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青炎紀  作者: 二十二郎
〈2〉破魔之役:金剛の従者
71/73

21 闘技大会

近頃多忙につき更新が途絶えてしまい、面目次第もございません!

今日一話目の更新です!

霊信を通して一歩一歩、絞り出すように語られたソーラのこれまでの経験は、アールンを呆然自失させるには十分すぎるほど過酷で、悲惨であった。


この街の主に対する怒りも勿論ある。しかし彼が最も強く感じていたのは、彼女を守り切れずこの状況を招いてしまった自責の念、そして彼女に対する罪悪感であった。


目頭を押さえ、喉に何者かが詰まる感覚を覚えた。

何か言葉を掛けてやりたいが、具体的にどんな言葉が適当なのかが全く見えてこず、気持ちだけが先行する。


『……すまない。本当に、すまなかった。』


鼻をすすりつつ絞り出したその一言に、霊信の向こうから穏やかな声が響いてきた。


『私は……平気です。アールンさんが来てくれたなら、もう。』

『絶対に助け出す。だからもう少しだけ、辛抱してられるか。』

『……はい。必ずや。信じていますからね。――ッ。』


そこで、霊信はぷつりと切れた。

切れる寸前に聞こえた名状しがたい叫びのような声は、まさか……。


「どうやら、”お客さん”が来ちゃったみたいだね。」


牢屋の石壁に寄りかかった金髪の少年―ノルンの言葉に、アールンは思わず目を見開き立ち上がった。


「御霊の話だと、ここのところ”訪問”が途絶えてたらしいんだけどな。運が悪かったね。」

「クッソ……やっぱり今すぐ助けに行こう。」

「さっき言ったことを忘れたのかい? よしんばあの子の元に辿り着けたとして、動けない彼女を連れた状態で無事に脱出できると思う?」

「ぐっ……。」

「厳しいことを言うようだけど、それは君だけじゃなく彼女の命まで危険に晒すことになりかねない最悪手だと思うよ。過ちを重ねたくないのなら、まずは一度落ち着こう、ね?」


外の燭台の炎が反射した少年の青い瞳に静かに見つめられ、アールンは渋々近くの寝台に腰を下ろした。ノルンは頷き、青白い光となって消えた。


「ごめん、ソーラさんは何て言ってたの?」


そこで、向かいの寝台に座り、霊信で通話していた時は完全に蚊帳の外であったメウナが声を上げた。

今の話の概略を伝えると、彼女は口を覆って荒い溜息を吐いた。


「酷い……。」

「ああ。全部俺のせいだ。」

「え?」

「俺があの時ちゃんと守れていれば、こんなことには……!」


そこで、三つ編みお下げの少女は首を横に振った。


「今は、大会の事だけ考えよ?」

「……そうだな。」


「今の話からするに、お前たちと”従者”の間には浅からぬ縁があるようだな。」と、ドール。

「ああ。大切な仲間だ。」

「そうか。」


大男はそう言ったきり興味を失ったように剣を抜き、整備を始めた。


アールンがざわつく心のままに俯いていると、外の廊下から革靴で湿った床を歩くびちゃびちゃという規則的な音が聞こえてきた。


見回りでもやってきたのかと思い特段の注意は払わずに居たところ、その足音は彼らの房の前でぴたりと止んだ。


「誰だ。」


ただならぬ緊張を孕んだドールの誰何に、アールンも顔を上げた。

見ると、そこには黒の(かぶり)付の外衣で全身を覆った人間が一人、こちらに向かって佇んでいた。


頭の隙間から覗く冷たい光を湛えた瞳と目が合い、アールンは息を呑んだ。

その人物はドールの誰何を意にも介さずといった風で、アールンの顔を見つめて鷹揚に頷いた。


「成程。その顔立ち、そして何よりその髪色。やはり、君はまさしくあの子らの子供だ。」

()()()()……?」


母と、父であるはずの故アルトル王のことであろうか。

だが、言い方が引っかかる。この人物は二人の幼少を知っているというのか?


「哀れなことだ。(たっと)()()血の生まれながら下賤の種と交わり、背負わずともよい苦しみを負ってしまったのだからな。」

「何なんだ、いきなり押しかけてきたかと思ったら好き放題言いやがって。」


この男、放っておいたら秘密にしている自分の”正体”―エルドーレン朝の血の事を大声で喋りかねない。危険だ。


「そもそもあんたは誰なんだ?」

「ふむ、私は君の同胞さ。もっとも()()()と言った方がより正確だが。」

「同胞……悪いが全く身に覚えがないな。」

「まあ、それは無理も無かろう。」

「はあ? ったく何なんだよ…で何の用だ?」

「何ということはない。ただ、少し顔を拝んでおきたかっただけだ。」

「そうか。俺たちは戦いに備えて休まなきゃいけねえんだ。用が済んだならさっさと行ってくれないか。」

「成程。(いにしえ)の哲人の言にも、”人生は宴、去り際が肝心”とあることだしな。尤も私にとっては些か共感し難いものだが。では、またどこかで。」


そう言うや、男は再び不快な足音を響かせながら去っていった。


「なんだあいつ……。」


アールンは、男の後ろ姿が見えなくなるまで警戒を解かなかった。

その隣に、またもノルンが現れた。


「あの人には、注意した方が良いと思うよ。」

「……あいつとは因縁が?」

「うん。ちょっとね。」


いつになく神妙な少年神の様子にただならぬものを感じたアールンは小さく息を呑んだ。


暫くして、メウナが眠りに落ちたのを確認してから彼は自分の寝台に横になった。

ドールはと言うと、勇敢にもあまり綺麗とは言えない床に手をついて筋トレの真っ最中である。

皮肉なことに、先の邂逅によって彼の塞いだ気分は幾らか薄れたのか、程なくして彼の意識は深い眠りの底に落ちていった。






少し後、デイルダム港湾部。


夜の海に向かって突き出した巨大な突堤の上に、先程アールン達の檻の前に現れた謎の男の姿があった。


突堤の傍らには、物資の箱を数多積んだ商船と思しき巨躯の影が横たわる。

しかし男を出迎えたその船の主は、札甲の鎧に兜を纏って長槍を携えているという、商人の護衛にしては重武装すぎる兵士の群れを背後に従えていた。


「これはこれは、”タルエレメーン(大輔政)”閣下御自らいらっしゃるとは。驚きですな。」


男の言葉に、兵士を従えた船主は鷹揚に頷いた。

船の帆に月明かりが遮られて暗くなっているこの場所では、その顔まではよく見えない。


「なに、気分転換がてら見物を……と思ってな。強襲の兵は別の者に任せておる。」

「成程。お言いつけ通り、西の通用門の鍵は開けておきました。」

「結構。しかし、そなたも余程エルドーレンが憎いのだなぁ。」


無精髭をいじりつつ、”大輔政”は呆れたように言った。


「魔の力を操り、賊を唆して”紅玉の従者”を攫う。その上で人を雇って情報を流したのも、全てはあの王子を釣り出して始末するため。だが、それが終わればあとは野となれ山となれとは……。一体何がそなたをそこまでさせるのだ?」

「…私めの身の上話など、閣下に聞かせるまでもありません。」

「そうか。まぁ何でもよいが、私のところの”天蓋”には手を出してくれるなよ。」

「心得ております。」

「フン。だが……本当に、あの王子を始末できるのか?」

「といいますと?」

「北からの話によれば、あれは中々腕が立つらしい。試合の途中で死んでくれれば結構だが、仮に勝ち残られでもしたら……。王族を弑し奉った上で従者を『救出』したなどと世に広まれば、流石に不都合―。」

「ご心配なさるな。」


”大輔政”の言葉を、男は自信ありげに遮った。


「確かに、現状は想定とは少々異なります。特に、あのドール小将と組まれたのは予想外でした。ですが、どのみち此度の”大会”に勝者など居りません。私は王子の死を得、閣下は更なる名声を得る。それだけを考えなされ。」

「ほう。あの”征魔”をも下す手立てがあると?」


黒ずくめの男は頷き、陰険な笑みを浮かべた。


「あんなもの、所詮は勝ち筋のある局面で勝てる相手と戦ったに過ぎません。その程度で『”魔”を征する』など……笑止千万にございます。」






『―次なるは瞬き厳禁! 今日の目玉の一戦だァ! 』

『栄えある強者にも運命は無慈悲だァ! あるのは勝利か、さもなくば死か!』

『”(オンク)”!!!! ドール!! ルーウィン!! メウナァ!!!!!!』


その呼び声と共に扉が開く。


その先で待っていたのはむせ返るような熱気と異臭。

そして何より強烈な光と音の暴風。

デイルダム城地下闘技場は、そのような場所であった。


ここは嘗て、公爵家の兵が己の力を競う場所であったとヨラが話していた。

しかし往時のそこは、”闘技大会”の会場として喧騒の中心となっている今のこの場所の様相とは似ても似つかぬものであったという。


しかし、そんな過去に思いを馳せる余裕は闘技場の底の砂地の上に立つアールンには無かった。


目を凝らし、彼は興奮して奇声を上げる観客たちの遥か上、観客席に張り出すように作られた展望席を睨んだ。


『”(オルト)”!!! ”グラヒューダ”!!! 歴戦練磨の三人だァ!!!』


対岸の出場口に目をやると、そこからは大きな両手斧を片手で担いだ筋骨隆々の男を先頭に、短槍を携えた男が二名続いて姿を現した。短槍持ちはいずれも頑丈そうな金属製の丸盾を装備している。


グラヒューダ(轢殺の三人衆)?」


チーム名か何かだろうか?

横にいたドールに訊いてみると、彼は吐き棄てるように


「くだらん虚勢だ。こちらから轢き潰してやる。」と言った。


その言葉通り、試合開始の鐘が鳴るとすぐにドールは走り出し、立ち向かってきた二名の丸盾を横薙ぎで轟音と共に打ち払い、重そうな長剣を瞬時に返して一人の喉に突き込んだ。


返り血を避けるように軽く跳び退って体勢を整えると、再び地を蹴って短槍持ちのもう片割れにも向かっていく。

今度は相手もよく反応し、ドールの攻撃を器用に躱しつつ要所要所に得物の穂先を突き込んでくる。二人の動きは完璧に嚙み合った舞のようで、介入する隙すら全く無いように思われたが、そんな一進一退の攻防に隠れて不穏な動きをしている者が居た。


「あの斧野郎、ドールの背後を狙ってやがる。させるか!」


アールンはそう呟くや、剣を構えて走り出した。

短槍使いとドールの戦闘場所を迂回しつつ斧持ちに肉薄し、大上段から剣を振り下ろした。

しかし、斧持ちの男はアールンの動きも視界の端にしっかりと捕捉していたようで、彼の一閃はいとも容易く回避され、お返しとばかりに両手斧が振り下ろされてきた。


「ッ!」


顔の至近距離を通過した肉厚の刃は、身の毛もよだつような風圧を伴っていた。

間一髪でそれを回避したアールンは二の斬撃、次いで三の斬撃を放つが、今度は異様に強靭な斧の柄に防がれてしまう。


(クッ、柄まで鉄で出来てんのかよ! 重くねえのか!?)


一旦退き、今度は勝る機動力を活かして斧持ちの脇を攻める。

しかし、男は斧を軸とするかのように体を動かし、アールンの攻撃は再び男の斧に防がれてしまった。


『弱兵は得物に振り回されるが、強兵は得物を軸として立ち回る。』


ふと、彼は遥か昔に聞いたそのような格言を思い出した。

目の前のこの武人も、並々ならぬ場数を踏んできたに違いない。アールンの額に冷たい球汗が浮かんだ。


ギリギリと鍔迫り合いが始まったと思いきや、男は唐突に斧の柄を支える手の力を緩めた。思わずつんのめった次の瞬間、アールンは腹に強烈な衝撃を感じた。


「ガハッ!?」


一瞬の奇妙な浮遊感ののち、体全体を強く殴打され口内に砂が侵入する。

ぼやける視界の中に、アールンは彼と立ち替わり斧持ちに立ち向かっていったメウナの後ろ姿を見た。

しかし、男は斧を払い上げ、少女の体を鎧袖一触に叩き飛ばした。

幸い致命傷は避けられたようだが、その衝撃は並大抵のものではなかろう。音を立てて落ちた先で、彼女は動かなくなってしまった。


そして、二名の妨害者を撃退した斧持ちの男は、未だ熾烈な攻防戦を繰り広げるドールの背後に近づいて行った。


「クッソ……!」


アールンは震える足で立ち上がり悪態づいた。

このままではドールが挟み撃ちにされてしまう。鼻持ちならない奴だが、初っ端から彼に死なれるのは大きすぎる損失だ。


そして何より、仲間が目の前で死ぬのは許せないのが彼の性分である。


必死に剣を握り直したアールンの眼前で……斧持ちの男の背中が槍の穂先に突き破られた。


「ウゴォッ!!?」


それまでの喧騒は静まり返り、斧持ちの男の呻き声だけが不気味に響き渡った。

その背中からは鮮血が噴き出し、男は力なく倒れる。

その向こうには未だ健在のドールと、既に血の池に沈んだ短槍持ちの骸の姿があった。


「黙って見ていればいいものを。」


静まり返る場内。

その中心で。血濡れの短槍を放り棄てたドールは溜息がちにアールンを見下ろした。


「いやあんた、背中狙われてたんだぞ。」

「そんなことは最初から百も承知だ。お前にこの男の足取りを乱されなければ、もっと楽に勝てていたことだろう。」

「何だと…!?」


皮肉っぽく言うドールにアールンは強く反発するが、大男は更に声を低くし、威嚇するように重ねてこう言った。


「足を引っ張るなと言ったはずだ。出しゃばらず、自分の身だけを守れ。」


そこで、やっと我に返った司会が拡声筒越しに叫んだ。


『な、な、なんと!! ドール選手!! 絶体絶命の挟撃を見事打ち破ったァ!! なんという一瞬の逆転劇!!!! 勝者、”(オンク)”!!!!』


その掛け声に牽引されるように、周囲に歓声が戻ってきた。


「”勝つ”には、俺だけで十分だ。」


割れんばかりの叫びと歓呼の嵐は徐々に一定のリズムを形成し、観客席全体に波及していく。その中心でドールはさっと踵を返し、入場口の扉の方へと去っていった。





次の試合の相手が標的としたのは、アールンとメウナの二人であった。

彼らは鼻からドールの足止めすらも考えず、試合開始と同時に全員が彼の脇を颯爽と走り抜け、二人に肉薄。

戦力を無駄に消耗させないための理にかなった判断と言えるだろう。


しかし、この相手の戦闘能力が前の敵よりも幾らか低かったのは幸いであった。


刃が篝火の炎の反射光を曳きながら打ち合わされる。

袈裟斬り、逆袈裟、横薙ぎ、躱して突き込み。

数に勝る相手の攻撃をアールン達二人が巧みに凌いでいると、やがて相手側も余裕の色を失いはじめる。そして、それが彼らの運の尽きであった。


彼我の動きが止まり、互いに次の一手を読み合う。

そこへの意識が集中からか、周囲への注意が散漫になった一瞬を絶妙に狙い、ドールが動いた。


まず初めに彼はメウナと相対していた男に音もなく走り寄り、背後から首裏を剣で一突きにした。そして膝をつく男をよそに、アールンに対して二人がかりの猛攻を仕掛けている残敵を側面から攻撃して殲滅、またも瞬く間に勝敗を決してしまった。


「……。」


ドールは相変わらずの無表情で、得物を腕で拭い、こびりついた血を乱暴に落とした。

今しがた斬り伏せた男たちのことなど気にも留めていないかのようだ。


「…助かった。」

「そうか。」


おずおずと、周囲の歓声にギリギリかき消されない程度の声量で礼を述べたアールンに対し、ドールは一言そう言って、彼とメウナの体を確かめるように見回した。


「何だ?」

「いや。怪我は無いかと思ってな。」

「あっても治療なんてしてくれないんだろ。」

「ああ。だが無傷でなければ完璧とは言い難い。その確認だ。」

「だったら最初から助太刀してくれてもいいだろ…。」

「介入は時宜を見極めなければ只の邪魔と化すだけだ。ちょうど、先の試合のお前のようにな。」

「チッ……。」


こういう皮肉屋なところは、実に気に入らない。

うんざりしたアールンは、闘技場の出口に向かって歩きつつ視線をメウナの方に向けた。


「あんたも、大丈夫そうだな。」

「うん。でも……ごめんね。」

「何がだ。」


光と音の満ちる会場から狭く暗い地下道に入り、彼女を含めた周囲の情景がぼやける。

そんな中、彼女は少し俯きつつ言葉を継いだ。


「やっぱり私、人を斬るのは苦手なんだ。だからいっつも躊躇しちゃって、全然役に立ててない。」


そこで、はぁというため息が聞こえた。


「さっきだって決定打は何度も打てたのに、あと一歩出なかった。魔物ならそんなことにはならないはずなんだけどね。」

「…そりゃあ、仕方ないだろ。人には誰しも得手不得手があるんだから。それに、相手をバッタバッタと斬り倒すことだけが”活躍”じゃない。さっきみたいにあんたが敵を引き付けてくれれば、その分俺たちみんなが動きやすくなるだろ? あんたは役立たずなんかじゃないさ。」

「……ありがとう。」


魔物は斬れても人は斬れない、というのはよくある話だ。


アールンの場合は、故郷の街ガーテローが南のカシダの街を占拠していた海賊の襲撃を頻繁に受けていたこともあり、人間、特に荒っぽい成年の男を斬るということには然程の抵抗は無いのだが、そんな彼とて最初は飛び散る血に足が竦み、戦場でも棒立ちか、よくて防戦一方といった醜態を晒していた。


先程の言葉はアールンがそんな事に悩んでいた時に、彼に多くの事を教えてくれた先輩の戦士から言われた言葉だ。その戦士が翌日に戦死したからか、彼はその言葉を不思議なほど鮮烈に覚えていた。


(う…ちょっと縁起が悪かったか。)


「フン。”シャヴィス・ワイディ(偽薬売り)”め。」


アールン達の様子を見て、ドールがふと鼻を鳴らし、吐き棄てるように言った。


「…どういう事だ?」

「弱さは識るべきものだが、認めるべきものでは決してない。お前のような、相手に何の益も齎さぬ甘言を弄する者のことを南ではそう言うのだ。」

「んだと…!?」


確かにごもっともだが、それは今言う事か!?


「待ってアールン!!!」


思わず歯を食いしばり拳を握りしめたアールンを、メウナが大声で制止した。

アールンだけでなくドールさえも驚きに目を見開く。その面前で、メウナは我に返って怖気づきながらも慎重に言葉を紡いでいった。


「勿論その…ルーウィンの言葉は嬉しかったよ。でも、私はドールさんの言う事も(もっと)もだと思うんだ。私ももっと強くならなきゃ。守られてるばかりじゃいられないし、いたくないから。」

「それはそうだが、そうじゃなくてだな――。」


食い下がろうとしたアールンを、彼女は無言で首を横に振って遮った。


「今は仲間割れしてる場合じゃないよ。口論なんて、勝った後に幾らでも出来るでしょ。」

「…そうだな。」


有無を言わさぬ彼女の目に見据えられ、アールンは渋々引き下がった。


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