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何か  作者: 茶夢
第一章
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始まり

まだまだ話が見えませんね(^^;

第一話 〈始まり〉


 その日、藍田康介あいだこうすけは朝から嫌な予感がしていた。


 彼の直感は、悪ければ悪いほど、よく当たることで知られている。

 その優秀な直感で、何度か大難を逃れたこともあるから、馬鹿には出来ない。

 もっとも、大抵は、そのまま悪いことに巻き込まれるのが常だった。

 悪いことが起こるのが分かっているのに、避けられないということを不思議に思われるかもしれないが。

 それは、康介の現在の身分や環境に原因がある。


 例えば、過去にはこんな事があった。

 ある日、その時から二週間、家から一歩も出なければ災難に遭わないということが、康介の優秀な直感によって判明した。

 だが。

 しがない一高校生である康介としては、まさかテスト期間中ずっと家に閉じ篭もるという無茶ができる筈も無い。

 嫌々ながら出掛けざるを得ず。

 結果として見事に交通事故に遭い、お気に入りのマウンテンバイクがスクラップになる事となった。

 康介本人はと言えば、予知と言っても良い長期的直感とは別の、本当に物事の直前に働く短期的直感によって、傷一つ負っていなかったが。


 そう。

 悪い出来事に巻き込まれながら、未だに康介が大きな怪我もせず、悲観的もならず生きていけるのは、短期的な直感によるところが大きい。

 康介をよく知る友人からは、「どんなニュータイプ!?」と言われているくらいだ。


 そんな康介が、過去に類を見ない程の嫌な予感を感じていた日。

 それは、親に言われて、嫌々通っていた近所で評判の学習塾のテストの日だった。


【学校の勉強だけで無く、生きて行く為の総合的な力を育てる】という胡散臭さ満点のキャッチコピーを売りにしている学習塾だが、何せ月謝が安い。

 安い上に、怪しげなキャッチコピー通り本当に人格も成長するのが、嘘のような本当の話。

 学校一の不良が真面目な好青年に変貌を遂げたり、いじめられっこがタフなナイスガイに変身したり、という例にはことかかない。


 まだ塾の歴史が十年と浅いせいで、そんなに噂にはなっていないが、卒塾生は財界や政界などで活躍している者も多い。

 知る人ぞ知るという塾だった。

 なので、遠くからわざわざ入塾希望者がやってくるくらい人気がある。

 中には、有名な大物の子息も混じっていたりするのだが。

 どうやって経営が成り立っているのか不思議なくらい少ない人数しかとらないので、どんなに優秀な人間でも落ちる時は落ちるし、何の取り柄も無い人間がひょっこり受かっていたりもする。

 入塾希望者の選定基準がどうなっているのかは、一切明かされていないので、もしかするとただのくじ引きなのかも知れない。

 そうでなければ、割といい加減に面接に臨んだ自分が受かった理由が分からないよな、と康介はひそかに思っていた。


 入りたい者達からすれば噴飯物だが、受けるだけでお小遣いアップという条件に釣られて入塾試験を受けた康介にしてみれば、受かってしまった事は災難以外の何ものでも無い。

 お陰で、高校生になって初めての夏休みを、見事に塾通いで消費する羽目になったのだから。

 地獄のような二週間だったが、その苦行も今日で終わるはずだった。


 よりによって、テスト当日に今迄で最大級の悪い予感を覚えた時には、さすがに楽観的な康介も凹むしかなかった。

 もちろん、休むという選択は(お小遣いカットの危険を冒したくないので)あり得ず、恐る恐る家を出たのだった。


 何とか塾まで辿り着き、テストの会場になっている特別室、しかも今日だけ名札で指定された席に腰かけた康介は、安堵の息をついた。

 どうやら、テストが終わるまで無事でいられそうだ、と思ったからだが。


 もちろん、そう上手くはいかなかった。














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