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『辺境伯一家の領地繁栄記』第二章:スキル育成記~最強双子、成長中~  作者: 鈴白理人
今日もアクアオッジ家は平和です

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㉓なにかの声





「ヴィアスソライル、アクアオッジ家タウン・ハウスのドラゴン留まりまで頼むよ」

 アンドリュー第三王子の言葉に、蒼竜が頷いた。

 美しい蒼い鱗が、王宮のドラゴン留まりに置かれたかがり火でうっすらと光を反射している。

「承知。だがそこには、もうあの双子はおらぬのだろう?」

「別件でね。いてくれたら良かったんだが……」


 ドラゴンは翼の力に加えて魔力で飛ぶ。

 ふわり、と浮き上がったあと、ぶわっと魔力の風が渦を巻いて上昇する。

 ばさり、と翼が大きく広げられたかと思うと、あっという間に飛び立った。


 王宮からアンドリューは、蒼竜ヴィアスソライルに単騎で跨り、アクアオッジ家のタウン・ハウスに向かった。

 さすがにまだ王太子を一緒に乗せるように頼むことはできない。自分が第三王子だからこそある程度の自由が許されている自覚はあった。

 王太子と小隊は騎馬ですでにタウン・ハウスに向かっており、合流する手筈になっている。


 アクアオッジ家の末っ子ウィルフレッドとメリルは、女神教会や魔術協会からの質問攻めがようやく終わり、領地に帰っていた。

 辺境伯夫妻は王都に残っているので、双子はタウン・ハウス全焼後の異変について、何も知らされていないのだろう。

(知ったところで対処のしようもないからだろうが……)


 もっとも、双子がタウン・ハウスの件がまだ収束していないと知れば、確実に首を突っ込み、かき回し破壊して回りかねない。


 容易に想像出来るアンドリューは、ふっとメリルを思い出し、自然と口角が上がった。

 どのような混沌になるのやら──想像より遥かに大事になるので、自分の予想は当てにならない。

 ……が、そこがまた退屈しなくて愉快なのだが。

 次に会えるのは、学園の入学式だろうか──その前に一度くらい会いたいものだが……この前の茶会の失態を挽回したい王子は思い悩んだ。

(ツナマヨサンドイッチ……)



 そんなことを考えてるうちに到着すると、ヴィアスソライルがアクアオッジ家のきゅう舎員に鞍を外されながら、話しかけてくる。


「アンドリューおかしな気配がある。気を付けて行け」

「ああ。分かった」


 いつもより抽象的な物言いの蒼竜に違和感を覚えながら、王子は答えた。

 

 別館の正面玄関に向かうと、延焼を免れた別館にある来客用の応接間に通される。

 ここで王太子率いる小隊と合流する予定だった。

 

 辺境伯夫妻は夜会に参加していて、別館にはいない。

 故意に人払いが行われているような気がして、アンドリューは落ち着かなかった。

(聖女が総撤退させよ、と言っていたのだったな……何かが起こる予感しかしない)



 深夜になろうという時刻なので、食べ物は置かれていなかったが、氷とはちみつの入った果実水が置かれていてそれを飲んでいると、微かに声が聞こえたような気がした……



(……声?)



(本館のほうから声が? 別館のこの部屋で合流する予定ではなかったか? 予定が変更になったのだろうか……)


 誘われるように応接間の扉を開け、人気の無い廊下を歩いて外に出る。


 月明かりだけを頼りにした薄暗がりの中、アンドリューの身長をはるかに超える、隙間なく組まれた木塀が全焼したタウン・ハウスをぐるりと囲んでいた。中の様子はまるでうかがえない。


 入れる場所がどこかにあるはず──


 そう思いながら塀の周りを歩き出してしばらく進むと、扉を発見した。


 挿絵(By みてみん)


 ……おかしい。



 何故、扉が開いているのか……

 ほんの少し開いている扉の隙間から、うっすらと赤い光が漏れている──


 なぜ、中から光が……?


 

 そして──

 今度こそ、確かに声が聞こえてきた──



 ……入っちゃだめだ……


 理性は確かに入ることを躊躇しているのに、中に入って何が起こっているのかを知りたい衝動が抑えきれない。


 自分の意思とは明らかに違う衝動を堪え切れないまま、アンドリュー第三王子は扉に手を伸ばした──





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