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よろしくお願いします!
*改稿しました
その王国には虹色平原という極めて不可解な名称を持った草原がある。
虹色平原という名がなぜ不可解なのか。
それというのもこの平原は、見渡しても同じ色をした草花が淡々と広がっているばかりなのだ。
そんなこの地が、いかにして虹色と称されることになったのか。それは国の王ですら、知らないという。
王が生まれた時、既にかの地は虹色平原と呼ばれ、人々の間に広く知れ渡っていた。
そして人々はそれを当たり前として認識しているのだ。ふとした瞬間疑問を感じながらも、やはりその疑問を意識の底へ沈めてしまう。
そんな虹色平原は人々のことなど露知らず、ただただ淡々とその緑を茂らせている。
そう、気の遠くなるほどずっと昔から。
この世界に住まうエルフやフェアリーといった伝説に名高い精霊たちは皆口を揃えてこう言う。
かつてあの地には数多の星が降り注いだ。かの地は天が祝福した地なのだ、と。
*
――懐かしい、声がした。
彼はゆるゆると瞼を開く。数百年にわたる長い眠りから、ようやく目覚めたのだ。
その瞳が何かを探し求めるかのように宙を、無明の闇を彷徨う。やがて、唇が薄く開き彼は何かを呟いた。
それは、とうの昔に消えた者の名。
それを思い出し、彼の顔に闇よりもなお暗い影が落ちる。
再び開かれた瞳に宿っていたのは、紛れもない、狂気。
彼は嗤った。極上の獲物を見つけた獣のように。