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BARダークブルー  作者: 松 宏幸
4/12

男と女の教訓

いらっしゃいませ。BARダークブルーの店主沢北 紺です。

ようやく当店も少しずつ周知されてきたのか、ぽつぽつお客さんが来てくれるようになりました。

さて、今日のお客さんは?

奥でマルボロメンソールを吸っていたら、

カランコロン。お客が入ってきた。

見ると、男女1組のカップルのお客だ。

「いらっしゃいませ。」

男性も女性も痩せ型で、二人ともモンブランのような髪の色をしている。女性はその上、髪はクルクルにカールし白いパンツスタイルがセレブチックにキメている。

男性は彼氏なのか、彼女を気にしているのがわかる。店内をキョロキョロ見回し、危険がないか確認してるボディガードのようだ。

そんなのを気にせず、女性は自ら椅子を引いてドンと座った。男性も、女性が座った丸テーブルの反対側に椅子を引いて座った。


この店のシステムは?と男性はまたキョロキョロ探しているところ、待ち切れないといったように女性から「すいませーん!」と声が掛かる。


店主は奥から立ち上がって、二人のテーブルに向かおうとすると、「ハーパーのロックふたつ!」と叫ばれる。「いいよね?」とその後男性に確認してる。


完璧だった。この女性は、飲み物のメニューは?と訊くわけでもなく、ウイスキーの種類は?と訊くわけでもなく、ウチのバーボンがハーパーと知ってたように注文してきた。しかもバーボンソーダでもなくロックを頼んでくるところもイケてる。

どんな人なの?ちょっと気になった。


店主はロックグラスを用意して朝霧の氷を入れて、ハーパーを注いだ。

そしてお通しのピスタチオとおしぼりをふたつずつ用意して、二人のテーブルに運んだ。

グラスを置いたとき、女性がちらっと下から顔を覗かれた。

テーブルにはなんとマルボロメンソールの箱が置いてあった。


キッチンから見ていると、女性がカシャっとマルボロメンソールにジッポーで火を点け、煙草を吸い出した。男性はまたまたキョロキョロして灰皿を探している。


禁煙とも喫煙ともしていない店内だが、何も断り無しに吸い出されると何も言えない。灰皿を男性に渡した。


最も店主も吸っているので、店内禁煙は許可するしかないのだが、本音は、店が汚れるのが嫌だから、店主が吸うときは、キッチン奥の裏口の戸をちゃんと開けて吸っている。


何やら水天宮にマンションを見に来たようで、不動産屋と今まで話してたらしく、結局決断出来なかったようだ。明日返事で持ち帰りになって、まず呑もうと彼女が言って店に来たようだ。二人は婚約中のようだ。


話し遅れたが、実は店主沢北紺は、昔、小さい頃に少林寺拳法を中国人の師匠に習っていて、相手から避ける予測術を習っていくうちに他人の思考を読めるようになった。

今来てる女性のように、思考力が強い人、感情が強い人は読み取れるのだ。

店主はこれを勿論秘密にしている。


で、読み取ったところ、

彼女は乗り気で今日見たマンションを決めたかったが、彼氏が弱気で少し考えてからと保留になった。その彼氏の弱気に彼女は腹を立てている。

彼女「だからパパが一千出してくれるって言ってるんだからいいでしよ?」

彼氏「いやぁ、それはしたくないんだよなぁ。」

どうやら予算4,000万以内で探してるところ、そこは5,000万とのことだ。


その後2人は更に揉めるかと思って見ていたが、ハーパーと店の雰囲気に酔ってくれたのか?少し落ち着いたようだ。


彼氏が彼女の分のグラスを持って、おかわりをもらいに来た。

店主はサービスで、氷多めのバーボン多めでお作りした。



店に来た早々は、スマホを出してローンの計算かなんかをしながら揉めてたが、話しがまとまったのか、今は「やーめた」と二人突っつき合いみたいなことして笑ってる。


と次に気づいたら荷物をまとめ、席を立ち上がって帰っていった。帰るときは二人ともこっちを見なかった。


テーブルに下げに行くと、ハーパーはきれいに飲み干し、ピスタチオもきれいに皮だけになっていた。代金の札が3枚置いてあった。




男と女は実に不思議なものだ。

ま、収まってよかった。



男と女って、何故か急に意地の張り合いみたいになるときがある。


大抵、男が男らしくなれないとき、そして女が男に付け込みすぎたとき、今日の二人みたいなことが起こる。


そういうときは女に任したほうがいい。

男の意地とか要らないんだよね。

男と女の教訓だ。


というのも店主は男の意地で離婚したようなものだからだ。





ところで一千出してくれるパパって何?






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