線のむこうに、夢があった
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
わしは、ドラフター。
製図板に、スライダーと定規がついた、ごつい機械じゃ。
パソコン? CAD? 知らん。
わしの時代は、鉛筆と三角スケールで勝負しとったんじゃ。
最初にわしが運び込まれたのは、昭和50年。
都内の小さな建築設計事務所の一角。
まだ若かったあの男――設計士のタカシが、
「うおおお! これが噂のドラフターか!」と叫んで、
目を輝かせながら、わしを撫でたのを今でも覚えとる。
タカシは、まっすぐで不器用な男じゃった。
図面を描くときは、いつも顔をしかめて、
手が真っ黒になるまで鉛筆を走らせとった。
「この梁が曲がっとる!」「コンマ5ミリの誤差が気になる!」
定規を当て直して、何度も消しては引いて、また消して――
わしの面は、毎日傷だらけじゃ。
けどな、その一本一本の線には、確かに“夢”が詰まっとった。
真夜中の設計室。
照明は一つだけ点いて、机の上にはカップラーメンと缶コーヒー。
タカシは、わしにかじりついて、目を血走らせておった。
「この一枚で、未来が変わるんだよ……」
そんな言葉をつぶやきながら、わしの定規をスライドさせる。
カリカリ……カリカリ……
鉛筆の音だけが、夜の静寂に響いとった。
わしは、ただ黙って、線を引くためにそこにいた。
それがわしの誇りであり、生きる意味じゃった。
けどな、時代は変わる。
平成になり、パソコンが入り、
「CAD」という得体の知れん箱が持ち込まれた。
マウス? レイヤー? クリックで線が引ける?
わしには、意味がわからんかった。
「ドラフターはもう時代遅れだよ」
そんな声が聞こえたのは、一度や二度じゃなかった。
タカシも、最初は抵抗しとった。
「手で描かないと、感覚が狂う!」なんて怒鳴ってた。
でもな、人は便利に慣れる生き物じゃ。
やがて、わしは部屋の隅に追いやられ、
埃をかぶるようになった。
あれから、何年経ったろうか。
ある日、年老いたタカシが、
物置部屋の片隅で、わしのカバーを外して、そっと撫でたんじゃ。
「……まだ、ここにいたんだな」
手はしわくちゃで、動きもぎこちない。
けれど、あの頃と同じ目で、わしを見つめとった。
そして、引き出しから鉛筆を取り出し、
わしの上に、一本の線を引いた。
カリッ……カリカリ……
ああ、この音じゃ。
わしの魂が、また目を覚ましたようじゃった。
今の若いもんは、線を“クリック”で引くという。
それはそれで、立派なやり方じゃろう。
けどな、わしは――
汗と、鉛筆の粉と、夜中の夢と一緒にあった“あの線”のことを、ずっと覚えとる。
わしの上で引かれた線には、
人の手のぬくもりと、願いが確かに宿っとった。
それがわしの全てじゃ。
もう出番はないかもしれんが、それでも誇りはある。
わしは、ドラフター。
時代に取り残された道具じゃが、
あの夜の、あの夢の、正確な一本線――
それを一緒に引いたことを、誇りに思うとる。