白い粒の値段
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
その町では、昔から「白い粒」が食卓の主だった。
炊けば湯気が立ち、家族が笑い、日々の疲れを癒す。
老いも若きも、貧富の差なくその粒を求めた。
だからこそ、「白い粒」は町の命のような存在だった。
けれどある年、粒の値段がじわりと上がりはじめた。
初めは誰も気にしなかった。「天候のせいだ」「一時的だろう」と。
だが、町の倉庫にはまだ粒が積まれていた。
粒を管理する人々は、首を横に振って言った。
「市場に出せば損をする。今は出せん」
「来月になれば、もっと高く売れる」
白い粒は、町にあるのに、町から消えた。
ある夕暮れ、港に近い路地で、ひとりの少女が泣いていた。
「おかあさんが、お粥しかないって……でも、お粥ももうないの……」
彼女の声に耳を傾けたのは、魚を売る市場の女たちだった。
海で働く家族を持ち、自分たちの手で暮らしを支えてきた、強い女たち。
「……おかしいじゃないか。あんなに粒があるのに」
女たちは黙って立ち上がった。
手にしたのは旗でも武器でもなく、ざると声だった。
「町の粒は、町の腹に入るべきだ!」
「誰かが止めねば、子どもが泣き続ける!」
女たちの声は、風に乗って広がった。
翌朝、粒の倉庫の前に人が集まりはじめた。
「子どもに食べさせたい」「祖母に粥を」「働く人の弁当を」
誰かが叫んだわけでもない。けれど、誰も引かなかった。
やがて倉庫の管理人が出てきて言った。
「……粒を出すには許可がいる。わたしには決められない」
その言葉が火種になった。
「じゃあ、誰が決める? この町の命を、遠くの誰かが?」
それから、町はざわついた。
粒を守る者たちは柵を立て、報せを遮り、目を逸らした。
言葉を封じるための札が張られ、紙が焼かれ、声が消された。
けれど、ざるを掲げた女たちの姿は消えなかった。
彼女たちは言った。
「この粒が、町を養い、育ててきた。
だったら、わたしたちにも守る権利があるだろう?」
数日後、町に届いたのは、遠くの城からの声だった。
「管理が行き届かぬ者が騒ぎを起こしている。鎮めよ」
だが、人々はもう知っていた。
“静けさ”が“平和”とは限らないことを。
そして、粒の倉庫の鍵は、ついに開かれた。
誰かが投げつけた石ではない。
怒りが燃え上がったからでもない。
それは、無数の小さな声が、ひとつの意志となったときに、
自然と、音もなく──開かれたのだった。
それから町では、粒の売り方が少しずつ見直された。
全てが変わったわけではない。
けれど、あの日ざるを掲げた女たちの姿は、
子どもたちの記憶に確かに刻まれた。
白い粒は今も湯気を立て、
どこかの食卓に笑顔を運んでいる。
そしてときおり、誰かが思い出す。
──あの日、声をあげたのは、誰でもない。
この町を愛する、ごく普通の人々だったことを。




