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九章

 神様は気まぐれ。

 そんな、神話を読めばどこかで思ってしまうことが現実に起きた。


「さぁさぁ! あとは若い者同士、二人でイチャついてくれだえ! 天国でな!!」


 ナーサは叫ぶと、力を使った。

 二人の被害者が光に包まれる。


「い、いかん!」


 賢王が叫び、すぐさま魔術を行使して妨害を仕掛けようとするがその前に。


「はいはい、老人は引っ込んでいてもらおうか!」


 ナーサは珍しく仕事をする。賢王の妨害を妨害した、光の輪のようなものを放って動きを封じた。


「ぐっ!」

「ははははは! 今の私は最高に機嫌が良いからね、悪いが邪魔はしないでもらいたいな!」


 ナーサは二人の被害者。

 ゲルドラードの魔王。

 "宿敵"日比谷健伸。

 二人が光の中へ消える。

 疫病神は彼等を、自分の根城である天国にある意味で追放、ある意味で二人っきりに、ある意味で隔離した。



 天国は、天国なのだろう。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」


 二人の被害者は、何故か丸く作れた赤いシーツの被さった寝具の上に、小さくなってちょこんと座っていた。

 そこは部屋だった。

 常人ならその手のいかがわしい気持ちになってすぐさまちょめちょめをししてまう気分になる香が焚かれている。

 壁にはその手のいかがわしい行為の絵が描かれていた。

 そして、その手のいかがわしい道具がそこらじゅうに。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 二人は無言である。

 顔は赤いまま。

 手は未だに握らされていた。

 呼吸音と心臓の鼓動がやけにうるさかった。

 すぅーはーすぅーはーすぅー。

 どどどどどどどどどど。

 そんなハーモニーを繰り広げている。

 もうやだ帰りたい、とは宿敵の泣き言。

 ここが天国かそのわりにおぞましい、とは魔王の冷静なわりと的を得た分析。


 ゴトン。

 音がした、見ればイッテん物がブーブーと小刻みに震えている。

 

(二人とも何してんだよ、早くヤッちまえよ!)


 善神ではなく疫病神ではいか、という疑惑の立っているナーサの粋な計らいであった。

 が、二人は突然のことにビクッと肩を震わせただけで特に何もない。


「な、何だビックリした」


 健伸はふぅと息を吐いた。

 十八歳未満でありながら、何故かその手のことに詳しい彼は普段よりも余計に挙動が不振である。

 しかも、自分の世界の物的だらけ。確実に疫病神の悪意だろう。


「ほんと、アホだろアイツゥ!?」


 つい他に人がいなかったので、魔王の方を向いたら。

 魔王が、こちらを見ていた。

 当然、目が合う。


「・・・・・・」


 魔王は無言である。

 無口系の幼女可愛いと、反射的に感想が出てしまう辺り、健伸はロリコンであったろう。


「な、何だよ」


 幼女に見られてつい頬が気持ち悪く緩んだ拍子に、口も緩んで声が出た。

 魔王は変態を見つめたまま言った。


「これは?」


 手にはどんな魔術を使ったのか、いつのまに例のブーブー震えるご立派な道具が握られていた。


「ぶえっふぇはぁ!?」


 健伸の顔面が瞬時に赤くなり、湯気が出て、仰け反った。


「うん? (にゃに)(おじょろ)く?」


 何も知らない顔で首を傾げる魔王。

 そういう意味で言うなら、彼女は無垢だ。


「げばばばばば」


 どう言ったものか、健伸の頭の中はパニックで元々なのに更に輪をかけてどうしようもない。

 

「にゃるほど、わかった。これは武器じゃな? よし、暇じゃからこれで仕合うか」


 呑気な顔でご立派なものをご立派に構えて、ゲルドラードの魔王はいきなり宿敵に飛びかかった。

久しぶりに

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