川と無知
掲載日:2026/10/21
お立ち寄りいただきありがとうございます。
知識として「知っていること」と、心で「分かっていること」の間にある微かな隙間について書いてみました。
秋の夜長に、川のほとりの静かな空気感とともに、少しでも心に響くものがあれば幸いです。
川と無知
僕らは川の長さを知っていた
水深の浅さも
いつから流れているのかも
言葉の記号としてすべて知っていた
ただ
つないだ手の温もりが
なぜ途切れてしまったのか
それだけがどうしても分からない
川底で滑らかな石がささやき合う
「知っていることと、分かっていることは違う」
浅瀬の水面が夕日を反射して
きらきらと光るたび
あの日見落とした君の吐息が
水泡になって弾けて消える
流れていくものは去り
留まるものは濁る
名前しか知らない川のほとりで
僕は自分の無知に寄り添うように
ただ冷たい水に指を沈めている
【了】
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
知っていたはずのものが、ふとした瞬間にまったく違って見えてしまう――そんな心の揺れを川の情景に重ねて描いてみました。
静かな秋の夜のひとときに、ほんの少しでも寄り添えるものがあれば嬉しいです。




