女の子を救ったので進級します
高校三年生になってしばらく経った。それなりに優等生だった僕だが、週に一度何故か夜更かしをしてしまい、学校に遅刻してしまうことがある。昼休み、新しく出来た友人達と机を並べて食事をした後、教室を出て特に目的も無くその辺をぶらついていると、人気の無い場所からやかましい声がする。
「宇月さん困ったことになりました新入生が部活に入ってくれませんオタクっぽい子はたくさんいるし積極的に勧誘したんですけど何ででしょうね?」
「……うるさいからですよ」
「え何て言いましたか聞こえなかったですよ宇月さんはもっと普段から声を出すべきです」
「部長は! うるさすぎるんですよ! 同級生は慣れてるかもしれませんけど! 下級生からしたら恐怖の対象でしか無いです! 正式入部してしばらく経ちますけど、新二年生からも評判悪いですよ! 横領もしてますし!」
「ぐふぅ超絶ショックです宇月さんは私の味方ですよね?」
「夏コミの時に私と久我さんをネタにしたエロ本作った人の味方なんてできるかー!」
「宇月さんだって冬コミの時は自分からネタにしてたじゃないですかー!」
「自分でネタにするのと他人がネタにするのは全然違うんです!」
普段からやかましい部長と、おとなしい子でいようとするがすぐに感情的になって声が大きくなる宇月さん。クラス替えの結果二人で会話することが多くなり、クラスメイトからクレームがついてこうして離れた場所で喋っているらしい。宇月さんが学校に溶け込めていると言っていいのかは疑問が残るが、彼女の声は活き活きとしているし心配は無さそうだ。その場を離れて声が聞こえなくなる頃、とあるクラスの窓から御堂さんが自分の席で本を読んでいるのが見える。
「帰りどうする?」
「ゲーセン行こゲーセン。推しのアイドルのキーホルダーが入荷したから取りたい」
「うーん、いいけど、取れるの? こないだだってお金が無くなって私から借りて結局取れなかったじゃん。ていうかまだ返して貰ってないんだけど。今いくらあるの」
「もうすぐバイト代が入るから、お慈悲を~」
その傍ではクラスメイトが他愛も無い会話をしている。御堂さんは本をパタンと閉じると、クラスメイトの方に歩み寄った。
「楽しそうな会話をしているわね。私もついていっていいかしら」
「御堂さんが? いいけど、御堂さんはあんまり楽しめないと思うよ?」
「いえいえ、こう見えてUFOキャッチャー得意なのよ。折角一緒のクラスになったんだし、プリクラとかも撮りましょう?」
「いいねいいね、それじゃ放課後はゲーセン行ってカラオケ行こー! 御堂さんはどんなの歌うの? やっぱ洋楽とか?」
「カ、カラオケ……!?」
そのまま微笑みながら持ち前の社交力でクラスメイトと放課後の予定を組むが、カラオケの名前が出た瞬間に顔が引きつる。適当な予定をあげてカラオケから逃げようとするのか、真の自分を解放するのかは定かではないが、何の心配も無いだろう。両親と将来についても話し合ったらしく、例え両親が家を空けることが多くても、今は目標に向かって真面目に頑張れているらしい。
「く、久我、助けてくれ……」
自分のクラスに戻り席に着くと、隣の席に座っていた保崎さんが死にそうな目で模擬試験の結果用紙をこちらに見せてくる。酷い点数だ、Fランだって受かりはしないだろう。
「友達たくさんいるんでしょ。ていうか大学行くつもりなの? 卒業出来るとも思えないし、そもそも進級しているのもおかしい。本当は二年生なんでしょ? 見栄張って三年生の教室に来なくていいよ」
「今までは助けてくれた連中も、高三になった途端『自分の受験に専念したいし』って私を見捨てたんだぁぁぁぁ! このままじゃ二年学級委員を務めて推薦で大学に行くウチの作戦が台無しだ! お前の仕事は女の子を救うことだろう? 二人みたいにウチも救ってくれよ」
内申目的で学級委員になり、じゃんけんに負けて学級委員になった僕にその仕事を押し付けている上に、追加で仕事を頼もうとする、去年と何ら変わらない彼女。僕はこの一年色々あったなぁと振り返り、
「『女の子』なら助けたいけど、保崎さんはね……」
「どういうことだこらぁぁぁぁぁぁ!」
ニヤつきながらそう返すのだった。




