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青炎紀  作者: 二十二郎
〈1〉破魔之役:紅玉の従者
32/53

30 はじめての霊体改造

 2人の名前をしっかりと咀嚼した後、ティナはおぞおずと口を開いた。


「ええ...というか大丈夫なん...ですか?」

「いいよ...丁寧語なんて使わなくて。」

「わ、分かった、けど...政務とか、忙しくない、の?」

「大丈夫だから出てきたんだ。今日の分は粗方終わらしたから。」


政務と言っても、大半は反発したり言葉を濁しまくる有力者達との言葉の格闘であるのだが。


「そ、そう...じゃあ、私の作業場に案内するから、着いてきて。」




迷路のようなハニスカの裏道を、ティナは時折振り返り、アールンとソーラがちゃんと着いてきているかを確認しながら進んでいった。


表通りから脇道に逸れ、時には用水路の上の欄干のない細い橋や、手摺や柵のない狭い階段を足元に気をつけながらどんどん奥へ進んでいき、やがてそれなりに広い崖沿いの道路に出た。


「だいぶ中心部から離れたな...。」


晴れの空の下、眼下にハニスカの町並みを望みながら、アールンはそう呟いた。

ハニスカには”政務部”の以外にも、防衛部、農業部、資源管理部などがそれぞれ採取場の大厦を庁舎としていて、雑多な建物と大きな配管や煙突の集合体の中にセラン(台郭)とも異なる白い大きな建物が浮かんでいるのは、やはり何度見ても不思議な光景であった。


「で...ここが私の家兼作業場。」


ティナの家は、元は採取場の保守点検の作業員の詰所だったらしい二階建てのしっかりした建物だった。


「一人でここに住んでるのか?」

「うん...家族は居ないから。でも、私だけの家ってわけじゃないんだ。」

「というと...?」

「一応、ここは私とネイレード姉弟の宿舎ってことで、政務部から充てがわれてるの。」

「なるほど...。」

「まあ、ラディンとかは大抵自分の作業場所に寝泊まりしてるから、ここに戻ってくることはあまりないし、戻って来たら来たで、大抵はエーラさんと一緒で五月蝿いからあまり来ないで欲しいってのが本音なんだけどね。」


身も蓋もない意見だが、ハニスカに着いてすぐに見てる側が心配になる程の弟煩悩ぶりを見せつけたエーラのことを思い出すと、2人は確かにと神妙に頷かざるを得なかった。


「あ、中結構汚いけど、大事な資料も多いから踏まないで、足元注意ね。」


一階部分は嘗て「霊気自動車」―馬無しで動く馬車のような乗り物である―が停めてあった”車庫”であったらしいが、今ではその主は政務部に預け、余った空間をティナ自身の作業場として活用しているらしい。


そこは土足で入ることができるが、広い入口に掛けられた幕を避けて中に足を踏み入れると、アールンは途端に次の一歩の目標を見失った。


室内には紙の山盛りになった木箱や桶、更には大ぶりのよく分からない機械などが散乱しており、まさに足の踏み場もないような状況であった。


「うわっ...すごいことになってるな。」

「まあ、普段は人に見せる類のものじゃないから...。」


颯爽とその山を抜けていったティナがそう言った。


どうやら彼女が日常使いする動線だけは道が綺麗に整えられているようで、部屋の奥に行くに従って歩きやすくなっていく道に、彼女が普段どういう生活をしているのかが察せられた。


アールンとソーラは何とか道なき道を突破していき、少々つんのめりつつもティナの立っている場所まで辿り着いた。


「じゃあ...取り敢えず座って。はい椅子。」


ティナは二つの小さな丸椅子を持ってきて、2人に差し出した。

2人は頭に巻いていた布を取り、それを受け取って座った。


「で...まず何から聞いたらいいのかな...。そう、じゃあ、この手袋について、知ってること全部聞かせてくれない?」

「そうは言ってもあまり覚えてはいなくて...さっきソーラが言ったことがほぼ全部って感じだ。」アールンが困り顔で答えた。

「はあ...その、”名前”とかは...?」

「あ!えーっと、確か建国神話から取られてて...そう、”ハリージェ”でしたっけ。」

「うわー、しっかり言っちゃってるんだ...まあ、王子殿下にならいいのかな...。」

「それ聞いたの発覚する前だけどな。」


アールンが何気なく言うのに、ティナは少し眉を上げた。


「え、発覚って...?」

「彼、元々自分が王子だってこと知らなかったんですよ。説明すると長くなっちゃうんですけど。」

「それでも命は狙われるから、こっちにしてみりゃ何がなんだか...ってなってたな。」

「なるほど...道理で...。」

「何がだよ。」

「う〜ん、何となく、纏う雰囲気が...いや、やっぱ失礼だよね。しっかしラディンの野郎...そしたら道すがら会った一般人にそこまで喋ったってことじゃん...。ほんと有り得ないんだけど...。」


ティナはそう言って、苛立ちを表すように足をゆすり指で側の机を叩いた。


「次あいつが来たら注意しとかないと...。まあ、大体分かったわ。」


そして、話す話題が無くなり、2人とティナの間には気まずい沈黙の帷が下りてしまった。

アールンはこの空気を打開しようと、ティナに彼女の研究を見せてくれないかと丁重に申し出た。


「私の...大体小難しい論文だけど...あ、でもあれなら面白いかな...でも問題になるか...?」

「なにか問題でも?」


ティナの逡巡に、ソーラが尋ねた。


「いや...あのさ、ここに来るまでに、多分ラディンが何回か目を光らせるような場面があったと思うんだけど、その時に何か”異常”は無かった?」

「異常?思い当たるのだと...”ハリージェ”から物を出し入れしてたな。」

「いや...それ以外で。体調が悪くなったりとか。」

「いえ...特には。」

「あっそう...じゃあ本当に大丈夫だったんだ...。」


ぼそぼそと独り言を言うティナに、2人は話が全く見えてこずただ首を傾げるだけであった。


「どうたんだ?」

「あー...実はね、私の、というよりも私とラディンが共同開発した物があるんだ。それがこれ。」

「んん?」


ティナは脇の机の下の箱の中から木の小さな箱を取り出した。その蓋を彼女が丁寧に外すと、中には銀色に輝く円筒形の物体が姿を現した。


「これは...遠眼鏡ですか?それにしては少し小さいような...。」

「遠眼鏡を知っているの?」とティナがソーラの方を向いた。

「はい、エイローアからの贈品の中に、狩猟用のが入っていました。」

「へえ...レンズ式かな?エイローアにはまだ残ってたんだ...調査部の連中が、国境の要塞群の魔物が邪魔すぎて北方の調査もままならんって嘆いてたけど、エイローアとの交易路が残ってるの?」

「陸路ではないですが、海から商船団がワンデミード半島に来るんです。」

「そうなんだ...んー、確かに使い方は似てると思うけど、別に遠くを見るためのものって訳じゃないだよね...。」

「じゃあ、これは何なんだ?」

「これは”貼付型視覚補助体系(システム)”、通称”コーフェル”っていうものだよ。」


正確には、その貼付器。とティナは付け足した。


「また建国神話か?」

「はい、ええと...確か、常に始祖の車駕の屋根に登っていた見張りで、500ラール(3キロ)の先までのありとあらゆる物をしっかりと見通せたらしいです。」

「凄いねソーラさん、私も出典初めて聞いたよ。ラディンが目に関する伝説だからって持ってきた名前だから...。」

「なるほど...それで、この効用は...?」

「う〜ん...正直言うよりも試したほうが早いんだけど...その前に、一つ聞いておきたいことがあって...。」

「何だい?」

「その、王族とか従者様の”魂”をいじるのって、問題にならないかな...って。」




「本当に大丈夫なのね!?私これバレて捕まって八つ裂きとか嫌だからね!?」

「大丈夫だって。もし兵が来ても、名前出して本人達の了承済みだ、確認取ってみろって言ってやればいい。」


ティナ曰く、”コーフェル”とは霊体学の主目的の一つ、”霊体の利用と強化”を行う「霊体改造」の一種であるらしい。

しかし、それは「玉体に手を入れる、あるいは傷つける行い」という解釈もでき、だからこそ気が引けるというわけだ。


「じゃあ...先ずは”コーフェル”の着地場所...いや受け入れ先?になる”基幹構造”から入れていくんだけど、そのために霊体を一部削って構造体を入れる場所を作るよ。」

「ちょっと待て、途端に危なげな話になってきたぞ。」

「霊体から少し霊気を抽出するだけだから痛みはないけど...やっぱり駄目そう?」

「じゃあいいか...。」

「怖いな...頼むから死罪だけは勘弁してね??」


そして、ティナは革に覆われた大仰な箱を持ち出し、中から細い管が繋がった小さな棒を取り出した。


「じゃあ、(うなじ)に集中して。」

「おう。」


先ずはアールンが試す事になった。

程なくして、ティナの冷たい指が項に触れてきた。


「くすぐったいんだが。」

「ごめんね、すぐ終わるから。」


敏感な場所を暫し撫でられ、彼の意識が首裏に集中した後、今度は金属棒の先の無機質な感触が項に現れた。


「あ、そうだ。いい忘れてたけど、霊気吸い出す時、結構”アレ”な気持ちになるけど、我慢してね。」

「アレって...ッ!?」


その時、彼の首から胸にかけてが淡く青白く光りだした。

その現実離れした現象は、普通ならば見とれてしまうほど綺麗な光景だが、今の彼にそのような余裕は無かった。


「何っ、だ、これ...!うう...。」


アールンは頬を紅潮させ、そう呻く。

彼の頭の中に在ったのは、只ひたすらの快楽、悦び、陶酔感。

彼とて、全く性の経験が無いわけではない。自慰行為だってしたことはあるし、その果てに何が待っているのかも知っている。

今の感覚は、その瞬間の一歩手前を継続的に体感しているかのような感覚であった。


「苦しいだろうけど、抑えて抑えて...。」


その肩を抑えながら、ティナはもう片方の手で抽出器を握り続け、着実に彼の霊気を採取していく。


(ヤバい...これは...!)


思わず下腹部で硬いものが立ち上がる。

こんなみっともない姿をソーラやティナに見られていると思うと、気持ちよさよりも恥ずかしさが勝ってしまう。

しかし、抗い難い快楽もまた雲霞のごとく攻め寄せ、着実に彼の理性の城壁を破壊しようと槌を振るっている。


もう少しで限界に達しようかというところで、その感覚は立てた板を流れる水のようにすっと引いていった。


「はあ...はあ...。」

「はい、お疲れ。霊体と肉体が近くて助かったよ。本当ならもう少し時間がかかってた。」

「嘘だろ...。」

「これが、貴方の”霊気”ね。」


そう言いながら、ティナは虚ろな目をしたアールンに青白く光る物体の入った硝子の入れ物を見せた。


「おう...。」と、彼は上の空でそれを眺める。

「じゃ、この穴が塞がらない内に構造体入れちゃうからね。」


そして、彼女はまたも項に、今度は管の付いた黒い厚布を当てた。

しかし、今度は特に変な感覚もなく、全身に青白い光の筋が幾本も伸びた後、それらの光は消え失せた。


「よし...これでひとまず基幹構造の安装(インストール)は終わったかな。じゃあ...次はソーラさん?」

「へっ!?」


ティナの言葉に、ソーラは頬を赤らめながら素っ頓狂な声を上げた。先程のアールンの醜態を見ているからこその反応であろう。


「...わかりました。アールンさん、後ろ向いてて下さい。」

「了解。」





「きゃっ、ああっ!?」

「うっ、あっ゛あっ゛ああん!」


姿は見えなくとも、ソーラの声は聞こえてきてしまう。


酷く居た堪れなくなり、やはり別室へ行ったほうが良かったかとも思ったアールンは、ティナに家の奥につながる廊下への扉を教えてもらい、その外で待機することにした。


扉から先に少し進むと流石に声は聞こえてこないので、彼は床に座り込みながら先の感覚を思い出していた。


(あれは何とかならないのか...?)


すこし時間が経った頃、コンコンと扉を叩く音と共にティナが顔を出し、「終わったよ。」と声を掛けてきた。

中ではソーラが、肩で息をしながら呆然と椅子に座っていた。


「...聞いてました?」

「最初の方は。部屋から出てからは聞こえてないよ。」

「そうですか。それは良かったです。」

「そうなのか...?割と最初から結構な声で...いっで...。」


脛を蹴り上げられ、彼は思わずうずくまった。

屈んだ際に見えた、彼女が座る木椅子の真新しいシミについては、聞かないほうが良さそうだった。


「はいはい、2人ともお疲れ。じゃあ、ここからはいよいよ”コーフェル”入れていくよ。はいこれ貴方の椅子。」


アールンは新たな丸椅子を差し出され、そこに腰を下ろした。

ティナは彼の右目に件の遠眼鏡様の器械を被せ、何かを操作した。すると、一瞬強烈な光が右目を襲ったが、それ以降は器械を外されても何の変化も起きなかった。


「両目やって(うなじ)から起動操作するまでは、確かに何も起きないでしょうね。」


その後、左目も同様に強烈な光を浴び、瞬きをする彼をよそにティナは背後へ移動し、項に”遠眼鏡”を当て、何かを操作した。


すると、突然彼の視界に青白い縦の文字列が次々に浮かび上がった。


『統合体系(システム)に接続。』

『構造体貼付確認...問題なし。』

『霊体構造適応...完了。』

『外部肉体構造適応...完了。』

「おお?」


『貼付型視覚補助体系(システム):”コーフェル”を起動します。』


そして、彼の視界には再び何も映らなくなった。


「で、ここからは...。」

「起動の文言出た?」

「ああ。なんとかを起動しますって。」

「じゃあ、視界の下部に目線だけ向けてみて。」

「目線だけ...おお?」


そこには、「霊信」と二行で書かれた縦長の長方形がちょこんと鎮座していた。


「『霊信』っていう...四角形のやつが見える?」

「ああ、見える、見えるぞ!これ、俺にしか見えてないのか?」


アールンは思わず子供のように はしゃぎ倒した。


「うん。まあ、私には私のが見えてるけど。貴方の視界に映ってるのは貴方にしか見えない。で、今回は特別に、互換性のある最新世代の”直接霊信体系(システム)”も入れておいたの。これで使い勝手とかは粗方わかるはず。じゃあ、その『霊信』って箱に意識を集中させてみて。」


言われた通りにしてみると、その「箱」がズイッと拡大されて視界が暗くなり、青白い縁取りの入った黒い方形が視界の中央に浮かんだ。


「何も無いぞ。」

「箱の下の方に、『探索』って無い?」

「あった...これに意識を向ければ良いのか?」

「そう。」


すると、黒い四角形は消え、暗い視界のままにティナの身体だけが明るく強調されていた。


「なんか、あんただけ明るく見えるぞ。」

「それが、霊信に対応してる相手だよ。じゃあ、私に向かって意識を集中させて。」


すると、視界は通常の明るさに戻り、代わりに視界の上の方に縦書きで『発信中』と表示された。


然程の間を置かず、その「発信中」が「通話中:ティナ=エルクラート」に変化し、直後耳元にティナの声が聞こえてきた。


『どう?聞こえる?』


「ああ。」


『そう。万事大丈夫そうだね、いや〜、さっきは大変だったんだよ〜。』


「大変だった?」


『ソーラさんがね...。』


そう「言い」ながら、ティナはソーラの方を見てニヤついた。


「ソーラが?」

「え、どうかしました?」


『いや〜天下の”紅玉の従者”様のあんな姿、なかなか見られるもんじゃないよ。』


「あんな姿...?ああ、成る程。」

「ちょっと、何話してるんですか!!?」

「え、いや、だから...今のティナの言葉...もしかして、聞こえてない?」

「何も聞こえてないですよ!ただアールンさんの言葉だけしか聞こえません!!」


その時、ティナが唐突に吹きだし、2人は同時に彼女の方を見た。


「いや、あっははは、いや、私は変なことは何も話してないよ?この霊信は、別に()()()()()喋らなくても、頭の中で言葉を念じれば相手に届くんだ。つまり、基本的には第三者に聞かれずに色々な話が出来るってことだよ。まあ、それを傍受するための設備も既に開発して、政務部の生活治安局に渡してあるけど。」

「へえ...『こういうことか?』」

『そう。』


アールンが心のなかで言った言葉に、ティナも霊信上でそう言って頷いた。

その様子を居ても立っても居られないような風に見つめる者が、一人。


「さっきから...アールンさんばっかり目を光らせて...楽しそうに...私にも早くやらせて下さいよ!!」

「あっ、ごめんね。じゃあ、ソーラさんの方も”安装(インストール)”しようか。」





こうして、2人の初めての「霊体改造」は無事終了した。

最初の霊気採取こそ大変だったが、総じて新鮮な体験ばかりであり、彼らは興奮しっぱなしであった。


ティナは、今の所この「無線霊信」はごく近い距離でしか使えないので使う場面は限られるだろうが、今後何年、何十年を経て性能が向上すれば、きっと未来には欠かすことの出来ぬ技術になるだろう...と豪語していたが、実際2人もその通りだと頷くばかりであった。


また、今は霊信と”ハリージェ”の操作ぐらいしか使い途はない”コーフェル”だが、こちらも更に機能を増やしていくつもりのようだ。


「はー、しっかし、これで私は王族と聖なる従者の魂をいじった初の人間になっちゃった訳だ。」

「”大災禍”の前はこういうのは無かったのか?」

「先駆けになる理論といくつかの実験はあったけど、今とは似ても似つかないし、まだだいぶ危険だったから貴人にはとても使えなかったと思うよ。」

「へえ...。」


ティナの主戦場である「霊体」は、意識の座であり司令塔でもある「魂核」と物理存在である「肉体」とを繋ぐ架け橋のようなものであるらしい。

今は安全に行う技術があるとは言え、仮に失敗すれば部分不随や全身不随、意識自体がなくなったりすることも有り得る、危険を伴う施術なのである。


「ま、それを私とラディンが改良・実用化したって訳。まあ、資源が厳しいから量産は出来ないんだけど。今はその基礎理論をもとに、他の人達が無線で”ハンラーグ(配霊)”をする技術も開発してるらしいね。」

「ほう、そりゃ良いな。それなら田舎にも霊気を継続的に送れそうだ。」


旧時代の「配霊」のやり方は、都市圏こそ配管を使用した上下水道のような形での輸送が主であったものの、ワンデミードのようなド田舎に至っては、時々やってくる輸送団が霊気の詰まった樽を運んできて、それらを霊気貯蔵庫に溜めておくといったやり方が取られていて、大規模な機械使用など夢のまた夢であったらしい。


「そう言えば、貴女とラディンさんは...その、どういったご関係なんです?」


ソーラは目を青白く光らせながら、ふとそう訊いた。


「さあね。研究仲間、腐れ縁の幼馴染、辺りかな。別に恋愛の情とかは無いけど、お互い家族もいないし、そろそろ身を落ち着けなきゃ...ってなったら2人で結婚とかするかな。」

「...ええ?」


あまりにもあっさりと出てきた「結婚」という言葉に、アールンは思わず声を上げた。


「いや...あんたらはそれで良いのか?」

「良いよ。変に束縛されるより、あいつもどうせ私より自分の研究だろうし、私も同じだし。同じモン同士くっついといたほうがいろんな方面に迷惑掛からなさそうだよね...ってよくあいつと話してた。まあ、あいつはその前に姉さんどうにかしなきゃだろうけど。」

「へえ...。」


そんな考え方もあるのか、とアールンは唸った。

今まで彼は結婚というものを「家」も含めた一大問題だと考えていたが、考えてみれば彼らは家族が少ないのだから、そのような「自由な」結婚の形も取り得るのだろう。


「その...つかぬことをお聞きしますが、子供、とかは...?」

「いや〜、厳しいと思う。そもそも同じ屋根の下で寝ることすら少ないからさ。育児にしたって私が自分でやる余裕も、人に任せられる程の余裕もないだろうしね。」

「それは...大変だな。」


なんとも寂しい話だが、仕方のないことなのだろう。

アールンは、入口の幕から差し込む光を見た。ここは南向きなので、まっすぐ差し込んでくるということはそろそろ昼なのだろう。


「まあ、身の上の詮索は程々に、そろそろ昼飯の時間じゃないか?」

「あ、そうですね。ティナさんはどうするんです?」

「私...特に決めてないな。市街地で何とかしようと思ってたけど。」


その言葉を聞き、ソーラはぱっと明るい顔になってこう提案した。


「じゃあ!折角ですから私達と一緒にお昼食べに行きません?」


先話でティナがちょろっと言ってた「霊気抽出器を最大出力にしてぶっ刺して殺す」って、結構エグ目の脅しだっんです。

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