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件といっしょ

掲載日:2009/11/06

 ある懸賞に当選した。ほんの気まぐれでハガキを送ってみたのだ。当たる賞品は“牛”と書かれてあって、僕はそれを牛肉か何かだと思っていたのだけど、届けれられた賞品はそのまま牛一頭だった。

 もちろん、困った。牛なんて、一体どうしろというのだろう?

 仕方なしに、庭に繋いでおいた。ご近所から苦情が来ないかと心配したけど、翌朝、牛は死んでいた。ただし、代わりに子牛を生んで。しかも、普通の子牛じゃない。首から上がどう見ても人間のものだった。

 “件”だ。

 僕は当然、ビックリした。慌てて、懸賞の募集元を確認してみると、そこには卜占社と書かれてあった。

 件は未来を予言すると言われている妖怪だ。因みに、予言すると死んでしまうらしい。卜占社。なんとなく納得できる。

 件は何も予言するような兆候を見せはしなかった。とすると、生き続けるのだろう。飼ってやらなくちゃいけない。何を食べさせれば良いのか迷ったから、取り敢えず、牛乳を与えてみた。幸い良かったようで、美味しそうに飲み干してくれた。

 しばらくすると、件は徐々に僕に慣れていった。言葉も少しずつ覚え始めた。初めは不気味に思っていたけれど、懐かれると可愛くなってきた。このままでも良いかなんて思い始めたのだけど、それは世間が許さなかった。


 『恐怖の遺伝子操作!』


 ある時、そんな記事がネット上に出回った。何だろうと思っていると、どうやら僕の飼っている件の事らしかった。

 遺伝子操作だって?

 どうも今の世の中の人達は、件を件とは認識してくれないらしい。それで、僕がタブーを破って人間と牛の遺伝子を混ぜて、キメラを産み出したとされてしまったのだ。

 その内、ネットの話題を追いかけるようにしてテレビや新聞でも取り上げられ、僕の家に警察までやって来てしまった。

 件が生まれた経緯を話すと、誤解は解けたみたいで捕まらずに済んだけど、世間の方はそれでは納得しなかった。因みに、募集元の卜占社には全く連絡が通じなかった。僕はネット上だとか取材だとかで、遺伝子操作で誕生したキメラじゃなくて件なんだと繰り返し述べたのだけど、一向に騒ぎは治まる気配を見せない。僕は非難され続けた。

 そんなある日、件が言った。

 「みんなの前で、予言をしようか?」

 どうやら件は件なりに責任を感じているようで、困っている僕を見て、そう提案したみたいだった。件はその頃になると、言葉を喋れるようになっていたのだ。

 予言をしてそれから自分が死ねば、僕は非難されなくなる、どうも件はそう考えているらしかった。

 僕は件の頭を撫でると、それにこう返した。

 「そんな事を、君は心配しなくてもいいのだよ」

 件はそれでも申し訳なさそうな顔をしていて、

 「だって、ぼくは元々、その為に生まれたのだし」

 そんな事を言う。

 確かにその通りだ。件は、本来、不吉な未来を予言する為にある存在。でも、僕は敢えてそれにこう返してやった。

 「そんなの、どうでもいいさ」

 例え、件が予言をしなくても、これからの社会が不安に満ち満ちている事くらい簡単に分かる。財政難に環境問題、不景気と高齢化社会とエネルギー不足…

 インターネットの誕生で、個人の力が強くなったのに、その強くなった力を、こんなどうでもいい事に使い続けるのなら、多分、その未来を避ける事はできないのだろう。

 こんなに可愛い存在が、自らを犠牲にして警告を発しても、多分、きっと…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 先ほど読ませていただいた発明の話が解かり辛かったので、こちらも。 妖怪「件」を取り上げたのは良かったですが、それが生まれて少しマスコミに騒がれただけ。オチは件がむしゃむしゃと食べてしまった…
[良い点] 発想は良いな、と思いました。なさそうだけどありそうな気もしてすんなりと入り込めました。 [気になる点] これからの社会が不安に満ち満ちている事くらい簡単に分かる。財政難に環境問題、不景気と…
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