を向いた。


(や、やりにくっ)


健伸は内心トホホと弱気になる。


「それよりも、我々の仲間はどうなった? わかるのか?」


ジャンヌは身を乗り出す。

隣の少女よりも実っていないことに溜め息を漏らしつつ、試してみると健伸は"チート"を使った。


願う、別の場所の様子を探る力を。

すると健伸の頭の中に映像が浮かび上がった。


「スゲー! 便利だなこの力!」

「なに! わかったのか!?」

「す、凄い」

「ちょっと待ってろよ・・・・・・・・・・・うっ」


健伸は顔をしかめ、立ち上がって茂みの方に消えた。すぐに彼が吐いたとわかる音と悲鳴が聞こえる。

それで察しはしていたが、ジャンヌとアンヌは地面に伏せてしまった。

泣いて、いた。



サズリの本拠"魔城ヘルポルン"、玉座の間にて。

ゲルドラードの魔王が幼い少女の姿になって二日が経った。

未だに元に戻れていない。

賢王はあらゆら手段を用いたが効果はなかった。

彼は首領の前に膝を折ってわびる。


「王よ、申し訳ございません」

「よい。気にすりゅな」


空白の玉座の前に置かれている質素な木製の椅子に腰掛ける魔王は、部下の余計な詫びを止めた。

玉座に魔王が座らないのは、そこが大魔王の席であるからである。大魔王の居城は別にあるのだが、それでも『あらゆる玉座に座るのは大魔王のみ』との御意向だという。


「いいね~、王様よ」


立ち並ぶ巨柱の影から魔王の姿を見ている"風のレク"はニヤニヤ笑っていた。

余程気に入ったらしい。

魔王の姿が。


「レクよ」


舌足らずな声が彼を呼ぶ。


「はっ!」


思わず、一瞬で魔王の前に膝を折りに行ってしまうレク。

一歩前のサルトナはやれやれと溜め息を吐く。

魔王は無機質な表情のまま告げる。

   

「レク。表を上げぇい」

「はっ!」

「お前に命じゅる」

「はっ! 何なりと!」


声を聞かれて、レクはお叱りか罰でも受けるのかと思った。

そうではないらしい。


「お前に吾輩の稽古を命じゅる」

「は?」

「レク!」


サルトナがたしなめ、レクは改める。


「はっ! 喜んで!」

「うむ。にゃらば、そこを動くにゃ」

「へ?」


レクは呆けた。

何故ならば。

あの、ゲルドラードの魔王が微笑んだのだ。

"氷のカドレ"を上回る悪寒を感じるのとほぼ同時。

瞬間、レクが吹き飛んだ。

壁に衝撃と共に激突する。


「うむ。やはり問題はにゃいな」

「そのようで、王よ」


魔王は満足そうに拳を握る。サルトナは頭を垂れたまま、内心ではレクに同情した。


(王は、任務のない日はかなりヤンチャであるからな)


すっかり瓦礫と化した壁の中で、レクはぼやく。


「殴られるより衝撃的な笑顔だったよ、王様」




それから、更に二日。

サズリの本拠"魔城ヘルポルン"、円卓の間にて。


「何と、"敵"が生きていたとは」


賢王は眉間に皺を寄せる。

左隣の"武王"ガルンドは腕を組んだまま一言。


「屈辱なり」


"敵"にトドメを刺したのは他ならぬ彼である。

仕留めた相手が生きているなど許せるはずもない。それだけ自らの技量と愛剣に自信があるのだ。


サズリ達には動揺が広がっている。これまで彼等は常に任務を達成してきた、失敗は今回が初であり、常勝ゆえの慣れない敗北を期したことによる打たれ脆さが見え始めている。


「元はといえば、武王の慢心ではないのか?」

「何だと炎王」

「余ならば簡単に灰にした。首など斬らなくともな!」

「・・・・ほう?」

「やめよ二人とも! "王"が動揺するでない!」


まずは序列上位の者たちからだ。

ついで。


「おいおい、それだったらカドレの姐さんはどうだったんだ?」

「絡まないで風」

「良いじゃねぇか、なぁ人馬よぉ! お前らも一緒にいたんだろう?」


ついで下位の序列の者たち。

仕掛けたのはレクだが、どこかこの動揺を楽しんでいる節があった。

が、いつまでもそうしたサズリたちの失態を許さないのは。


「皆」


ゲルドラードの魔王。

この日初めて声を発した。


「吾輩は、全てを赦さにゅと言った」


任務の時に発した言葉である。

彼等が静まり、既に鎮まる。


「これからもだ」


魔王は跳んだ、翔んだ。

飛行魔術である。

既に知らせのあった、人間の国に向かっていた。

背後には、

序列二位"賢王"サルトナ。

序列三位"武王"ガルンド。

序列四位"炎王"ヅォートラルンガ。

序列五位"腐蝕王"座癌。

序列六位"風のレク"。

序列七位"人馬のサナーラ"。

序列八位"血のガガーランド"。

序列九位"氷のカドレ"。


サズリの総力。

これをもって、今度こそ"敵"を。

否、

もはや"敵"などという生易しいものではない。

"宿敵"だ。

とりあえず日曜更新はやめて、自由に書きたいと思います。応援してね!

書けるときにたくさんって感じ。

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