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遅刻のワルツ

*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)

なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)

カチ、カチ、カチ……

秒針の音が、やけに遅く響いている気がした

目覚ましのベルが鳴った瞬間、彼は飛び起きた

「やばっ……また寝坊だ!!」

乱れた寝癖のまま、ネクタイを片手で結び、パンを口にくわえながら玄関を飛び出す

片方の靴ひもを結ぶ暇もなく、駅への坂道を全力で駆け下りる

いつもなら、ぎりぎりで飛び乗れるはずだった

しかしその朝、世界が“1拍ずれて”動き始めた

改札を抜けた瞬間、まるで古びたピアノのラグタイムが

見えない場所で演奏されているかのようだった

人々の足音は跳ねるように軽やかで、新聞をめくる音がリズムを刻む

ホームの階段を上る主婦のステップは、まるでピアノの左手の伴奏のように均等でゆったり

会社員も学生も、誰一人として急いでいない

「なんだ……これ……?」

彼だけが、ひとり息を切らして駆け抜ける

なのに、周囲の空気はまるで別のテンポで進んでいた

自分の鼓動が無駄に早回しになっているような、妙な浮遊感

ふと隣に立っていた老紳士が、懐中時計をゆっくりと開き、柔らかく笑った

「お若いの。電車は逃げても、時間は逃げはしないよ」

彼は思わず立ち止まり、その言葉の意味を考える間もなく、ホームに発車ベルが鳴り響いた


彼は再び走り出す。全力で、汗を飛ばしながら

だが、電車はまるで見透かしたかのように、扉を静かに閉じ、滑るようにホームを離れていった

膝に手をつき、肩を上下させ、息を荒げる彼

そのときだった

ホームの片隅から、ぽろん……と、軽やかなピアノの音が響いた

一拍遅れて、また一音

それはやがて跳ねるようなリズムを刻み始め、あたりの空気を揺らした

ストリートピアノに腰掛けた青年が、ラグタイムを弾き始めていた

その音は、まるで時計の針がふと立ち止まり、踊りだしたかのようだった

スーツ姿の女性が自然と足を揺らし、通りかかった子供が手を叩きはじめる

通勤途中のサラリーマンまで、鞄を片手にステップを踏んでいた

彼も知らぬ間に、そのリズムに足を取られていた

走っていたはずの足が、ゆっくりと拍を刻み始める

いつも“時間に追われる”だけだった身体が、初めて“時間と一緒に踊る”ような感覚に包まれた


次の電車が来るまで、ほんの数分

けれどその時間は、いつもよりずっと長く、豊かに感じられた

ホームの天井に響くラグタイムの音は、まるで彼に「ここにいろ」と語りかけているようだった

ふと顔を上げると、秋の空が広がっていた

さっきまで息苦しかった朝の空気が、少し澄んで感じられる

「……まぁ、いっか」

彼は小さく笑い、ベンチに腰を下ろした

慌てる足音はもうどこにもない

遅刻は相変わらずだが、なぜか今日は気にならなかった

ピアノの音は、やがて朝のざわめきに溶けて消えていった

けれど、彼の心の中ではまだ、跳ねるようなリズムが続いていた

──遅刻のワルツは、ほんの少し“時間のズレ”が教えてくれた

人生の余白だった


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