【1-2 新たな世界で】
今回多めになってます。読みにくいかと思いますが、
許して下さい。
「そこにいるのは誰だ!」
んーと、なんかものすごく不味い事態になっている気がする。どうしよう。
「えーっと……俺達のことですか?」
「それ以外に誰がいると?」
ごもっともな返答だね。どうしよう。
「お前達、名前と年齢、在籍している学校を教えろ。」
おぉっーと、まっずい。そんな風に俺が悩んでいると……
「えーと、私達15歳です!私はとなり!こいつはかいとで!あれ……?おかしいな。えと、それでそれで、私達!記憶を無くしてるみたいで!どこの学校に通っていたかとか、全く覚えてないんです!」
と、とな……すげえ!流石!かっこいい!助かったぁ……!
「なんだと?記憶を無くしているのか……そうだな、ならば、この学校で保護するとしよう。」
意外とあっさり納得してくれたね。助かった。
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「俺の名はアイザック・バートン。この国の軍で警備隊長をしている。そして、ここは『王立レマリア多岐育成学校』の敷地内だ。とりあえずは、お前達を校長と相談して寮に入れてもらえるか相談する。ついてこい。」
この人強面だけどめっちゃいい人じゃねえか!
それに、サクサク話を進めてくれている。『王立レマリア多岐育成学校』ってなんか響きめっちゃいいね。王立ってことはこの国は国王が治めているのだろうか。
俺達のことを助けてくれるみたいだし、ちゃんと挨拶をしないとな。
「アイザック隊長ですね。よろしくお願いします。」
「私達を保護しようとしてくれてありがとうございます!」
「ああ、このままではろくに生活もできんだろう。あのお人好し校長ならきっとお前達を保護してくれるはずだ。分かることが少なくて不安だろうが、少しは安心してくれ。」
やっぱりアイザック隊長は優しい人だね。大分心が落ち着いた感じがするよ。
そうして、俺たちは学校の寮に住ませてもらうべく、アイザック隊長と一緒にこの学校の校長を尋ねることになった。
* * *
俺達が出現した場所は校庭の一部で、他の所よりもちょっと高めの丘みたいな場所だったみたいだ。
歩いていて思ったけど、この学校めちゃくちゃ広い。校庭だけでいろんなエリアがあって、学校とは思えない規模だった。
そして、校舎のような建物が複数見えてきた。
「あそこに見えるのがレマリア学校の教育棟だ。今から校長室のある事務棟に向かう。」
「綺麗な学校だね〜」
「そうだね。大理石か何かでつくられてるのかな?」
教育棟は白く綺麗な建物で、掃除が行き届いている雰囲気がする。それと、校舎は3つの塔にわかれているみたいで、結構な大きさだった。
「さて、ここからが事務棟だ。すぐに校長室に着くからな。」
事務棟に入ると、なんだが威厳ある感じで、宮殿みたいな雰囲気の廊下が続いていた。階段を登って2階に着いてから少し歩くと、「校長室」と書かれた扉が見えた。
アイザック隊長がそこの前で止まり、ドアをノックした。
「失礼する。」
アイザック隊長に続いて校長室に入る。
「やあやあ、わしがこの学校、王立レマリア多岐育成学校の校長をやっている、リール・レライトじゃよ。老いぼれじゃが、よろしく頼むよ?」
どうやらこの優しげなおじいちゃんが校長らしい。顎に生やしたひげをふぉっふぉと言いながら触っている。ひげ気に入ってるんだね。
それから俺達は軽く自己紹介をした。
* * *
「さて、自己紹介も済んだところで、本題に入ろうかのお。バートン君から聞いたよ。わしとしては、是非ともこの学校の寮で生活してもらいたい。」
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」
「まだまだ君たちは若いしのお、この先の人生を無駄にするわけにはいけん。じゃが、この学校での規則はもちろん守ってもらうし、教育も受けてもらうこととするが、それでも良いかの?」
アイザック隊長の言っていたことと、見た目の通り、リール校長はお人好しで、すぐに俺達を受け入れてくれた。
「はい、勿論です!!是非、ここで学ばせて下さい!な?となもそう思うよな!」
「はい!頑張るので、ここで生活させて下さい!」
「元気でいいのお。わしも現役の頃に戻りたいものじゃ。あの頃は……」
「校長、現役時代の話は後でゆっくり聞くとして、この子達に学校やこの世界について教えてあげて欲しい」
「む?確かにそうじゃの。わしの現役バリバリの頃の武勇伝を語りたかったのじゃが、仕方ないのお」
ノータイムで話を遮られる校長がなんだか可哀想で笑いそうになった。
でもこの優しげなおじいちゃんの昔話いつかは聞いてみたいなあ……。
そして俺達は、校長から学校の説明を受けるのだった。
* * *
「まずはこの学校についてじゃの。この学校には魔法科、剣術科、国学専攻科、錬金術専攻科、理数科、政治科、生活科の7つの科があるのじゃが、その2つを選んで学ぶことができる。そして……」
「ちょ、ちょ…っと、ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「い、いま、魔法…と、剣術…って言いましたよね?」
「む?確かに言ったが、それがどうかしたのかの?」
「これってもしかして……」
「そ、そうだよね!!」
「「ここは、剣と魔法の世界!」」
まさか、俺がラノベを読んでずっと憧れていた剣と魔法の世界に来れたなんて!嬉しすぎて興奮を抑えられそうにない。
「おい、校長の話を遮ってまで当たり前のことを言うな。それとも、それすらも覚えていないのか?」
「えっと…はい。覚えてません。すみません。話を遮ってしまって……」
「バートン君。そうすぐに咎めるでないよ。わしも子供の頃は魔法と聞いて心躍らせたものじゃわい。じゃが、わし以外の先生は話を遮られることをよく思わないことがあるやもしれん。これからは気をつけるのじゃぞ?」
「はい、わかりました。気をつけます」
「それでよい。さて、それぞれの学科についてざっくり説明していこうかの。詳しい授業内容等は各学科の担当教師に教えてもらうといい」
「「よろしくお願いします!」」
丁度学科について気になっていたところだったしこの説明はありがたい。学校説明会みたいな感じがしてワクワクする。
「まずは君たちが最も興味を寄せている魔法科についてじゃ。魔法科はその名の通り、魔法を学ぶ。最初のうちは実用的な初級魔法から始まり、最終的には魔法検定三級を取ってもらうことになる。その中で戦闘魔法や治癒・補助魔法に秀でた生徒は軍で魔法をさらに深く学ぶことができるのじゃ。」
魔法検定三級ってなんか難しそうだな。でも俺はやっぱり上を目指したいから、軍で魔法を学べるように頑張ろう。
戦争は嫌だって思ったけど、俺が受けようと思ってる剣術科なんてまさに戦闘用だもんな。俺は魔法と剣術でこの国を守れるように頑張ることにしよう。いいね、うん。とてもかっこいい理由ができた。
「あの、魔法検定ってなんですか?」
気になってたけどスルーしてた魔法検定についてとなが聞いてくれた。確かに検定を取得するには内容をある程度知ることは大切だよな。
「魔法検定とは、魔法の知識、技能を国の魔法学会の方に審査してもらい、各級の魔法の使用を許可してもらうための、いわばテストじゃ」
「なるほど、テスト……ですか。ということは、学会に認められていないと使えない魔法があるってことですか?」
「その通りじゃ。特に戦闘用の攻撃魔法はそのほとんどが許可なく行使することを禁止されておる」
少なくとも軍に入隊して戦うには、検定で高い級に合格しないといけないってことか。
「他に質問はないかね?」
「特にはありません」
「ならば、次は剣術科についてじゃ。剣術科はその名の通り、剣術を学ぶ。その大部分が戦闘用の学科のため、受講した生徒のほとんどが軍にスカウトされることになるじゃろう」
軍に入りたい俺としてはかなり好条件だね。やっぱり剣と魔法の世界なんだから、剣が使えなかったら戦いにならないしね。武芸としても、身につけておきたい。
「剣術科についてはそれぐらいじゃの、理数科、政治科はそれぞれ、学者や国の政治を動かす政治科を目指す科となっておる。どちらにも試験があり、難易度はかなり高くなっておる」
まさに勉強って感じだね。軍に行かない多くの人がその二つの科に通うみたいだ。特に政治科なんてエリートって感じがしてすごい。
「そして生活科は料理人や使用人、主婦等を目指す生徒が受講する」
生活科は使用人としての礼儀作法や家事などその他諸々のことを徹底的に習うらしい。調理実習なんかが頻繁に行われるみたいで、出来の良かったものは学食に提供されたりもするようだ。
「最後に錬金術専攻じゃが、これは魔法の影響であまり人気がないのじゃ。錬金術自体は素晴らしい術なのじゃが、とまうしても若者には魔法が綺麗に映るからのお。
「ところで、錬金術っていうのは何をするんですか?」
「錬金術とは、簡単に言えば物質を創造する術じゃ。主に石や鉱物に触れ、その性質を変化させることにより、物質を創造しておるのじゃが、魔法と組み合わせることで何もないところから物質を作り出すことができるのじゃ」
凄い便利な術みたいだね。錬金術といえば、壁とか床に触れて剣を創造したり、壁をたてて防御したらするのが思い浮かぶ。
そうゆう風にできるようになったら大分生活が楽になるんだろうな。
「てことは、お金も作れるんですか!?」
「ふぉっふぉ、作れるには作れるが使うことはできないのじゃ。この国貨幣は精巧に作られていて、違いがばれてしまうのじゃよ」
「そっかぁ〜……」
なんか軽く犯罪起こそうとしてるんだけど?好奇心旺盛なのはいいが、犯罪には手を出して欲しくないものである。
* * *
「一通り説明が終わったところで、君たちは何科を受講するか決たったかね?」
「俺、魔法科と剣術科を受講したいです!ずっと憧れてたので!」
「私は魔法科と錬金術専攻を受けたいと思ってます!」
となも魔法科を受けるみたいだね。一緒に頑張っていけそうで嬉しい。
「そうか、2人とも魔法科を受けてくれるのじゃのお。嬉しい限りじゃよ。わしも子供の頃は魔法に心惹かれて受講したものよ。」
校長は小さい頃、魔法と聞いて心を惹かれて踊ってたんだね。なんか繋げてみると面白いな。
「学校のことはこれからいくらでも知ることができるじゃろう。次は世界情勢について話そう。この世界は大きく分けて四つの国に分かれておるのじゃ。この国は大陸西部のウォルティリア王国という。東には大帝国が、北にスクルミア女皇国、南は武装革命連邦レグルス・アリアが位置しておる。我らがウォルティリア王国は、各国の存在を重要視し、均衡状態を保とうとしておるのじゃが、東の帝国は大陸を統一し、平和な未来を築こうと動いていて、南は領土的野心、北は女皇の威厳を示すための侵攻により、各国の間で戦争が度々勃発しておるのじゃ」
一気に沢山の情報が流れてきたから一回整理しよう。
西は戦争反対!で安全に各国間の繋がりを保ちたいけど、南北が暴れてるってことかな。東は優しそうだけど、「統一」をしようとしてるから、戦争はやむなしって感じなんだろうなあ。それにしても、北の女皇国は女皇の威厳を示すためだけに戦争をしているのかな。そうだとしたら大分物騒な国だね。
「ちなみに、南の連邦が1番危険だから覚えておくといい。獅子を神として祀り、領土を広げるべく戦争を続けていた武装国レグルスと巫女アリアを信仰している革命国アリアが併合した国家だ。獅子を祀る民は『気闘法』と呼ばれる術を使い、高い攻撃能力を有した物理戦闘を得意としている。特にその長であるゼド・リューティスは危険だ。長であるのに関わらず、自分――から前線で戦うような武闘派野郎で、その上実力はトップクラスとかいう異端児だ。」
ゼド・リューティス……そんなバケモノがいるのか。絶対に会いたくないな。それに、「気闘法」ってのが気になるね。
どっちにしろ危険なんだから、戦争なんて絶対にしたくない。
「——本当はこんなことは言いたくないんだが、戦争が起きた場合、または戦争が予測される場合は学校の魔法や剣術に秀でている生徒がから出される場合がある。お前達もそうなる可能性があることをゆめゆめ忘れるな」
戦争に駆り出される——か。戦争なんてしたくないと思った途端にこれか……。
やっぱりフラグは立てるべきじゃないね。まあそんなことは置いといて、隊長の教えてくれたことをちゃんと覚えておこう。
「駆り出されると言っても、この学校はさほど多くない。そうだな、これも説明しよう。この国には3つの大きな学校がある。そのうちの一つがここだ。残るは、貴族学園ティルミリア、兵士育成学校ガルダッドだ。戦争で最も駆り出されるのはガルダッドだな。だが、この学校で強い魔法使いや剣術士はほぼ確定で駆り出される。量のガルダッド、質のレマリアといったところか」
ガルダッドの子達可哀想だな。けど、兵士育成学校なんだし、みんなゴツそう。屈強な兵士が量産されてそうだ。
ティルミリアは貴族学園って言うぐらいだし、お嬢様や王族達がきゃっきゃうふふしてお茶会とかするんだろうなあ。
「随分とかたい話になってしまったのう。長い間話を聞いて疲れたじゃろう。では、この学校を案内しよう」
今回は学校についてざっくり説明していきました。
次回からは本格的に学校生活が始まります。
お楽しみに