三分間のとなりで
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
俺は、インスタントラーメン。
お湯を注がれて三分。
ただの乾いた麺が、あったかい食事になる。
それが、俺の仕事だ。
最初にあいつと出会ったのは、あいつが高校生になったばかりの春。
「腹減ったな……」と、コンビニの袋から取り出された俺。
ポットの湯を注ぎ、机の上で待つ三分間――
その間に、あいつは制服のボタンを外し、マンガを開いた。
俺は、その風景を、ずっと見てきた。
大学受験の夜は、インクのにおいと眠気の中。
「あと一問だけ……」とつぶやいて、
俺の湯気に顔を近づけるあいつの目は、真剣だった。
結果発表の帰り道。
駅前のベンチで、缶コーヒー片手に俺をすすりながら、
「……なんか、人生ってこんなもんかもな」と笑った。
それでもあいつは、大学に通い、バイトをして、
時には風邪で寝込みながらも、
俺を食べることで、一日を“なんとか越える”勇気をもらっていた。
恋をした。
失恋もした。
俺のとなりで、電話の声が震えた夜もあった。
「ごめんな……」
「いや、ありがとうな」
そんな言葉を誰かに言ったあと、
あいつは静かに、俺のスープを飲み干した。
俺にはなにもできない。
ただ三分で、あたたかくなるだけだ。
でもそのたび、あいつは、ほんの少しだけ前を向いてくれた。
社会人になってから、俺との距離は少しずつ減っていった。
コンビニ飯、外食、オシャレなパスタ。
けどな、忙しい深夜、冷蔵庫が空っぽの金曜の夜――
やっぱり、あいつは俺を取り出す。
「お前だけは、いつも変わんねぇな」
あいつはそう言って笑う。
お湯を注ぎ、三分間。
その間にシャツのボタンを外し、ネクタイを投げて、
深く息をつく。
俺は、そういう三分間の**“間”**に寄り添うためにここにいる。
月日が経って、あいつは結婚した。
食卓には味噌汁が並び、俺の出番は減った。
けれど、深夜の作業の合間に――
子どもが寝静まったあとに――
あいつはこっそり、俺を取り出す。
「怒られるから内緒な」
それでもうれしそうに、俺にお湯を注ぐ顔は、
あの高校生のままだ。
そして、ある日。
あいつの息子が俺を見つけて言った。
「ねぇ、これっておいしいの?」
「うまいぞ。人生の味がする」
そう言って、あいつはまた三分待った。
初めての父と子の“深夜ラーメン”。
湯気の向こうで、ふたりの笑い声が重なる。
俺は、そのまま、鍋になっても構わない。
袋麺になっても、冷蔵庫の端でもいい。
この家の“間”にいられるなら、それだけで十分だ。
俺は、インスタントラーメン。
何千、何万の夜を支えてきた、たった三分のあたたかさ。
でも、誰かの人生には、
その三分が、ちゃんと残っていく。
湯気とともに、思い出になっていく。