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生徒vs教師 華麗な戦いシリーズ

ミニスカート戦争 ~生徒会長の華麗な抵抗~

作者: SHAKE


■完全無欠な生徒会長・みな美(実はギャル)


 みな美は女子高に通う3年生。

 ソフトボール部のキャプテンで生徒会長。

 成績は常に学年トップ。

 かわいすぎるとネットでも評判。

 オフの日に歩いていたらナンパはもちろん、必ず芸能事務所からスカウトされる。

 女子高のモテるランキングではいつもトップ。教師に対しての評価も高い。

 スキルの超高い女子高生。アニメのヒロインのような存在。


 たったひとつ意外な面といえば、彼女がゴリゴリのギャルだということぐらいだろうか。しかもアニメオタク。そんな一面を持つのもまた、彼女の魅力。


■みな美の朝


 ある日の月曜日。

 みな美の朝はシャワーから始まる。

 髪を洗って軽く乾かし、ヘアアイロンで巻く、

 巻く、巻く。さらに巻く、巻く、巻く。

 細かく巻いてトップはボリュームをきかせる。

 1時間ほどかけてセットする。


 次はネイル。

 彼女のネイルのレパートリーは実に数千種類に及ぶ。

 いまハマっているスマホのソシャゲで昨日ガチャが更新された。

 育成シミュレーション。アイドルを育てるやつ。

 更新されたカードは一番大好きなヒロインの最上級URランクだった。

 出現率0.02%。高校生の課金力じゃちょっと無理。

 でも画像はプレビュー画面に出ているから、それを真似てネイルに描いた。

 明日のネイルはこれにしようと昨日から決めていた。

 みな美は絵心もある。

 めちゃくちゃ似ていた。

 なんなら実物よりも、みな美の描いたキャラのほうがかわいいまである。


 次はカラコン選び。

 先生のチェックにひっかからないよう目立たない薄いブラウンにした。

 柄はハート。目の真ん中にハートが入るのだ。常に目にハート。すげえ。アニメみてえじゃん。

 さすがアニオタギャル。


 次は制服。

 学校じゃ冒険できないから、せいぜいスカートを短くするぐらい。

 まあそれぐらいでガマンするしかない。

 みな美は生徒会長でキャプテン。みんなの手本になることも期待されている。仕方ない。

 といっても校則は膝下3センチ。これはさすがにないわ。

 それでもさすがに膝上15センチでは足が長く見えないしカワいく見えない。

 ギリギリ責めて17センチかな。

 いややっぱり17.5センチ。

 この5ミリが大きいのよね。


 ここで起床から3時間が経過。いよいよ学校に向け、みな美、出陣。


■風紀チェック


 月曜日は風紀委員&生徒指導担当教師の風紀チェックがある。

 髪の長さ、カラー&パーマの有無、ネイル、スカートの長さ、ブランド品の持ち込みの有無などの検査だ。

 校則違反は罪ではない。マナーの範囲というのが学校側の見解だ。

 規律を守ることが美しいし、派手な風潮は風紀を乱す原因となる。

 トラブルのもとはできるだけ断っておきたい、それが超進学校に課せられた使命であるかのよう。

 それが生徒側に向けられた規律のマナー。


 しかし真実は違った。

 全て自由にすると貧富の差が出てしまう。

 学力以外はなるべく平等を保ちたい、それが学校の方針なのだ。

 超進学校とはいえ家庭の貧富はバラバラだが、学校側は学力のみで評価したい。

 学力と家柄の2つを条件にしてしまうと真の天才を取りこぼすことになるかもしれない。

 学力第一、家柄は二の次というのがこの超進学校の方針なのだ。


 この日みな美は1年生の風紀委員に珍しく声をかけられた。

 みな美は生徒会長で成績トップ、一番人気なので風紀チェックはいつもスルーだった。

 また風紀委員にも例外なくファンは多い。


「会長、おはようございます。すみません。お知らせがあって…」

「おはよう、かわいい1年生! ん? 何かな?」

「実はある情報を仕入れました。今週の職員会議で風紀に関する話し合いがなされるそうです。そこで新しくスカート丈について校則に変更があるようなのです」

「そうなんだ。「短くするな!」って言われるのかしらね。でもまた「ごめんね!」ってかわいく謝れば許してくれるわよ、先生方は」

「はい、会長は成績もトップだしいつもなら優遇されると思うのですが、今回はPTAからの相談もあって、かなり厳しくなるようなのです」

「え? 面倒くさ! マジ? ヤだよねー」

「はい、ヤです!」

「そうなんだ。…まあ、なるようになるわよ。教えてくれてありがとね」

「いえ、こちらこそ話してくださって光栄です!」


■風紀委員会からのお知らせ


 その週の金曜日に「風紀委員会からのお知らせ」なる書類が全校生徒に配られた。

 昨日の木曜日、風紀委員からの情報通り職員会議でスカート丈に関する話し合いが行われたようだ。

 お知らせの内容は、「スカート丈の制限」だった。


 おおまかな内容はこうだった――。

 生徒は通学時に様々な人々とすれ違う。しかし、みんないい人ばかりではない。中にはいやらしい目で性的欲求を向ける者もいる。

 本校の生徒には通学途中に痴漢の被害に遭った者もたくさんいた。

 そういった加害者がいる以上、限度を超えた魅惑は彼女たちを危険にさらすことにもなりかねない。

 スカート丈は彼女たちを被害から守るために制限する必要がある、というのが会議で決まった内容だったらしい。


 結局、スカート丈は「ひざ上3センチまで」と厳しいものだった。ちなみに地域によってはひざ上15センチが一番かわいいとされているところもある(当社比)。


 お知らせを受け取って目を通したあと、みな美はつい「面倒くさ」と言ってしまった。なにより大人だけで勝手に決められたことが気に食わなかった。


「なんとか思い通りにならない方法を考えないとね」

みな美は負けず嫌いだった。


■幻のクレープ屋


 日曜日。

 みな美はクラスのみんながいま話題にしている「幻のクレープ」を食べるために街へ出かけた。

 どこがどう幻なのか、みな美は知らなかった。

 どれだけ幻なのかを確認したかった。

 確認するだけである。

 生徒会長としては確認しておかないと…とみな美は誰に言うともなくつぶやき続けていた。

 みな美は絶賛減量中だから糖分摂取制限中なのだ。


 ウワサのクレープ屋に到着。既に数十人の待ち人が列を作っていた。

 みな美は一番後ろに並んだ。

 列に並び、ふと目線を横に流した。そこには「コスプレ専門店」と書かれてあった。

 最近よくコスプレを題材にしたアニメを目にすることがあったみな美だが、自分がコスプレをするところまでは勇気がなかった。しかし興味はあった。


 みな美は1時間半以上並び、ついにクレープを買うことができた。

 一口食べて納得した。確かにこれは幻だ。おいしすぎる。

 減量中のことなど忘れて2つめを買いたくなった。

 みな美は自分でも気づかぬうちにまた列に並んでいた。

 並んだ場所はさっきと同じぐらいのところだった。「コスプレ専門店」の横である。

「2つめを食べたあとにちょっとのぞいてみようかな」。みな美のオタク魂がウズウズしたのである。


■無人の野を往くがごとく歩む、ミニスカートみな美


 次の日の月曜日。

 風紀チェックの担当は、学内で一番厳しい生活指導のタグチ先生だった。

 厳しいと言っても怖いわけではない。融通がきかない厳しさなのだ。

 案の定、定規を使ってミリ単位でスカート丈をチェックしていた。


 みな美はいつもどおり、正門の真ん中を堂々と歩く。それはもう、京の街を闊歩する新撰組・副長のごとく。


 周りから歓声が飛ぶ。

「会長! おはようございます」

「会長、今日もかわいい!」

「みな美会長、かわいい! …って、ええっ!?」

 ふと見ると、みな美はとんでもなく短いミニスカートだった。


「会長のスカートやばいよね」

「あれ風紀チェックどうなるんだろ?」


 みな美のスカートの短さに気づきだした生徒たちは、ヒソヒソと心配しだした。

 遠くからその様子を見たタグチ先生だったが、みな美のあまりのスカートの短さを見て、秒で飛んできた。

「なんだ、その長さは! …ん?」

 近くまで来たタグチ先生は、みな美のスカートを見て違和感を覚えた。


■新しい出会いが生んだ秘密


 スカートの裾から上20センチが透明の分厚いビニール製。

 パッと見ただけでは透明部分は見えないほど透過性は高い。

 ビニールがあるとわからないほどの透過性。

 しかし近くで見るとビニール製の部分は光を反射するのでただのミニスカートでないことがわかってしまう。丈は十分な長さがあるのに透明部分から太ももが見えているのである。

 布がないよりも、ビニール製の覆いがあって、そこが透けている。

 これはとんでもない魅力を醸し出している。

 硬派なタグチ先生でも顔を赤くするほどの強アイテムだった。


 このスカートが生まれたきっかけは、昨日の「幻のクレープ」との出会いに起因する。


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 あの幻のクレープ屋に並んでいるときに見かけたコスプレ専門店。

 目にするものが全て新しい。

 普段見かけないような色と形のウイッグ、ものすごい種類のカラコン、かわいい小道具…。

 陳列されている宝物の山の中で、みな美は衝撃的な出会いをした。


 縞模様のスカートである。

 あるアニメのコスプレのようだが、その縞模様が色の組み合わせではなく、布とビニールが交互に縫い付けられて縞模様に見えていたのだ。

 みな美はそのスカートを見て、「丈が短くないけど短く見えるミニスカート」を発案したのだった。


 みな美の透けたスカートを見た生徒たちは、

「会長のスカート、めちゃくちゃカワイイよ!」

「ほんとだ! あれいい!」

「コスプレみたい! 私も作ってネットにあげよっと」

 それはもう、大騒ぎ!


「いや、確かに丈は足りているけど、それは困るよ…。こんなものが口内で流行ったら大変だぞ」

 タグチ先生は絶句し、すぐ校長に報告。

 また今週、職員会議が行われることとなった。


 みな美は生徒会長としてこの会議に出席し、生徒代表としての意見を述べることとなった。

「先生方。規則を変更するときは一方的に押し付けるのではなく、これからは生徒にも相談してくださいね」


 みな美は今日も幻のクレープ屋に足を運ぶことにした。減量中のことなど忘れて。


結果:生徒の勝ち


生徒vs教師 華麗な戦いシリーズ 成績 1-0

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