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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

神の与えた平等な才能

作者: 桜 唄

ある時神は、子の居ない夫婦に双子を授けた。

夫婦は泣いて喜んだ。

神は次女に沢山の才能を、長女にはたった一つの才能を与えた。

夫婦はどちらも平等に愛した。

双子が十歳辺りを過ぎた頃から、神の与えた才能が目に見えてきた。

その頃から夫婦は、沢山の才能を授かった次女を過剰に愛する様になった。

次女は喜んだ。

長女は毎晩、毎晩、自分を恨んだ。そして次女を妬んだ。

「生まれて来なければよかった。なんで…」

何度も、何度も、自分を恨み、殺そうとした。

だが、長女には一人だけ味方がいた。

それは長女の辛さを知らない次女。

「私は味方だよ」

次女は、両親の長女への態度だけを見て言った。

「私の辛さなんて知らないのに、勝手な事を言わないで。どうせ自分には才能があるから、そんな事言えるんでしょ」

そう思っても気遣ってくれてる次女に言うことは出来なかった。

だが、長女は次女を恨んだ。何度も殺そうとした。

その度に、次女を殺しても何も変わらない事を思い知らされる。

「自分は居ても居なくても変わらないけど、あの子が居なくなったら皆悲しむ。」

何度もそう思い、自分を殺そうとした。

ある時長女は、両親の会話を聞いてしまった。


「なんで次女のあの子があんなにいっぱい才能を持ってて、才能を持ってるべきの長女は才能がないの…。」

「家を継ぐにしてもあれが長女じゃあな」


私は生まれてくるべきじゃなかったんだ。

私は生きているだけで人を苦しませる。


「辛い…」

「もう…、生きていたくない…。」

「私が居なくなっても、誰も……誰も…悲しまない…?」


なにも見えない。痛みを感じることもない私の両目から不思議と涙が流れた様な気がした。


私の目には生まれた時から何も写っていなかった。

両親の顔も、妹の顔も、自分の顔ですら分からない。

私の世界は真っ暗なんだ。


私には両親の、妹の言う“綺麗な空”や“綺麗な花”などを一つも見たことがない。

「空は、青いんだよ。それでね、雲は白いの!すっごい綺麗だよ」

いつも妹は私に言う。

だけど私は、青という色がどんな色なのか分からない。

妹がどんな風に笑うのかも、両親が、妹が、どういう目で私を見ているのかも分からない。


目が見えない代わりなのか、はたまた神の同情なのか、嗅覚だけは人の数倍ほどよかった。

例えば、今私の前には妹の好きな赤色だというラナンキュラスが飾られている。

季節は夏だろう。時刻は十九時辺り。お祭りをやっているのか焼きとうもろこしや、わたあめの匂いがする。

「見て見てー!」

廊下をものすごい勢いで走ってくる足音と妹の声。

私のいる部屋の隣のドアを勢いよく開け

「どーお?かわいい?」

と、妹が声を上げた。妹は浴衣を着ているらしい。

「まぁー!かわいい!せっかくだし今からお祭り、行こっか」

母の声が私の部屋まで響く。

もちろん母は私の事は誘わない。

「あの子は連れて行きたくないからお父さん一緒に待っててね。お土産沢山買ってくるわ」

わざと私に聞こえるぐらいの大声で話した。

二人が家をでた後、父が私の部屋へ来た。

父の口から親として信じられない言葉がでてきた。

「なぁ。母さんと話したんだ。お前、死んでくれないか。今ならまだ間に合うはずだ。大丈夫。お前が死んでもあの子が跡を継いでくれるさ。母さん達もみんな賛成してくれたぞ。」

いつか言われるかもしれないとは思っていたけど実際に自分の親に「死んでくれ」と言われると思っていた以上に辛い。

金属と金属が触れ合う様な音が聞こえた。

父は今、私を殺すつもりかもしれない。

目が見えないのをいい事に、正面からナイフで刺すつもりかもしれない。

そんな事ないと信じたいのにネガティブな事ばかり出てくる。

「な、なん、で…」

「や、やめてよっ、」

必死に抵抗した。

「大丈夫。怖いのなんて一瞬。気づいたら死んでるさ。」

足音がどんどん近ずいてくる。

耳元で風の音がした。

一瞬、目が見えたような気がした。


叫び声が聞こえた。


いくらたっても私は死んでいなかった。

少し経って私は自分の犯した罪に気づいた。


一瞬、目が見えた。

その時に私は、私を殺そうとした父を殺したんだ。


目に力を入れるとより今の現状が分かった。

目が開いた。

今度は一瞬じゃなく当たり前の様に目が見える。

辺り一面には、近くに飾られているラナンキュラスと同じ色の血らしきものが溢れかえり鉄の匂いで包まれている。

目の前で白くなっている死体は私の父だったものだろう。

「お、まえ、なん、で、」

まだ息がある。

完全に殺さなくちゃ。

「や、やめろ、、うわあぁぁぁ」

図太い叫び声が響いた。

私は無意識のうちに持っていたナイフでさらに父を刺していた。

ビシャっと音を立てて真っ赤な血が辺りに飛び散る。

ガチャ。

遠くで扉が開く音が聞こえた。

妹達が帰ってきたのだろう。

私は血まみれのナイフを持ったまま玄関へ向かった。

「ただいまー!え……、え…。」

初めて見た母と妹の顔はさっきの父と同じ色をしていた。

ドザッと音を立てて片方が座り込んだ。

「まさか…」と小さく言った後もう一人、母らしき人が私の横を走って通って行った。

「きゃ、ぎゃーーーっ。お父さんっ」

大きな叫び声と足音が響く。

座り込んだままの妹がやっと口を開いた。

「も…しかして…お父さんを…殺したの…?」

私は黙って頷いた。

このままじゃいけない。自然とそう思い私の持っていたナイフは妹に向いていた。

「え…。え…。お姉ちゃんっ。や、やめてっ。私は、私は、あなたの味方よ。それにお姉ちゃん、目が見えないんじゃないのっ?」

「才能に溢れてて…目も見えて…当たり前の幸せを持っているあなたに…あの人達に…私の辛さなんて分からないわよ。」

一歩、また一歩と少しずつ妹に近ずいていく。

「や、やめて!」

何度も、何度も叫ぶ妹なんてお構い無しに私はナイフを振り下ろす。

「いや…やめ…て、」

父の時と同じ様に、ナイフを妹の心臓に突き刺そうとした。

ナイフを持っていた手に私以外の人の手が被さった。

振り向くとそこには母がいた。

私は振り下ろそうとしていた腕により力を込めて後ろに向かって大きく動かした。

父を刺した時と同じ感触が、音がなった。

母に刺したナイフを勢いよく抜くとまた血が飛び散った。

「ごめ…ね…」

母はそう一言言って動かなくなった。

ごめんね。

そんな言葉もう遅い。

最後の一人、妹を殺そうとナイフを持った。

「もう…やめて…。一緒に警察へ行こう…?」

目の前で自分の親を殺されたのによくそんな事を言える。

「それか…今…私を殺す…?その後どうするの…」

この後どうするかなんてなにも考えていなかった。

「私も死ぬ。」

本当にそう思っているのか分からないか自然と口からでた言葉だった。

妹に向けてもう一度ナイフを振り上げると、外から光が入ってきた。

眩しい…。

初めて知った感情だった。

私がカーテンの閉まっている窓を見ていると再度、ナイフを持つ手に違和感を感じた。

そこには震えた妹の手があった。

妹の目には沢山の涙が浮かんでいた。

「見て…。あれが、あれが、私の好きな空だよ。あのふわふわしてるのは雲だよ。綺麗でしょ」

震えた声で妹がカーテンを開けながら言う。

初めて見た空と雲はとっても綺麗だった。


どれぐらい見ていたのだろう。

気がつくと私は座り込んで子供の様に泣いていた。

「ごめん…。ごめん…。」

自然と口から言葉がでていた。

見上げると妹が笑って私を見ていた。

「お姉ちゃん。ごめんね。」

「え…。」


辺りに血が飛び散っていた。

さっきの母の血じゃなかった。


だんだん意識が遠のいていく。

せっかく開いた私の目に最期に映ったのは、自分の首にナイフを突き刺している妹の姿だった。


少し経ってやっと今、なにが起こったのかが分かった。

私は妹に刺されたんだ。

そして妹は私の前で自殺をした。


最後に私の耳に残ったのは聞いた事のない声だった。


「女性三名、男性一名の死亡が確認されました。」




神はある夫婦に双子を授けた。

次女には沢山の才能を、

長女には、目を封じ、人を死へ導く才能ただ一つを与えた。


神が双子に与えた才能で双子はそれぞれ苦しんだ。


次女は、沢山の才能を手にしたが両親の期待に苦しみ、自分を殺し、両親の人形として生きようとした。


長女は、なにも見えない暗闇から必死に自分の才能を探した。なにも見つからず自分を、自分を諦めている家族を殺そうとした。

だが、双子はどんなに頑張っても苦しみからぬけだせなかった。

そして、苦しみに耐えられなくなった双子は自分達の手を自ら汚し、苦しみから解放されたのだった。




end

今回は“神の与えた平等な才能”を読んでくださりありがとうございます。

初めて小説を投稿したため至らない点もあったと思いますがこれから成長していく予定です。

これからも頑張っていきますのでぜひ、桜 唄をよろしくお願いします。

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