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蒼山碧海番外編  作者: 望月かける
異国から来た訪問者
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カヴェイネン:異国から来た訪問者(19)地図を作る女、エニシャの王墓

 カヴェイネンには状況が理解できなかった。

 デイジェンの肩にいた鳥がピンと、そのペアだという男に何ごとかを言いつけて広間の真ん中に魔法陣を描かせている。

「イェジン殿、タリヤ公はこれからなにをするんですか?」

「デイジェン殿の奥方に地図を作っていただく」

「地図?」

「デイジェン殿の奥方は、あー、あれを奥方と言うならだが、ひとまず奥方と言っておこう。奥方はエニシャにはもういなくなってしまった、地図作りの家系のお人だ」

 イェジンの説明を聞いてカヴェイネンは「はあ」となんとなく頷いた。

「ピン、カディン、メイシャン殿を呼んでくれ」

 ピンと、もうひとりの男が「かしこまりました」と応えて魔法陣をきらめかせる。

 ところどころに緑の光をまとった青い龍が魔法陣から躍り出て黒髪の女に姿を変えた。

 女の黒髪は、黒髪と言ってもカヴェイネンが知っているような赤味のある温かい黒髪ではなく、青みの強い冷たさを感じる黒髪だった。

 薄い柔らかな布を何枚も重ねた衣装を着た女はタリヤ公の前で左の腰に両手を重ねて添え、腰を少し落として会釈して黒い瞳を細めて笑みを浮かべる。

「蘇国、比一族末子比轍と申します。地図のご用命でいらっしゃるとか」

 カヴェイネンは通訳が「スジェ王室のビジュー殿です」と囁いたのを聞いて「ビジュー殿」と小さく繰り返した。

「地図を作る職人があんな女性なのですか?」

「見ていれば、なぜデイジェン殿が奥方を化け物だと言ったのかがお分かりになる」

 イェジンはカヴェイネンの顔をビジューに向けて成り行きを見せる。

 ビジューはタリヤ公の鱗を手に借りて「ありがとうございます」ともう一度笑みを浮かべてから魔法陣の真ん中に座り込んだ。

「それで、地図に含めねばならない場所はいかがなさいますか?」

「王墓だ」

 デイジェンの言葉に「王墓?」とビジューはデイジェンを振り返ってからタリヤ公の鱗を目の前にかざして頷く。

「他国の地図を作る機会なんてございませんからやりますけどね」

 そう言ったビジューは鱗を持った手を胸の前で重ねて目を閉じた。

 魔法陣から青い円が足元を駆け抜けて空間を揺らす。

 デイジェンがタリヤ公に目を向けた。

「玄王族はこれをやるらしいが、私にはできない」

 タリヤ公はデイジェンを見て苦笑いした。

 そのあいだに、ビジューは手のひらを上に向けて中空に円を描き、そのなかに砂漠を作り出す。

 砂漠は広がり続けては縮尺を変え、そのうちに大河に沿ってオアシスがいくつも出現した。

 大河はときに上下に移動し、非連続の砂漠を繋いでいく。

 九つの砂漠が出現したあとには砂漠の中に見捨てられた都市が姿を現し、黒い箱のような建物が埋まる地下回廊を広間の中心に示した。

「タリヤ公、階層別の地図はこれですべてです。このうち、六心龍の支配があったのはこのタリヤのほかに二か所。エルバハンとバルシューク。そのため、エルバハンとバルシュークの地図は表面的なものですが、他の都市はこの地図で動かすことができます。第三層の、ここがタリヤですから、タリヤの状況を変えるのであれば、この地図を調整してください。広範囲に雪を降らせるなども楽になりますよ」

 そう言いながらパチンと手を叩いたビジューが外を指し示すと、作られた模型のような地図のなかに雲が湧きだして雪を降らせる。

 ほぼ同時に、広間の外で「雪だ!」という声が上がった。

 カヴェイネンは「ピンが鏡の間で広げた地図と似ている」と小さく呟き、ピンが「私の地図はビジュー様に作っていただいたんです」と自慢げに胸を張る。

 ビジューはそのあいだにもタリヤ公に地図を動かして見せていた。

「縮尺を変えて、ここが公のお邸です。中庭を少し変えさせていただきますね」

 そう言ったビジューが指を動かして中庭の花壇を整理して花々を横にどかして空いた場所に幾何学的な図形で新しい花壇を作り、イェジンを振り返る。

「イェジン様、ここに二本ほど、高さの違う水椰子を置きたいのですけれど」

 イェジンは小さく頷き、懐から小さな瓶を取り出して二粒ほど金色に光る命の粒をビジューに渡した。

「ありがとうございます」

 ビジューは笑顔を返して、模型に作られた花壇に粒を埋めて手を動かす。

 模型の花壇から芽を引き出すような仕草で手を上に引き上げたビジューの指に摘まみ上げられた水椰子が一気に育ち、一本は低めに太く、一本は高めに細く、茂って実をつけた。

「公! 中庭が、ジナの仕業に違いありません! 急に花壇が勝手に動き出したと思ったら新しい花壇ができて木が生えて、その」

 慌てふためいた様子で広間に駆け込んできた使用人が、ビジューの手元に浮かんだ模型を見て息をのんだ。

「その、ジナの」

 ビジューは使用人を振り返って柔らかい笑みを浮かべた。

「ええ、ジナの仕業です」

 カヴェイネンはビジューを見つめてゾッとした。

 スタラーデとジャファも、ビジューを見つめて息をのんでいた。

「タリヤ公、この地図はお渡しいたしますが、あくまでも、好きに動かせるのはまだこのタリヤだけでございます。あとの都市は権限次第。私がこれ以上タリヤを好きにするわけにはまいりませんので、鱗をお返ししておきます。少々中庭を弄ってしまったのは、元に戻しておきます? 中庭に植えたのは水椰子、根が細くて多いので保水力が強い。暑気あたりのときには実を割って飲むとよいですよ」

「ああ、それはどうも」

 タリヤ公は困ったように頷きながら「まずは、このままで」と告げた。

「あとで中庭を見ていただいて、お好きなように変えてください」

 そう言いながらビジューは邸の模型に不穏な動きを見せているタジャンを見つけて顔をしかめる。

「イェジン様、この男はいかがなさいますか?」

「気にせんでよいですよ」

「そうですか? この男は鑑定眼の持ち主でしょう? 盗人よろしく荷駄を物色するような者に鑑定眼を持たせておく理由がございますか? 鑑定眼を取り上げてしまうこともできますが」

 イェジンはビジューの提案に首を振った。

「気にせんでよいのです」

「そうですか、ではそのままにしておきます」

 ビジューは頷いて地図の縮尺を変えて、砂に埋まった王墓をピンとカディンに示した。

「座標は示した通りですから、おふたりを王墓に送ってもらえますか」

 スタラーデはジャファを振り返った。

「ジャファール」

「なに」

「王墓とやら、私も行くの?」

「王様になればあのなんかエラそうなヤツにスジェに連れていかれなくて済む」

 ジャファはスタラーデに言い切り、それからスタラーデを見つめた。

「ええと、その、もしかしてスジェ行きたかった? 俺あいつ嫌いなんだけど、もしかしてあいつ好きだった? 俺ひょっとして余計なことした?」

 スタラーデはジャファを見つめ返す。

「いや、スジェに行くかは別だけど、王墓がなにかをよく知らない」

 スタラーデとジャファの会話を聞きながら、カヴェイネンはデイジェンがにやりと笑ったのを見た。

「王墓というのはなにか、ご存じなのですか」

「私が入ったのはスジェの王墓だし、王のためしを受けたのは兄だけだ。カヴェイネン殿はそのときに兄と面識を得た、そうでしたね?」

 カヴェイネンは「さようです」と頷いた。

 タリヤ公は息をつき、スタラーデとジャファを見る。

「私たちはいかなかったが、行って、なにがあるか見てくるとよい」

 スタラーデとジャファはタリヤ公を振り返り、それから顔を見合わせた。

「ジャファール殿はスタラーデ殿を王にする道を選んだ。王墓に道を問え」

 ピンとカディリは、デイジェンの言葉が終わると同時にスタラーデとジャファを魔法陣で囲って王墓に飛ばした。

 ビジューがデイジェンを振り返る。

「ところで泰俊殿、ジャファールは王龍なんですか?」

「比轍、おまえだって王墓に入れたじゃないか」

「私は王墓ではなくて外部書庫に入ったんですよ。立ち入りの許可も持っておりましたし、中では延々と記録を写せと言われて作業しただけです」

 ビジューの言い分を聞いて、デイジェンが視線を彷徨わせた。

「無事に出てくることを祈ろう」

「ひどい大人だ」

 カヴェイネンはビジューが呆れたのを見た。


 *** *** *** *** ***


 炎の王墓に飛ばされたジャファは、自分よりも年上のスタラーデを見た。

 そうして、改めてよく見てみて分かったことがある。

 スタラーデは少し赤味のある亜麻色で、瞳は琥珀色をしている。

 見た目の歳は三十代手前ぐらいか、スジェの王弟だという男とあまり変わらない。

 そしてスジェの王弟は細身というか薄い感じだが、スタラーデは満遍なく筋肉が発達したエニシャ人らしい大人の男だった。

 ただ、ジャファが盗賊の親玉だと自分で名乗る父親に連れていかれた崖の隙間にある根城で見たことのある大人たちに比べると、盗賊稼業で凄みを磨いてきた男たちに比べて、スタラーデはおっとりと、ふわふわとした感じがある。

 スタラーデはジャファの頭をガシガシと雑に撫でて小さく笑った。

「構わんよ。私だって急に婚姻の話をされて何がなにやらわからない状態であの場にいたんだ。さすがに王になろうなどと思ったことはなかったし、領地を治めているのは父だから自分になにができるかなんぞ分からないが、選択肢があるのはありがたいことだ」

 そう言ってから、スタラーデはジャファに囁く。

「知らないオッサンの妻になるよりいい」

 スタラーデにウインクされ、ジャファは首を竦めた。

 王墓の前では、青い火が揺れていた。

 王墓の扉を前にした部屋は、六坪ほどの広さだろうか、扉のある一面を残して、三方を壁で囲まれている。

 ジャファは困ったように笑って緊張を隠す。

「あのさ、スタラーデ、青い火ってジナの火だって言わない?」

「言うね」

 スタラーデはここに来てから腰が引けているジャファの背中を叩いた。

「スジェの王弟殿の奥方が呼び戻してくれることはまだ望めない。扉を開く以外にこの狭い部屋から出る手段がないぞ」

 暗い地下は冷え込んでいて、見合いのために何枚も重ね着していたスタラーデは、薄着で腕をむき出しにしているジャファが手で二の腕をこすって暖を取っているのを見て一番上の上着を脱ぎ、ジャファの肩にかけた。

「羽織っていろ」

「いいの? これ絹じゃないの?」

「絹だよ」

 スタラーデに言われて、ジャファはスタラーデを見上げた。

 ジャファは「絹」と呟く。

「俺、絹の衣装なんて初めて借りた。すべすべしてる」

「そうか?」

 スタラーデは笑った。

 ジャファは思う。

(ずっとスタラーデが着てたから、あったかい)

 少しばかりギュッと目を閉じてから、ジャファは上着の袖に腕を通した。

(デカくて引きずるけど、汚したら怒られるかな)

 そのジャファを振り返って、スタラーデは「ふふ」と小さく笑う。

「なにがおかしいんだよ」

「あと三十年ぐらいしたらちょうどよくなる」

「三十年もかかる?」

「おまえニ十歳か三十歳だろう? ジャヒーア姫がエニシャに嫁ぐ話があったのが四十年ぐらい前だったのをなんとなく覚えてる」

 ジャファはスタラーデを見上げた。

「あんたいくつ?」

「七十二」

 ジャファは呆気に取られて首を竦めた。

 スタラーデはパチンと音を立てて指を鳴らしてどこからか松明を出すと、王墓の前で揺れている青い火を松明に移した。

「ジナの火、それもらって大丈夫?」

 ジャファの不安を見て、スタラーデは「たぶんね」と肩を竦める。

「ここは地下だってビジュー殿が言っていただろう? 彼女が作った階層の地図を見た限り、ここからはこの王墓とやらに一度入る以外に出る道はない。上は硬い岩盤で覆われていて、さらにその上には砂漠だ。下手に普通の火を使ったら、きっと空気がなくなって息苦しくなる」

 ジャファはスタラーデの説明に「へえ」と小さく呟いた。

「ジナの火が何百年もここでずっと燃えていたとすれば、この火はここに空気があるから燃えるとか、空気がなくなったら消えるとか、そういう類のものじゃない。正体不明だが、ないよりマシだ」

 スタラーデはそう言ってから王墓を閉ざしている扉の模様を見た。

 青い火に照らされた幾何学模様のなかに、月と太陽が描かれている。

 そうして王墓の扉を眺めていたスタラーデは、緊張をほぐすかのように唇を小さくちらりと舌で舐めてから歯で咬んだ。

「まずこの扉の開け方がわからん」

 ジャファは「ウソだろ」と呟いてしゃがみ込む。

「月と太陽。幾何学模様……」

 スタラーデは目を眇めて扉の模様をじっと見つめる。

「あのさ、月と太陽って言うけど、ほんとにそれ月なの? 確かに満ち欠けしてるけど、なんかたくさんあるじゃん。太陽も真ん中じゃなくて、ずれてる」

 ジャファはスタラーデが肩にかけてくれた上着が落ちそうになるのをずり上げながら言った。

 スタラーデはジャファを振り返った。

「月の満ち欠けか、なるほど。月が一、二、三、四……十、円を描くように並んでいて、太陽は月の真ん中ではなく月で構成された円の中央より少し下に描かれている。考えられるとしたら春夏秋冬か? それにしては十三カ月あるはずの月が十しかない」

 ジャファはスタラーデの横に這いずって行って同じ模様を眺める。

 スタラーデはジャファを見ることなく、模様を見つめてから「月と太陽」ともう一度繰り返した。

「幾何学模様にしては、太陽の光がシンメトリじゃない。太陽から伸びる光の意匠がアシンメトリであることに意味はあるか?」

 スタラーデが、太陽の光が伸びた先にある月の模様に触れると、月が数秒ほど金色に光った。

「太陽から伸びる線は六本」

 上から順に太陽から伸びる光を示す線の先、交点にある月に触れてスタラーデはジャファと顔を見合わせる。

「違うかもしれない」

 ジャファはスタラーデを見上げ、それから地鳴りを聞いた。

 地下にある王墓の前で、六坪ほどの空間が狭まる。

「この調子であと二回ぐらい間違うと、壁に潰されるということらしい」

 スタラーデは頬をひきつらせた。

「冗談でしょ?」

 ジャファも迫ってきた壁を見て笑顔をひきつらせた。

「線が短いほうからとか?」

「同じ長さの線が三本ずつある」

 呟きながら、スタラーデは描かれた陽光の長さが短いものを時計回りに先に選び、次に長さが長いものを時計回りに選んで月を光らせる。

 月の光が消えてこれで開くかと思いきや、地鳴りとともに壁が迫ってきてスタラーデは緊張に目を閉じて唇を咬んだ。

「ジャファール」

「あい?」

「松明を持っていてくれ」

「わかった」

 スタラーデから松明を受け取って、ジャファは息を詰めた。

 月と太陽。

 幾何学模様。

 太陽から伸びる、長さの違う陽光の意匠。

 その太陽の周りには日暈ひがさが二重に描かれている。

「ひとつの太陽、十の月」

 呟くスタラーデの横でジャファは首をひねる。

「スタラーデ、あれなんて書いてある?」

「どれだ?」

「上のほうに小さく、たぶん、字なんだと思うんだけど」

 ジャファが指さした場所は扉の上だった。

 スタラーデはジャファに持たせた松明を手にとって掲げ、目を凝らした。

「古文字だ。十の王子、一の王。九の光は王の心臓、九の数字は王の心臓、王の心臓を求めよ」

「心臓ってこの心臓?」

 ジャファは自分の胸を指差し、スタラーデに首を振られた。

ドランの心臓はひとつじゃない。だから龍の種族を区別するのに、エクセン、ペクタ、クアンツという言い方がある」

 スタラーデはもう一度、月の模様を見た。

「ジャファ、月は十で、ひとつは新月。私が見ているのとおまえが見ているのは同じか?」

「同じ。月は新月から満月まで十個ある」

「数字だ。新月はゼロ、満月は九、合計で十の数字がある。十の王子、一の王。月が十、太陽は王。太陽から伸びる陽光の模様が六本。月を数字として、2、3、4、5、6、8の六つの数字に向かって線が伸びていて、2、3、8が短く、4、5、6は短い線の倍の長さ。短い線は内側の日暈のところで止まっていて、長いものは外側の日暈まで伸びている。内側の日暈までが1で外側の日暈までを2で数えれば、3と、2と3の乗数6、足して9」

 スタラーデはじっと数字を眺めてから、「心臓」と呟く。

「王の心臓の数は増えるものだと聞いていたが、九の数字は王の心臓、短い線で示された数字は1回、長い線で示された数字が2回使われると考えれば九つの数字になる」

 ジャファは怪訝な表情でスタラーデを見た。

 九の数字。

 数字の羅列。

「王子様、それいったいどういうこと?」

 スタラーデは「とても面倒だ。数字は恐らく六つに絞り込めたが、4、5、6が二回使われる」ともったいぶって眉を動かし、ジャファは周りの壁を見た。すでに二回間違って、あと一回間違えたら身動きが取れなくなりそうな状態になっている。

 ジャファの申し訳なさそうな、それでいて恨みがましい表情を見てしばらく困ったようなそぶりを見せてから、スタラーデは笑った。

「問題はない! 王の心臓を求めよ、心臓を構成する九桁の数ならひとつに絞れる」

「そうなの?」

「心臓はだいたい4の乗数で構成される。数字が九回使われるところまで4の乗数を計算していけばいいわけだ」

 そう言いながら、スタラーデは中空に光で簡単な数式を描いた。

 光る数字がカウントを始めたと思うとすぐに九桁の数字を出して止まる。

「268435456」

 スタラーデはその数字を見ながら月を光らせていった。

 月の模様を浮かび上がらせた最後の「6」の光がゆっくりと消え、青い火だけが揺れて残る。

 ジャファには呼吸ひとつがとても長く感じた。

 スタラーデも同じなのだろう、ジャファの前でスタラーデは息を止めていた。

 じっと息を詰めているふたりの耳に、壁が動く地鳴りが大きく聞こえて心臓が跳ねる。

 壁がゆっくりと元の場所まで引いて扉の前は六坪ほどの広さの部屋に戻り、王墓の黒い扉が上に上がって開かれた。

 ジャファはスタラーデを覗き込んだ。

「なんでさっきの数字が王の心臓の数字なの?」

「……至極初期のころの、力の限界を示す数字だと言われている」

 スタラーデは天井を見て言った。

「なにそれ」

 ジャファの視線が冷ややかになる。

「なにしろ扉は開いた。この部屋を出たければ王墓に入るしかないんじゃないか?」

 スタラーデはジャファの肩を叩いて先へと促した。

「これお墓でしょ? お墓って、入ると盗賊を追い払う仕掛けがあったりしない?」

「先に進んでみないとわからん」

 スタラーデはジャファの質問に、一応、答えた。

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