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アーフェン  作者: 菜々
Episode.02
20/38

05.第13番隊

軍隊とかその辺詳しくないので突っ込みどころ多いかもしれません...


よろしくお願いします!

 国内最大の(いち)も、巨大な噴水を有する美しい公園もこの区の魅力だった。だが、それらのすべてがかの建物には遠く及ばない。

 白亜の王城ルディ。

 何重にも折り重なった屋根はすべて美しい装飾で彩られている。昼は陽の光の輝きを反射し、夜は星空を映す表面はまるで鏡のようだ。

 王国アーフェンの繁栄の象徴として、数百年もの間輝き続ける古城。その輝きが衰えることはない。

 四方六キロをぐるりと巡っている城壁を乗り越えれば、そこには王城の誇る多くの施設が立ち並んでいる。

 王立図書館、ダンスホール、劇場……そして国家が有する唯一の戦力、自衛隊の基地があった。


  *


 雑音が(わずら)わしい。


「では、第13番隊指揮官トーマスは壇上へ……」


 野太い声が響き渡っている。見上げるほどの高さにある壇上に立つ男のものだ。隊の基地にある一番大きな広間に、何百という隊員達が一糸乱れず並んでいた。

「此度の戦い、貴官の部隊は――」

この広間に集まった精鋭達を圧倒するほどの声。自衛隊最高司令官は朗々と文書を読み上げていく。

 半年前から始まった南の大陸との戦いで多くの武勲(ぶくん)をあげた隊を讃える、王直々の言葉が文書には書かれていた。

 自衛隊にとって王は絶対であり、王に言葉を(たまわ)ることは誇りそのものだ。大勢の者たちが壇上に注目する中、たった一人だけ……瞳を閉じて立っている者がいた。

 すらりとした体躯。しなやかな筋肉が軍服の上からでも見て取れる。相当鍛えているのだろう。黒い髪を無造作に束ねている彼女は、女性という点でもひどく周りから浮いていた。

 彼女の名はクロス。十字の名を冠する彼女は、第13番隊に所属していた。つまり今司令官が読み上げているのは、すべてがこの半年の間の戦いで彼女の部隊があげた武勲だった。

 王に働きを認められた隊には、勲章が与えられる。王国アーフェンの国章を模したものだ。

 そして、たった今彼女の指揮官が受け取った勲章は、実に十二個目。少なからず賞金もでるので、受勲自体が嬉しくないわけではない。ただ、正直十二個目にもなるといらない。

 すでに聞き飽きるほど聞いた賛辞の言葉。彼女は、壇上で敬礼し微動だにしない指揮官を気の毒にすら思った。

 同時に周囲から上がり始めた、耳を塞ぎたくなるような言葉に吐き気を覚えていた。


「また13か……」「どうせ金が動いてるんだろ」「けっ。殺したがりの集団が」


 クロスの整った顔立ちが一瞬険しく歪む。

(聞こえてるんだが……)

本人たちは独り言のつもりなのだろう。だが彼女の優れた聴覚は全てを聞き取ってしまう。

 時折、周りに聞かれたら危うい立場になるようなことも聞こえてくる。

 彼らの言うことすべてが間違っているわけでもない。だが時と場を選ぶ知恵を彼らは持ち合わせてないようだった。

 だから彼女は努めて聞こえないふりをしていた。自分をひたすらに見つめる一つの視線も。



「クロス!」


 自分を呼ぶ声に渋々足を止める。

 第13番隊に与えられた隊舎。他の隊よりも少しだけ豪華なそこは、クロス達第13番隊の隊員が気を緩める唯一の場所だ。

 だから、クロスも自室に戻って軍刀の手入れでもしようかと思っていた。だというのに……。

(うるさい奴に捕まった)

廊下の向こうから近づいてくる青年。クロスは苛立ちに目を細めた。黒曜石のような瞳が鋭い光を宿す。

「なにか用か?」

「あの態度はなんだ? 王の言葉を、お前は完全に聞き流していただろう!」

いかにも億劫そうに振り返ったクロスに、男がそう叱責する。人目を引く外見の青年だった。

 まず特徴的なのは青年の右眼を覆っている黒い眼帯だ。

 隊に所属して、戦いの渦中にいる限り五体満足ではいられない場合も多い。だから、自衛隊にいる限りそれは不自然なことではなかったが、それでもなまじ顔が整っているせいで、眼帯は異様な存在感を発揮していた。

 髪の色は灰に(まみ)れたような薄暗い青色。男にしてはやや長いその髪を、やはりひとまとめにしている。

 青年は一つだけの目でクロスを睨みつけている。元々つり目がちな彼の瞳だ。それはそれは恐ろしいことになっていたが、クロスは軽く受け流す。

「ああ。

あんな形式ばかりに(のっと)った、作文みたいなお言葉にありがたみを感じるような神経は、あいにく持ちあわせていないんでな」

「またお前はそんなことを……!」

「話はそれだけか? 私は帰りたいのだが」

「このっ……!」

「また始まったぞ! 夫婦喧嘩は犬も食わないってか」

「犬同士の喧嘩はどうなんだ――?!」

突然始まった二人の言い争いに、周囲からそんな声が上がる。彼らにとって、これはいつもの光景なのだ。

「お前たちも、少しは王に対する敬意を持て! それに誰が犬だ!」

眼帯の青年が言い返す。

 驚くことに、先程から彼の表情はまるで凍りついたように動かない。ただ、蒼の瞳だけが雄弁に怒りを語っていた。

 対するクロスは無言。心底どうでもいい、というような顔をしている。

「もう戻っていいか?」

「おい、クロス!」

既に背を向けて歩き出したクロスを怒鳴りつける青年。周りの者たちは相変わらずの二人の姿に、やはり楽しげな声をあげた。



 第13番隊副指揮官、グレイシャー・ファレンハイト。王に絶対の忠誠を誓う、生粋の軍人気質の青年。

 そのあまりの忠誠心に、仲間内で呼ばれる渾名(あだな)は「王家の犬」。

 同じく第13番隊副指揮官、クロス。異常な身体能力を持った隊唯一の女隊員。どんな命令にも忠実に応える彼女は、「軍犬」の名で親しまれているとかいないとか。

 もちろん、本人達にとっては甚だ不本意な呼び名だった。

※作者はBLEACHが好きです

13番隊はそっから来ているかもしれません


今日中にキャラや用語の説明を載っけます

参考程度にどうぞ!


ありがとうございました!

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