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ちょっとエッセイでも

電車でNo! 〜神よ、なぜ旅路の終にこんな怪人に巡り合わせるのか〜

作者: 辻堂安古市
掲載日:2026/03/31

 


 先日久しぶりに東京に赴いた。

 毎度来るたびに思うのは


「車要らないな、ここ」。


 どこに行くのにも電車で事足りる。駅から遠いところももちろんあるのだが、一駅分くらいは楽に歩ける体力はあるので、主要なところはヒョイヒョイ歩いて行く。


 むしろ、有名な街の巨大な駅(地方の主要駅より大規模なのはさすが)や通りから外れたところを歩くのが楽しい。煌びやかで最新式なビルももちろん興味をそそられるのだが、そんなところから少し外れると、何十年か前にタイムスリップをしたような建物が散在している。


 ある意味無機質な工業製品のような街の中で、そういった「人間の生活のにおい」を感じると、思わずカメラを構えたくなる。ただ、昨今のプライバシー保護の観点からするとむやみやたらとシャッターを切るわけにもいかず、心の中に留めるだけにしている。


 東京にしろ京都にしろ大阪にしろ、少し主要個所から外れると、驚くほど人が少ない。観光ガイドに載っている名所も良いが、少しだけ外れたところを自分の足で歩いてみることをお勧めしたい。




 で、本題。


 当然そのような旅も終わりは来るわけで、この時は両国から蔵前まで歩き、(散歩道としては浅草橋の方が趣きがあった。ガード下の古い喫茶店のクリームソーダには、チェリーさんがいなかったけど……)空港に向かうために浅草線~京急ライナーに乗った。昼過ぎなので乗客はあまり多くなく、余裕で座れたのだが、ここでベンチシートの向かいに座った男性に目を奪われた。



 年の頃、30の後半だろうか。


 背格好は中肉中背、髪もしっかり整えていらっしゃる。なんだか舞台に出ていそうなしっかりとしたフェイスをお持ち。


 しかし、目を奪われたのはそこではないのだ。


 持ち物がヴィトンのリュック・・・に、「ちいかわ」の十センチ大のぬいぐるみを2つくっつけていらっしゃる。

 そしてその服装。全身黒地に金色のロープが張り付けてある。そしてゴツいブーツ。


 ・・・なんだこれ。ナポレオン?いやまあ、散々いろんなファッションの方は拝見したし、どこぞの舞台の人かもしれない。


 そう思い直して空港までの45分程を寝てすごそうと思ったのだが・・・寝れない。



 何故ならこのキンピカナポレオン男がイヤホンもつけずに大音量で動画を見だしたのだ。

 しかも何故か聞こえてくるのは、スーパーの「お釣りを忘れずにお取りください」の音声。一体何を見ているんだキンピカナポレオンノーイヤホン男。すぐ隣の大人しそうなお姉さんも「なにこの人?」って顔で男性を見ている。


 これずっとつづくのか?と思いながら3分ほど過ぎたあたりで、キンピカナポレオンノーイヤホン男がスマホをしまう。やれやれ、と思ったら今度はガサゴソとリュックを漁り始め、席の隣に買い物袋に入ったシューズを置き、そのままポーチを取り出した。


(あー、やっぱ舞台で履き替えるのか?でも余計な席を占めるのはちょっと・・・)と思っていたら、ポーチからオモムロに小さなハサミと鏡を取り出す男性。そしてチョキチョキとその場で眉毛を整え始めた。そして、そのハサミは「えぇ・・・ここで?」と思う間もなく顔の下方、いや()()()に向かう。





 チョキチョキ。




(おぃぃぃぃ!マジかぁ!)





 そうなのだ。キンピカナポレオンノーイヤホン男は、こともあろうか「鼻毛」まで切り始めたのだ。電車の中で。ふんぞり返って座っているから切った鼻毛は当然自分の服に落ちるが、それはお構い無しらしい。


 キンピカナポレンノーイヤホンハナゲチョキチョキ男が本当にダンサーなのか、舞台に立つ人間なのかは知らない。知らないが仮にも人前に立つのであれば、いや立たないにしてもだ。電車内で公然と自らのハナゲをカットし、あまつさえそれをバラまくなどあるまじき行為だ。自宅で身だしなみぐらい整えてこんかい!見た目は悪くないのに、その振る舞いがコトゴトく残念。ミスターガッカリの称号を与えたくなる。




 そしてこのキンピカナポレオンノーイヤホンハナゲチョキチョキ男、泉岳寺駅で降りて行ったのだが、その直前に大声でくしゃみ5連発をかます。今時口を覆うこともなくそんなことをするとは!


 なんとこやつはキンピカナポレオンノーイヤホンハナゲチョキチョキクシャミマキチラシ男であったか。周りの人はクシャミ2回目くらいでさっさと席を立ち、降りる準備を始めた。そりゃそうだろう。迷惑すぎるぞキンピカナポレオンノーイヤホンハナゲチョキチョキクシャミマキチラシ男・・・!





 ちなみに、立ち去る衣装の背中には・・・♡とドクロ。


 本当に何をしている人なんだキンピカナポレオンノーイヤホンハナゲチョキチョキクシャミマキチラシセナカニドクロ男・・・!




 おお神よ、何故旅路の終にこんな怪人に巡り合わせるのだ。


 お陰でゆっくり旅の振り返りをしたかったのにダイナシだ。せめてエッセイでも書かねば元がとれないじゃないか。



 春のうららの隅田川とか吉良邸跡とかクロード・モネとか他にも書くことあったのにー!








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― 新着の感想 ―
畢竟、人間こそが奇々怪々で、一番面白いってことを証明するようなエッセイでした(*^-^*)
 災難でしたね。  男が何かやらかす度に呼び名が長くなるのが、凄くおかしかったです。笑笑  都会の人も色々な方いらっしゃるのですね。  田舎にも負けない人に私も遭遇しました。  病院の待合所で変なよが…
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