第2話 魔術パレードで出会った運命の人
私は全ての荷物を置いて彼との思い出を引きずらないため、伯爵家を後にした。
やがて、私は国の戸籍管理所へ離婚申請書を申請した。
これで彼へ離婚請求書が届き、彼が署名すれば離婚成立となる。
おとなしく離婚を受け入れるとは思わなかったので、私は一つ策を講じた。
「エミリア、無事に済んだわよ」
「ありがとうございます、伯母様」
事情を全て聞いた伯母様が国の戸籍管理所の相談部署に掛け合ってくださり、夫から妻への不適切な言動や妻の自尊心を傷つけた行為を理由に強制的に離婚が成立した。
伯母様は私にお茶を出してくれると、優しく問いかける。
「よかったら、しばらくうちにいなさい」
「でも、それは伯母様のご迷惑に……」
「いいのよ。うちは子どもももう大きくなったし、ほら、ちょうど話し相手が欲しいと思ってたのよ!!」
「伯母様……」
「じゃあ、息抜きに週末マーケットにでもいかない?」
「マーケット?」
王都からは離れた領地にいた私は、マーケットの存在は知っていたものの、行ったことはなかった。
「実は、三年ぶりに魔術パレードがあるらしいのよ」
「魔術パレードですか!?」
この国では魔術を使える人は非常に少なく、魔術師というだけで憧れを抱かれる存在だ。
王宮では国王直属部署「王宮魔術師団」が存在し、人々の平和を守ってくれている。
そんな王宮魔術師団が魔術を使ったパレード、演出でみんなを楽しませるのが、魔術パレード。
昔、一度伯母様に連れられて見に行った魔術パレードは忘れられない。
炎の迫力ある演舞に、霧を使った虹の演出、そして最後の氷の結晶舞うキラキラの美しさは幼い私を魅了した。
「伯母様、行きたい!」
「そう来なくっちゃ! じゃあ、ドレスも買いに行きましょう!!」
すごく楽しみ……。
今回はどんな魔術パレードなんだろう!
伯母様とドレスを見に行って準備を整え、私は週末を楽しみにした。
魔術パレードには多くの人だかりができていた。
「昔より、なんだか人がいっぱいですね!」
「そりゃそうよ! なんたってエルネスト様が来るんだもの!」
「エルネスト様……?」
「あら、やだ! 知らないの!? 今の魔術師団長様で見目麗しくてクールで、それに強くてしかも国民想い! ほら、あそこ!」
伯母様が指さす先にいたのは、エルネスト様だった。
その様相は確かに伯母様が興奮するのもわかる。
すごく見目麗しくて、それに氷の魔術が綺麗……。
彼の創り出す雪の結晶が私のもとへ降ってきて、それを手のひらに乗せてみる。
私はあまりの美しさに癒される。
そして、彼をもう一度見上げたその瞬間、彼と目が合った。
「あ……」
すると、彼はふっと笑いかけてくれる。
先程までクールに振る舞っていた彼と今の彼のギャップに悩殺されそうになった。
「伯母様……」
「なあに?」
「私、一気にエルネスト様の虜になってしまいました」
「あらまあ、ふふ」
その日から、私はエルネスト様のことを調べて彼を知っていく。
「そっか、魔術師団長だけどまだ23歳……え!? 私より年下!?」
パレードで見た彼の姿を思い出しても、とても23歳には見えない。
堂々とした振る舞いと色気漂う顔つきと流し目。
しなやかな動きと魔術の美しさは素晴らしすぎる。
「ああ……美しすぎる……」
エルネスト様は離縁で心が疲弊していた私に、癒しと生きがいをくれた。
私は完全に彼の虜になってしまっていたのだ──。
そんな時、戸籍管理所へ行く用事があり王宮へ向かった。
一部申請書に不備があったので、書き直しに来てほしいとのことだった。
「えっと……確か、ここを右に曲がったとこに……」
すると、そこには私が虜になってしまったエルネスト様の姿があった。