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メリークリスマス

作者: KaZuKiNa



 「愛してる、君のこと」


 そう囁く声がどこからか聞こえてきた。

 誰も振り返りなんてしない、街頭広告のセリフなんて。


 十二月二十四日、クリスマス。

 うっすらと積もる雪が、アスファルトに積もり、空は気持ち悪い曇天の様相だ。

 

 愛してる、なんて陳腐な言葉だろう。

 結局は愛よりもお金、綺麗事なんてなんの意味もないって世の増せた女達は誰だって分かっている。

 分かっている……でもだからこそステイタスを求めれば求めるほど、その日はなんて寂しいんだろう。


 買って帰る半額シールの付いたクリスマスケーキ、結局は毎年食べ残しちゃう。

 ファッションも気に留めず、安物のコートを纏って、自分に言い訳してウインドウショッピング。

 高い自分への貢物も、結局は言い訳だ。


 甘い言葉が、どこかで囁かれている。

 安いメロドラマが同情でも誘っているのか?

 ああ、恋人はサンタクロース、幻想の中で微笑みをおくれ。

 愛おしさとはなんなのか、すべてがインターネットを通じて共有されるこの現代。

 SNSはマストアイテム、誰も見ない呟きが、電子の暗闇に沈んでいく。


 あっと、間違えてタップされるスマホの広告。

 その苛立ちも、貴方だけの集合知。


 「愛してる、アナタのこと」


 くだらないと切り捨てるのは簡単だ。

 安っぽいメロドラマが時に感動を与えるかもしれないし、大作と聞いた映画が実はとんでもないクソ映画かも知れない。

 何もかもが知ろうと思えば知れるこの現代、音も聞こえず地球の裏側のことさえ知れる現代人。

 されど知ったかぶりも現代人弊害、ああ恋人はサンタクロース、誰かワタシを愛してくれ。


 三次元と二次元の境にある意識は、歪んだ視界になにを捉えたのか?

 ペルソナの仮面を被り、SNSに呟くメリークリスマス。


 本当は、誰もいいから愛してほしい。


 「愛してる、君のこと」

 「ええ、そうでしょう、僕もさ」


 ふと、声はあった。

 安っぽいメロドラマ、哀しくなるオーディエンス。

 ふっ、貴方の微笑はショーウインドウ、何てこのない広告の音。


 ああ、メリークリスマス。

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