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神話
かつて、それは泡だった。永久に続く漆黒の海から生まれ出た一つの泡沫。
やがてそれは時をかけて形を変えた。
まずは手を。
次に目を、足を、耳を、鼻を、時間をかけてそれは体を作った。
体を手に入れた“彼”は最初に、漆黒の海を照らす星を作った。
(中略)
“彼”は海に浮かび上がる泡の中に世界を作った。
ある泡には異形しか居ない世界を。
ある泡には永遠に続く塔の世界を。
そしてある泡に、自らの血を二滴落とした。
落とされた血の一滴は、金色の髪と青色の瞳を持つ太陽のような女に。もう一滴は黒髪に金色にも銀色にも見える月のような瞳を持つ女に変じた。
“彼”は二人に告げた。
『この泡をお前達に託そう。』
そう告げて“彼”は二人の前から消えた。“彼”の記憶を継いだ二人は、“彼”のようにこの泡に世界を作ろうと考えた。
(アクロニカル神話より、一部抜粋)