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BARダークブルー  作者: 松 宏幸
7/12

儲ける人

「いらっしゃいませ。」BARダークブルー店主の沢北紺です。おかげさまでお店も順調です。


さて、今日のお客様は?

ん?ウチの店には珍しく大人っぽい客が入って来た。

大きなアタッシュケースを持って、ロングコートを着た、デキるサラリーマン風の、きちんと大人の人だ。


一人だが真ん中のテーブルにアタッシュケースを置いて座った。コートは前の席にさらっと置いた。

「いらっしゃいませ。」

店主はメニューの説明をして注文を待った。

大人の男はメニューを真剣に見ている。腕にはロレックスか何かの銀色の重そうな時計をはめている。

「ビール!」

大人の男が人差し指でメニュー指して注文した。

店主は「お待ちください。」と、用意にキッチンに戻った。最近は店主から伺い、説明して注文をとるスタイルが定番となった。


店主(ウチのビールは赤ビールってわかって注文したのか?単純に最初はビール!で注文したのか?)(ちょっと食とかに詳しそうな、こだわりそうな人に見える。)


「お待たせしました。」

赤ビールとピーナッツとおしぼりを、大人の男さんに運んだ。


大人の男「お、赤ビールだね。地ビール?」

と、やっぱり「オレ詳しいんだぞ」と言わんばかりの顔で店主を見る。


店主「はい。、そうです。山梨高原の赤ビールです。」

大人の男「珍しいね。こだわってるんだね?」

店主「まぁ。」

(ちょっと話しずらいなぁ)店主は、この手タイプの人は正直苦手だった。

イメージでは、食とか店を詳しく知っていて、不動産に詳しく、投資に詳しく、儲かる話しとか得する話しのネタを沢山持ってるような人。

きっと店員を「おにいさん!」と呼ぶような人だ。

「おにいさん!」

(ほら来た。やっぱりだ。)

「はい。」

大人の男「これ、ビールと、このピーナッツはお通しなの?セットに入ってるの?」

大人の男は、おでこに皺を寄せて聞いてきた。

店主「はい。スタートの1,000円にテーブルチャージとドリンクひとつとお通しがセットとなっております。」

大人の男「えー?これじゃ儲からないでしょ?」

店主「まぁ、大丈夫です。あまり儲けより自分の好きなものでやっているもので。」

大人の男「あ、そう。でもこれじゃ店つぶれちゃうんじゃない?もっと儲けなきゃ。」


店主は「すいません。」となぜ謝らなきゃならないんだ?と思いながら逃げるように、キッチンに戻った。

思った通りだ。読み取らなくても、当たってしまった。常に儲けや得を考えてる人ってなんかわかってしまう。会社勤めのときに、同じような人が沢山いたからわかってしまうのだ。

最初に入って来たときに、"大人の人”と言ったのは、オレにとっての大人の人とは、損なことはせず得すること、儲かることを熟知していて、それを得意に生きてる人。

反対に知らない人は子ども。よくこの系の先輩の人から「お前そんなの知らないの?」と子ども扱いされてた。(嫌だったなぁ。。)


勿論お金が増えることは嬉しいけど、何についても儲けるや得する話しばかりだと、嫌になる。

ましてオレは営業部に所属していたので、毎日儲けることばかり考えなくてはならなかったので、本当に嫌だった。きっと合わなかったんだろうな。

一度「儲けなくても、お客さんが喜んでくれたらいいじゃないですか!」とキレたら、

お前わかってないなと怒られた。


「おかわりくれる?」

大人の男さんがおかわりを注文に来た。

びっくりした。この大人の男さんの悪口を言ってたわけではないが、会社勤めの頃のあの先輩が出てきたようでビクッとしてしまった。


赤ビールを注ぎ、大人の男さんにお持ちする。


大人の男さんは、ウチの赤ビールが気に入ってくれたのか、グラスを斜めにビールの色を見てうなずいて、泡からゆっくりと喉に流し込んでいる。


結局、大人の男さんは、この赤ビールを3杯飲んで、「安いな。ここいいね!」とやけに気に入ってくれている様子だった。

最後に、勝手に名刺を差し出してきて、「また、よろしく!」と矢沢永吉?のように気取って帰って行った。






名刺を見ると、


------------------------------------------

マタニティウェア・赤ちゃん用品・ベビー・子供服

西本屋 浜町店

店長 吉野 守

Tel:03-○○○-3333

e-mail:xxxxxxxxx

------------------------------------------


ん??儲ける人じゃないか?





「いい土地あるよ。」とか誘ってくるような人かと思っていたが、


赤ちゃんのよだれ掛けを売ってる人だった。なんて、ちょっと笑ってしまった。


珍しく外れたな。でもなんだか嬉しかった。


実はいい人かも??



(勘違いしてすいません。また来てください。)

既に帰った大人の男さんに、気持ちを送った。




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