声だけが届く場所で
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
かつて、彼女の声は“世界の真ん中”だった。
毎週金曜の夜八時になると、無数の家庭にその声が降り注ぎ、人々は胸に手を当てて聴いた。
彼女の名前はノラ・スカイ。
その声は、雨音のようにやさしくて、星のざわめきのように遠かった。
誰もがラジオをつけ、顔も知らぬ彼女に恋をした。
「今夜も、あなたの声が届きますように」
彼女がそう言うたびに、街は一瞬だけ静まり返った。
けれど、ある日テレビが来た。
音だけでは足りない、と誰かが言った。
人々は声ではなく顔を見たがった。
画面は笑顔を、涙を、嘘を、全て映した。
ノラの声は、映像には合わなかった。
彼女の顔を見た者は言った。
「こんな顔だったのか」
「声のほうがきれいだったな」
声はその日から、意味を失っていった。
そして、ノラはラジオを降りた。
それから彼女は、放送塔の中に住むようになった。
もう誰も聴いていない塔の、最上階。
古い真空管だけが、かすかに赤く光っていた。
彼女は今でも、誰に向けるでもなくマイクに向かって話している。
「今夜も……聞こえていますか……?」
放送されていない。
誰も受信していない。
でも、確かにそこには“声”があった。
ある夜、少年が偶然その塔を見つけた。
スマホを失くしたからだ。
彼は塔に入り、最上階でノラと出会う。
「だれ……?」
「……きこえたんだ。あなたの声」
ノラは目を見開いた。
けれど、口を開くことはなかった。
すでに、彼女の声は“過去の電波”に閉じ込められていたからだ。
彼女の口が動くたび、ラジオの残響が耳に触れる。
本当の声ではない。録音でもない。
それは時代の隙間にひっそりと残された“記憶の声”だった。
少年はそっと、ポケットからラジオを取り出した。
古い祖父の形見。埃だらけの受信機。
スイッチを入れると、ふいに空気が震えた。
――カチッ
――ザザ……
「こんばんは、ノラ・スカイです」
塔が泣いたように、風が吹いた。
彼女の姿はもうなかった。
だが、少年の胸の中に、確かに何かが灯っていた。
翌朝、塔の最上階にあったマイクは壊れていた。
けれど、誰かがそっと書き残していた文字があった。
「映像が私を殺したけど、声は、まだ生きてる」