表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/47

女の子を救うために曲を作ります

「大変です委員長! 1組と3組もメイド、執事喫茶をやるそうです!」

「流石に3つ被りはまずいですね、今からでも出し物を変更しますか?」

「……いや、いい機会だから勝負に出よう。2年生最強のクラスは我々だと言うことを1組と3組に教えてやるべきだ。皆、自己犠牲の精神とハングリー精神を持て!」

「「「「うおおおおおおお!」」」」


 教室では3クラスで同じ出し物をやるという狂気が始まろうとしていたり、


「まあやることと言ったら作った作品を展示することですよねちなみに私は人前に出せるような作品を作っていません」

「私も」

「……いや、レディコミとかあるし、ギリギリセーフなんじゃない?」

「その発想は無かったですさあありのままを曝け出しましょう停学が怖くてオタクはできません!」


 オタクサークルでは内輪で盛り上がった人達が自分達の作品を皆に見て貰おうだのととち狂った事を言い出したり、


「なあ、漫才やらないか?」

「一緒に漫才して、友達に噂とかされると恥ずかしいし……」

「お前のこと評価してるんだよ、ネタも書けるし、喋りもうまい方だし、突っ込み適性も高い。一緒に三回戦突破しようぜ!」

「賞レースかよ」


 保崎さんにはステージでやる漫才の相手に誘われたり、夏休みが明けたと思ったらあっという間に秋も中盤、文化祭というリア充にとっての一大イベントが近づいてくる。とはいえ僕は陽キャでもパリピでも無いので、そこまでの熱は無い。クラスや部活の出し物に最低限の貢献をして、当日は友達と回ったり遊びに来た姉妹の接待をする程度。あくまで僕は学級委員であり文化祭の実行委員では無いのでクラスメイトに頼られることも無い。掛け持ちしている部活の出し物について説明を一通り聞き、手伝うシフトを決めて帰路につき、翌日文化祭とは無縁の存在であろう宇月さんの家へ。


「朝からアニメでも見てるのかな……」


 リビングではバステトが部屋の片隅でぐったりとしており、迷いながらも僕の方へ寄ってくる。バステトを拾い上げて彼女の部屋に近づくにつれて頭がおかしくなりそうな、実際にバステトは頭がおかしくなったであろう音が大きくなる。それにしても酷い音だ、きっと電波ソングというやつなのだろう。ドアをノックすると音は止み、ヘッドホンをつけた宇月さんがお出迎え。


「音が漏れてたよ、それにしても酷い曲だね、前衛芸術ってやつかい? バステトも騒音で倒れてたよ」

「私の曲にケチつけないでください!」

『フシャー!』


 このデッドエンドシンフォニーを繰り出したのは目の前にいるセイレーンらしい。彼女のパソコンの画面を見ると音楽の編集ソフトが起動していた。彼女が今作っている曲の譜面を見て頭の中で曲を演奏してみるが、常人には作成も理解もできそうにない。


「こんなものをアップロードしたら炎上どころかブラクラ扱いでBANされるよ」

「作り始めたばかりですから! すぐに神曲作りますから! ほら、文化祭のシーズンでしょう? 文化祭と言えばバンドですよね?」


 文化祭と言えばバンドというイメージが湧かないが、彼女の机に置かれているメランコリーなライトノベルではきっと文化祭でヒロインが演奏をするのだろう。よく見ると彼女の部屋にはギターも置かれていた。


「あ、気づきました? 格好いいでしょう、パパが昔友達とバンドを組むために買った新品のギターです。曲が完成したらこれで弾くんです」

「どうせお父さんの遺伝子を受け継いだ宇月さんは新品のままにするよ。ほらバステト、どうせ使わないんだから爪とぎに使いなよ」

「ぐぬぬ……さっきから黙って聞いていれば私を音楽のセンスが無いかのように……そこまで言うなら久我さんは作詞をお願いします。文化祭に行けるかすらわからない私に、せめて文化祭でライブをする夢を見させてください」


 先週も勉強をせずにクッキーを作って終わってしまったので今日は真面目に勉強がしたいのだが、既に彼女の脳内は漫画やアニメのヒロインのようにライブでオーディエンスを湧かせているらしく、ニヤニヤしながら編集ソフトを触り始める。彼女もオタクサークルの子達もカラオケが好きみたいだし、音楽センスを伸ばすことが友達作りに役立つかもしれないと無理矢理こじつけて画面に表示されている譜面や歌詞を眺める。


「それでどんな曲を作りたいのさ」

「クソッタレな世の中へ~とかそんな感じに世の中への不満を歌にしようかと」

「養ってもらってる身分で何が世の中への不満だって話だよ……とりあえず最初は既設の曲をちょっとアレンジすることから始めた方がいいんじゃないかな。実力も無いうちからオリジナルに手を出したってうまくいかないと思うよ」


 実力も無いうちから意識だけは一流クリエーターになって我が道を行っても大抵はうまくいかない。最近流行っているらしいロックな歌をベースに不登校あるあるネタで替え歌をするという流れになり、彼女はキーを変えたりしながらアレンジに挑戦する。一方僕は作詞担当なのだが、


「いや、僕が不登校あるあるのネタを考えるのはおかしいでしょ」

「久我さんも週に1回学校に来てないんですから仲間ですよ。それに私だけじゃなく御堂さんも日頃から見てきている久我さんなら客観的なあるあるネタが出てくるはずです」


 不登校のあるあるネタを求められても週に1回休んでいる程度の、それも自分の家に籠っている訳でもない僕に不登校の気持ちはわからない。仕方なく今までの宇月さんや御堂さんとの思い出から共通点等を見つけようとする。


「被害者意識強いよね基本。社会が悪いとか言いながら学校休むわけだし」

「あんまりマイナスなあるあるネタは私が傷つくのでちょっと……パンチも弱いです」

「不登校のプラスなあるあるネタって何さ……」

「昼ドラに詳しくなれるとか……」


 部屋から出ないので太りやすいとか根拠のあるネタをいくつか挙げてみるが、彼女はネタソングが作りたいらしく却下されてしまう。お昼に出前が頼めるだの深夜アニメを楽しめるだの無理矢理不登校を賛美しながら曲を作ることしばらく、元の曲がしっかりしているからか改悪されてもそれなりに聞ける不登校賛美歌が出来上がる。


「クソみてえな世の中に響き渡る本物のロックンロール見せてやるよ」


 実在のバンドかアニメかは知らないが随分と悪い影響を受けてしまったらしく、言葉遣いも荒れてしまった彼女は録音のスイッチを入れてマイクを手に部屋の真ん中に陣取る。バステトは逃げる気まんまんらしくドアに体当たりをしているが、僕も心細いので逃がさないように抱きかかえる。



 萌える!燃える!不登校

 作曲アレンジ:宇月彩美

 作詞:久我倫也


 私は友達いないけど ネトゲの中なら大人気

 部屋から出ないと太るから 出前で頼むぜ低糖質

 最近病気が大流行 部屋から出なけりゃ無問題モーマンタイ

 深夜アニメも飽きたけど 意外と昼ドラおもろいやん


 皆が勉強している時に ベッドで寝れる優越感

 けれどもすぐに寂しくなって ベッドで泣き出す情緒不安

 クラスのアカをフォローして ベッドでひたすらエゴサーチ

 人目を気にする必要ないから ヘッドは寝ぐせでボサボサさ


 猫は不登校の友達だけど 不凍液は猫の天敵です

 アニメは不登校の友達だけど 主人公は大抵リア充です

 いつかは学校戻りたいけど 皆の目とかが気になるから

 皆もなろうよ不登校 そしたら私は一人で授業


 H!U!T! 不登校!

 O!K!O! 太った子!(太ってない!)

 H!U!T! 不登校!

 O!K!O! 不凍の子!(燃えて来た!)


 明日から~本気を出すから~今は休ませて~OhYeah!





「じゃあアップロードしますから高評価お願いしますね」


 その後コメント欄は改悪するなだの学校行けだの不登校を正当化するなだの炎上した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ