オレの名は、ビリヤード──撞球の夜明け
*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)
なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)
チィン……
キューがボールに当たる音は、いつだって静かな銃声みてぇなもんさ。
オレの名は、ビリヤード。
長ぇこと、夜の街に息をひそめて生きてきた。
生まれは、16世紀のフランス。
王侯貴族が芝生の上で球を転がしてた遊びが、
やがて室内に持ち込まれ、テーブルに、グリーンのクロスに、キューとボール──
今のオレになった。
「優雅な遊戯」? ハッ、寝言言っちゃいけねぇ。
オレはどんな時代も、どんな場所でも、孤独な奴らの傍にいたんだよ。
アメリカじゃ、バーの片隅で、
バーボン片手に泣いてた負け犬の隣に。
イギリスじゃ、紅茶とため息まじりの紳士たちが、
沈黙の中でキューを交わしてた。
──そして、日本。
明治の終わり、オレは海を渡ってこの国に来た。
銀座、浅草、横浜。
軍服の男たちが、洋装の若者が、
「これが文明の匂いだ」っつってオレを囲んだ。
だがな、
時代はやがて、オレに“夜の匂い”を塗りたくった。
ネオン、煙草、ジャズ、ウィスキー。
金と女と、黙って勝負する背中──
“風俗営業法”って名の鎖が、
オレの首にゆっくり、静かに巻きついていった。
「不健全な遊び」──
それが、世間のオレへの見方だった。
けどよ、そんなオレに、光をくれた男がいた。
名前は──眞鍋儀十。
衆議院議員にして、オレを「スポーツ」として世に押し上げようとした、
頑固で、一本筋の通ったおっさんさ。
オレを信じてくれた。
誰もが口をつぐんだ中で、
「撞球は純正なるスポーツだ」と堂々と言いやがった。
そして──
1955年7月20日。
国会でついに、ビリヤード場が“風俗営業”の対象外になった。
あの瞬間、
オレの背中に刺さってたナイフが、
スッと抜けた気がしたぜ。
「撞球純正スポーツの父」──
人はそう呼んだ。
ああ、オレにとっちゃ、“義理と筋を通した親父”みたいなもんだったよ。
なあ、聞いてるかい?
眞鍋のオヤジ。
あんたがくれたこの自由、
オレは今でも、大事に転がしてるぜ。
今じゃ、キューを握るのはガキも女も年寄りも。
明るい街の明るい店で、
笑って一球、勝負してんだ。
だけど忘れんな。
オレの芯には、いまだに夜の静寂と、
あの“勝負の匂い”が眠ってんだぜ。
的玉は未来。
手玉は意志。
キューは信念。
そして──沈めなきゃならねぇ運命は、今もテーブルの上で転がってる。
さあ──
キューを構えな。
人生の“玉”は、まだポケットに沈んじゃいねぇ。
オレの名は、ビリヤード。
ギラついた過去と、静かな誇りを胸に、
今日もまた、誰かの魂を乗せた一球を、
静かに受け止めてる。
──チィン……




