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先ず持って

作者: みみずく

部屋の間取りは曖昧です。

部屋に物が多い。

安アパートの1Kなので尚更多く感じるのだった。

押し入れに上着や季節外の服などを押し込んでいるがそれにしてもこの量はと台所のフローリングに立ち礼子の頭を悩ませた。


玄関を入ってすぐ横にむき出しの靴ラックを置いてある。通販で買ったものだ。

その反対に台所、冷蔵庫は奮発して小型のレトロなピンク色のものを選んだ。

ゴミ箱は白の小さなペールをひとつ。


その後ろにコタツを置いてある。一応、シンプルなアイボリー色の布団を選んでいる。

その左に窓があり、下にカラーボックスに漫画や小説、ビジネス書など様々な本を並べていた。積みたくないが、入り切らないので床に置いたり重ねすぎてタワーにしていた。

酷い時には間接照明のスタンドライトをその上に置いていた。


右には押し入れがあり入り切らない服はハンガーラックに吊るしている。

地震が起きた時に危険なので捨てたいが無料で貰ったのでまあいいかと使っている。

奥にベランダの窓があり、その横に布団を敷いてある。


畳の部屋なのでベッドは買わなかった。

礼子の性格を表すように当然万年床と化していた。休みの日こそ天日干しをするが、そろそろ布団乾燥機でも誰かから貰おうかと思っている。


礼子が頻繁に開くアプリは某地元の情報掲示板であった。

貰うよりも無料であげることが多かった。

が、それと同時に物が減ったのに新たなものを仕入れるのだった。


せっかく昭和感満載でレトロな安アパートに住んでるのだから、茶箪笥のみ置いてある質素な部屋にできないものかと妄想した。

茶殻を畳に撒いて箒ではいて……と良いなあと思うだけで時間は過ぎる。

しかし、ものに溢れたこの部屋ではと肩を落とした。

物欲にまみれた女、時川礼子のため息が部屋に舞う。


ところで、風呂とトイレは玄関から見て左側に一応別れて設置されている。

冷たいタイル張りなのが嫌でマットを敷いて、くつろげるように掃除用具は極力置かないようにしている。

と言っても礼子は専ら銭湯通いなので使うのはシャワーのみだった。


トイレは最新の洋式に変えてもらっている。

先代は古い洋式型だったが、水が流れなくなったのを機に交換してもらった。

ついでに風呂も改装してもらえば良かったと礼子は考える。


レトロな暮らしもしたいし、中古のマンションを買うのも夢である。

当然、近所にある『グランクリュ』とか『グランコート』などと壮大でラグジュアリーな名前のマンションなどは、礼子の給料では支払えないので除外されるのだが。


たまにネットで物件を調べて見積もりをシュミレーションして、まあいいかとページを閉じていた。


下手に収納を増やすのもなあと、ぐいぐいと肩を回してコートが大量にかかったハンガーラックを見つめる。

そもそも何故こんなにコートが多いんだ?と思うが、もはや答えは1つ。

物欲の果てだった。


仕事終わりに寄るショッピングタウン、休日に行くショッピングモール、ネットサイトからのセール通知、あらゆるところで礼子の物欲を刺激するものが転がっていた。


これはセールで安くて買ったやつ。

これはこの襟が可愛いから買ったやつ。

これはずっと探してた形のやつと同じだったから買ったやつ。

これは、これは、これは、これは……。


と、その物1つひとつに物語があるのであった。

それでも傍から見れば「身体はひとつだよ」と言いたくなるコートや上着の量であった。

服の量も半端ないのであるが。


心機一転ここはひとつあまり着ないものを捨てるかと触るが。

なんだかんだ言って毎日代わる代わる着てるのである。

寒い日、寒くない日、お洒落したい日、動きやすく過ごしたい日などなど。


結局何もしないままコタツに入る。

手を伸ばして開けた本は


「今度こそ!片付けの魔法術!」


その今度こそを何度繰り返してきたか。

時川礼子の年末は毎年このような調子であった。

時川礼子シリーズお次はなんでしょう。

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