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ボツ作品1 デパートに現れた不審者を意外な古参が成敗する話

作者: ボツりヌス菌

 夜が更け、デパートは暗闇に染まった。

 閉店時間も過ぎ、従業員も皆退館し、その殆どが寝静まった時間帯である。


 暗闇の中一人、異様に目立つものが館内を駆け回る。


「探せ探せ探せ探せ探せ探せ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ急げ」


 息を切らす様子もなく、ただ執拗に館内を走り回る。

 人のような造形をしているが、似ても似つかない、人ならざる物である。


 彼にも名前はあるがそれは固有のものでなく、あくまで彼ら全てに当てて名付けられている。


 縦横無尽にデパート内を彷徨き回るその物に対し、人ならざる別物が話しかける。


「なーーにをそんな急いでるんすかー?」

「やばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやばやば」

「あんた走ってると一言を繰り返すだけじゃねっすか! 意味わかんねっすよー!」

「居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た居た」

「居た!? 何がっすかー?」


 後輩口調で話すその青色は、暗闇に同化してよく見えない。

 だがそれでも、忙しない物体は見事に青色の前で静止する。何故なら己が光源だからである。


「不審者。」

「えぇ!? あぁやば漏れそう。ていうかちょっと出た。トイレ行ってくるっす」

「いてら。」


 ——数分し、ようやっと洋式トイレが流れる音が館内に響き渡る。


「遅い」

「後処理大変なんすよこっちは。看板であるが故の弊害っすよこれ」

「わかる」

「ってか、不審者ってどうしたんすか。それって残ってるヒト……従業員とは違うんすか」

「無理だろ」

「あ、そっか」


 ピクトグラムは人が寝静まり、誰も居ない環境で自由に移動を始める。

 子供たちの見えないところで玩具が生きているように、ピクトグラムもまた、人気のない時間に動き回る。


 逆に言えば、客や従業員が居れば決して動くことは出来ない。それが彼らに課せられた使命なのだから。

 唯一ヒトがいて動けるとしたら、今回のようなイレギュラー。『客ではない者』が彷徨いている時だけである。


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