表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アーフェン  作者: 菜々
Episode.02
29/38

14.謁見の間で

よろしくお願いします!


※ここまでの話を改稿しました

魔法説明辺り本当にわかりにくくてすいません

 謁見の間。荘厳な雰囲気に包まれたそこに、今一対の羽を持つ女の姿があった。兵士たちの不躾(ぶしつけ)な視線を浴びながら床に膝をつき、全身を拘束されている。

 普段の姿とはかけ離れた、ひどく衰弱している様子の彼女。

(私は本当に生きているのか?)

霞がかった思考の中で、彼女はぼんやりとそう考えた。自らの体を見下ろせば、胸には未だ黒々とした穴が開いているのだ。そこにあった熱は既にない。

 血は流れていないが、自分でも生きているのが本当に不思議だった。

(これは……魔法か?)

よくよく見れば、その傷の周りには薄っすらと氷が張っている。凍結されているのだ。血の巡りも感じられない。

(あの時――)

彼女は、後ろから接近してきた者に気付けなかったことを思い出した。そのことと、今自分の体に起きている異変から、彼女はある答えにたどり着く。

(凍人(いてびと))

 聞いたことがあった。魔族の中には氷の魔法を得意とする、特殊な一族がいると。彼らは体温調整の必要がないため、心臓の動きがひどく緩慢(かんまん)だという。

 だからあの時彼女は後ろから近づいてくる者に気がつけなかった。呼吸は元より、心音までもが聞こえないほどに、微かなものだったから。

(最悪だ)

いくら凍結されているからといって、このままでは長くは持たない。

 それに、こうして生かされているということは、なにかしらの利用価値を見出されたのだろう。そして、周囲のこの様子。厳重な警備に、この謁見の間。

 メロアはこれからの展開が容易に想像でき、密かにため息をついた。


  *


「我らが神の使いの者よ」


 唐突に聞こえたしゃがれ声に、メロアは僅かに顔を上げた。

(意識を失っていたか……)

 目の前、先程までは空席だった王座に、大柄な男の姿があった。その横には幾つかの人影が控えている。

 アーフェン王ソマレト・バールフ。肖像画などでその姿を見たことはあったが、実際にこうして対面するのは初めてだった。

(できればもう二度と会いたくないものだな)

王の威厳を示す、うねった白い髭。鋭い目は濁った青をしていた。ギラギラと輝き、メロアの全身、両の翼を舐めるように見ている。手にはワインの入ったグラスを持ち、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)といった風体だ。

 メロアは自分を見下ろすその姿を、精一杯の力を込めて睨みつけた。


「貴様が王か?」


 やがて緩慢に口を開いたメロアに、周囲から厳しい視線が向けられる。

 ……あいにく王に対する口のきき方なんて、習った覚えはないのだ。しばらく沈黙が間を支配する。突然響いたのは、王の嘲るような哄笑だった。


「くくっ……天使と聞いてきてみればなるほど。確かに羽は生えているが。……まるで悪魔ではないか」


 拘束され、血で汚れた姿。王はまるで虫を見るような目で彼女を見下ろした。さっきまでとは違う、ひどく冷めた瞳。

「……」

 メロアは殺意すら込めた目で王を睨みつけるが、王は唇を釣り上げて笑っている。

「薄汚い魔物風情が、王であるこの儂をそんな目で見るというのか」

メロアは目を逸らさない。ただ挑むような目で王を見るだけだ。

「ふん……」

不意に表情を消した王は、横の人影に向かって一言命じた。

「セレー。潰せ」

「御意に」

人影が剣を抜く。鞘走りの微かな音が、謁見の間に響き渡った。セレーと呼ばれた若い男は、メロアの前までつかつかと歩み寄ると、おもむろに剣を振り抜いた。

 王を睨みつけるメロアの顔と水平に。肉が断たれる音。

「……っ」

悲鳴は上がらない。メロアは、血の流れる眼球を抑えることもできずに、拘束された体を(よじ)った。

 彼女の白い頬に、血混じりの涙が幾つもの筋を作る。男の刃はメロアの黒い瞳を片方、深々と切り裂いていた。

「どうした? まだ一つ残っているぞ」

王が淡々という。男は黙って一度頷くと、再び剣を構えなおした。

 メロアは残った片目でなおも王を睨みつける。男の体に遮られた王の姿を焼き付けるように。

 やがて口を開き、歌うようにメロアは言う。


「卑しき者よ。この目は我が王のもの。お前の正体を我はしかと見極めたり」


 地の底から響くような低い声は、男の動きを止め、王の顔色を一瞬で変えた。どこか恐れを抱いた表情を浮かべる王。メロアは笑みを浮かべると、

「あまり勝手をするなよ、人間。消すのは簡単だ」

その言葉が契機となる。王の手の中でグラスが砕け散った。激昂する王は、静かに命じた。

「セレー、殺せ」

「……」

男が頷き、無言で剣を振りかぶる。

(消される、か)

心残りはない。この男のプライドを最後に逆撫で出来ただけでも満足だった。けれど、もしも叶うならば謝りたかった。巻き込んでしまった彼に。

(ティオ、せめて……生きて)

メロアは瞳を閉じまいとした。この首が飛び、地に落ちるその瞬間まで、強欲な王の姿をこの目に。

 男の剣が降ってくる。そして、それはメロアの剥き出しになった白い首筋に


 ――紅い筋を残して止まった。


 男が呆然とするように目を見開いている。


「兄様! 父上! 助けて下さいませ――っ!!」


 男と同じ金の髪と青の瞳。涙の浮かんだ瞳は恐怖に見開かれている。その少女は、目深にフードを被ったローブ姿の人物に、鋭いナイフを突きつけられていた。

 ローブ姿の人物を見たとき、今の状況も忘れてメロアは思わず小さく笑ってしまった。

(何やってるんだ、あの馬鹿は)

フードの奥の、鋭い目つきが見えた気がしたのだ。


「その女を解放しろ。この娘の命が惜しければな」


 少年は高らかにそう宣言した。

ありがとうございました!


思わせぶりなセリフとかブラフ回収頑張ります……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ