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女の子を救うために音ゲーをします

「文化祭と言えばバンドよね」


 御堂さんの待つゲームセンターに向かい彼女を探す。馬、というかメダルゲームのコーナーにはいなかったので別の階を探すことしばらく、音ゲーのコーナーで他人のプレイをボーっと見ている彼女を見つけた。彼女は僕を見るなりそんなことを呟く。引きこもっていると思想は似通っていくのだろうか。


「宇月さんも同じことを言っていたよ、文化祭にすら行けるかわからないのに。御堂さんは演奏できるの?」

「ピアノならそれなりに弾けるわよ、つまりキーボード担当ね。けれどやっぱりバンドといったらギターでボーカルよね。さあ、ここでギターテクとかを磨くわよ」

「ギターテクは養えても歌唱力は養えないよ」

「残念だったわね、家で練習してこの前併設されているカラオケで歌ったのだけど、採点は70点とかいい感じだったわ」

「カラオケの採点で70点は低い方だよ」


 大体誰が歌っても80点は行くはずだが、学校は彼女に忖度してもカラオケの採点システムは忖度してくれないらしい。歌唱力をギターテクで補おうとギターの音ゲーに100円を投入して、EASYはプライドが許さないのかNORMALな難易度の曲を選ぶ。


「皆のおかげで、私はここまで来れた。だから、曲で恩返しがしたいの。聞いてください、『ヒーイズマザーファッカー』」

「マザーファッカーは親に嘘をつき続けている御堂さんだよ」


 流石にピアノが弾けるからか音痴でもリズム感はあるようで、NORMALな曲くらいならゲームオーバーになることなくクリアしていく。気を良くした彼女はヘタクソな鼻歌を歌いながらHARDな曲にも挑戦し始め、平日昼間で客が少ないのをいいことに観客一人のライブを繰り広げる。


「ああ、確実に私、ギターがうまくなってるわ」

「盛り上がっているところ悪いけど、このゲームが上手くなっても本物のギターはうまくならないと思うよ。結局それってボタンをリズムに合わせて押してるだけでしょ?」

「私の上達に嫉妬しているのね。いいわ、ちょっと待ってなさい」


 数百円を消費したところで彼女は店内にあるロッカーに向かい、鍵を開けてギターを持ってくる。見た目は宇月さんが持っていたアコースティックギターと変わらないが、多分値段が数倍違うのだろう。


「何か家に飾ってあったから持って来たの。今なら弾ける気がするわ」

「気のせいだよ」


 そのまま彼女はギターを手に演奏をしようとするが、ギターの弾き方すら事前に学んでこなかったようでペシンペシンと弦を叩くだけで音もロクに出せず、店内のBGMに完全に負けてしまい不協和音すら聞こえてこない。


「見本を見せて頂戴。どうせ中学校の頃にモテようとしてギターを練習していたんでしょう?」

「酷い決めつけだよ。練習はしてないけど友達の演奏を何度か見てきたよ」


 ギターを押し付けられてしまい、仕方なく友達の見よう見まねで演奏をしてみる。当然ながらまともな演奏は出来ずにベヨンベヨンと不協和音が鳴るが、御堂さんよりはきっとマシだ。


「引き分けね。ギターの練習にならないんじゃやっても意味ないわ。ドラムならきっと練習になるわよね」


 一方的に引き分け宣言をした後、ギターの音ゲーの隣に置いてあるドラムの音ゲーに向かう。ドラムの練習とかはよくわからないが、多分こっちはギターに比べれば練習になるのだろう。100円を入れてNORMALの曲を選ぶが、先ほどまでギターを数プレイやっていた状態でドラムを叩くのは体力的に辛いらしく、1曲目の途中でバテてしまいあえなくゲームオーバーになってしまった。


「見本を見せなさい」


 ロッカーに向かい今度は保冷していたアイスを持って来て、椅子に座って休憩する彼女。バンドマンの友達はいるがギターはともかくドラムを練習している風景を見た事はない。ひとまず筐体に座ってNORMALの曲に挑戦しようとしてみるが、リズムに合わせてドラムを叩くだけならまだしもフットペダルという慣れない概念に対応することができず、発声練習はしていてもリズム感を養うようなことはしてこなかったこともあり、あえなくゲームオーバーに。アイスを食べながらニヤニヤしている御堂さんに気づき、ムッとしながら連コインをする。


「そろそろ代わって欲しいのだけど」

「次こそは成功するから」


 僕も男だ、負けっぱなしでは終われない。数百円を消費して腕の痛みに耐えながらどうにかNORMALをクリアして御堂さんと代わるように椅子でゼーハーしていると、御堂さんは僕に見せつけるようにNORMALの曲を難なくクリアしていく。


「貴方のプレイ見てたらコツが掴めたわ。でもドラマーってベーシスト程じゃないけど地味よね。私には合わないわ」

「全国のドラマーとベーシストに謝りなよ……」


 ドラムとベースは趣味じゃないとバンドマンのヘイトを集めるような事を言いながら、次に彼女が向かったのは大抵のゲームセンターに置いてあるであろう太鼓の音ゲー。バンドのために練習をするというコンセプトはどこかへ行ってしまったようだ。


「見た目が洋風の美少女である私が和の音楽を奏でる、そのコントラストはまさに芸術と言っても過言では無いわね」

「髪を金髪に染めて学校をサボっているヤンキーが一人寂しく音ゲーをプレイしているようにしか見えないよ」

「だったら美少女と付き合いたくて無理して一緒に学校をサボっているマジメ君になりなさい」


 太鼓の音ゲーは二人プレイが可能なので急かされるままに二枚目の硬貨を入れ、引きこもっているうちに自然とアニメを見るようになったらしく最近のアニメソングを選んだ彼女と太鼓を叩く。純粋なリズム感で言えば彼女の方が上のはずなのだが、達人がプレイしている動画にでも触発されたのだろう、技量も無いのに無駄に魅せる動きを取り入れながらプレイした結果点数は悲惨なことになり、僕がクリアしてなければ1曲目で100円を無駄にするところだった。


「真面目にやりなよ」

「至って真面目よ。太鼓ってこんな感じに踊ったりしながら叩くものでしょう。棒立ちでドンだのカッだのやっているだけの、連打する部分で狂ったように叩かない貴方こそ真面目にやりなさい。さあ、真の貴方を解き放つのよ」

「庶民の学生にとってはそれで失う100円が惜しいんだよ」


 その後もダンスの音ゲーをやってみたり、シューティングゲームのような音ゲーをやってみたりと迷走しながら音ゲーで遊び続けることしばらく、カラオケは喉を酷使するだけだが音ゲーは腕も酷使するのでお互い明日は筋肉痛になること間違いなしな状態になってしまう。


「ギターが重いわ。やっぱり私はキーボード兼ボーカルが性に合っているわね」

「ボーカルは諦めなよ」

「ところで宇月さんもバンドをやりたがっていたんですって? 何を担当するつもりなのかしら」

「作曲とギターをやりがたっていたよ。おかげで午前は酷い曲を聞かせられた」

「素晴らしいわね。じゃあ貴方は作詞とドラムかベースをやれば完璧ね。時間はたっぷりあるし、文化祭に出るバンドに負けないような演奏を目指しましょう」

「僕に時間はたっぷりないよ」


 ギターケースを重そうに抱えた彼女は宇月さんも文化祭でのバンドを夢見ていることを知ると、意気揚々と彼女に電話をかけて一緒に音楽やりましょうと誘う。そのままライブでオーディエンスを沸かせる妄想をしながら語り合う二人を見ながら、帰りに中古のベースでも見にいくかと巻き込まれ男子になるのであった。



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