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夏の麦茶は香ばしい

*この物語は作者が趣味で、適当に書いてるメモと朝一番の(強制)ラジオ体操中におもいついた内容と妄想を書き溜めたモノをス〇ゼロを飲みながら書いた”短編作品”です。支離滅裂・シナリオ崩壊等の描写がございますが、それでも見たい方は… 好きな飲み物(アルコール的な物は大歓迎)とすきな煙(火をつけるものならナカーマ)を嗅ぎながら…生暖かい目で見てください(小並感)

なお…極力R指定的な作品は掲載しないようにするのでぇ~よろしくお願いします(小並感)

ボクの名前は──麦茶。

 夏の定番、冷蔵庫の中の常連さん。

 沸かして、冷まして、冷やされて、それでやっと出番がくる。

 ジュースみたいに甘くはないし、

 スポーツドリンクみたいに機能的でもない。

 だけどボクは──「ただ、そこにある」ことで、誰かを潤す存在でいたいんだ。

 

 夏がくると、ボクの季節がはじまる。

 台所でやかんの中、グツグツと煮出されているとき、

 香ばしい匂いがふわりと部屋に広がる。

 子どもが「あ、麦茶のにおいだ!」って嬉しそうに言ってくれると、

 なんだか誇らしくなるんだ。

 “香ばしい”って、いい言葉だよね。

 

 ボクが一番好きなのは、縁側の風景。

 白いランニングシャツのおじいちゃんが団扇をぱたぱた仰ぎながら、

 氷の入ったコップに、きゅうっとボクを注ぐ。

 ガラスが汗をかいて、キラリと光る。

 「んー、うまいな。やっぱり夏はこれだな」

 そんなひと言が、ボクにとってのごちそうなんだ。

 

 ある夏の午後、ひとりの少年が帰ってきた。

 ランドセルを放り投げて、汗びっしょりのまま冷蔵庫を開ける。

 「……あった」

 彼は、背伸びしてポットからボクをコップに注いで、ぐいっと飲んだ。

 「ふーっ……これだよ、これ。ばあちゃんの味だ……」

 冷蔵庫の上には、まだ新しい仏壇の花。

 彼の目が、ちょっとだけ赤くなっていた。

 ボクは、ただの飲み物かもしれないけれど、

 誰かの思い出と一緒に、喉を通っていけることが、

 何より嬉しかった。

 

 でも、夏は長くない。

 秋が近づけば、冷たい飲み物は片づけられ、

 あったかいお茶たちの季節がくる。

 ボクは台所の棚の奥に戻され、

 やがてまた、次の夏まで眠ることになる。

 

 だけど──それで、いいんだ。

 ボクは、“また来年”の味。

 “また思い出す”味。

 きっと来年も、あの子が帰ってきたら、

 おばあちゃんを思い出して、冷蔵庫を開けてくれる。

 香ばしい香りとともに。

 

 ボクは麦茶。

 夏の縁側と、部活帰りの汗と、夕立のあとの空気と、

 そういうものぜんぶに似合う飲みものだ。

 夏の麦茶は、香ばしい。

 でもその香ばしさは、ちょっとだけ、切なくて、やさしいんだ。


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