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女の子を救うために猫と遊びます

「あ久我さん丁度いいところにイベントで貰ったんですけど私達の体型では合わなかったんです久我さんならぴったりですよね」

「どうして僕がメイド服を着なきゃいけないんだい?」

「またまた好きなんですよね大丈夫です私達は味方ですよ」


 クラスでは男用のメイド服をプレゼントされそうになったり、


「という訳で配役を決めて行くわけだが、立候補や推薦はあるか?」

「はい! ヒロインは久我君がやるべきです!」

「どうして裏方の僕が自分で書いた作品のヒロインをやらなくちゃいけないんだい?」

「うむ、あの完成度は見事だった! よし、ヒロインは久我だ!」


 演劇部では僕が書いた脚本のヒロインを僕がやるという気色悪いことになったり、


「なあ久我……友達にお前に一目惚れしたから紹介してくれって言われたんだが、お前は女装姿で行くべきなのか? それとも男の姿で行くべきなのか? 迷うよな……」

「保崎さんとは絶交したから紹介できないって言っておいてね」


 勝手に一目惚れされたり原因は1つしかない。



「う、づ、き、さぁ~ん? どうして僕が学校で女装趣味のある人間扱いになっているかわかるかい?」

『ナーオ』

「グループチャットに入ったけど、どう会話すればいいかわかんなくて、無言でとりあえず久我さんの女装写真を送ったんです。久我さんノリノリだったじゃないですか、女装趣味の何が悪いんですか。女の私よりかわいかったですよ倫ちゃん」

「さては僕が学校に来れなくなって仲間になることを目論んでるね?」

『ナーオ』

「被害妄想ですよ倫也ちゃん……」


 笑顔で怒りながら宇月さんに詰め寄ると目を逸らしながら、これが僕の本当の姿なんですと言わんばかりに女装した僕を見せつけてくる。スマホを奪い取り画像データを消したが特に彼女は反応を示さない。おそらくはパソコンとかに保存しているだろうしそもそもクラスメイトにも広まっていて最早この世から消すことは不可能だと諦めて勉強道具を広げる。


「私、何もしなくてもお金が稼げる方法を見つけたんです」

『フーッ!』

「いいから勉強して卒業して働いてお金を稼ごうね」


 宇月さんは勉強道具を広げることなく、まだ動画配信者としての成功を諦めていないらしく僕に流行りの動画を見せてくる。そこには三毛猫が飼い主の部屋の中でゴロゴロとしているだけのライブ動画に、視聴者が餌代として投げ銭をしている光景があった。


「猫を映しておけば儲かる!」

「そういう汚い人間の心を猫も視聴者も見抜くんだよ。それでどうしたいのさ、野良猫でも捕まえに行こうとでも?」

『シャー!』


 確かにコストパフォーマンスで言えば動物で稼ぐのは効率的なのだろう。捨て猫を保護したり、産まれた子猫の里親を募集したりするだけで世界中にいる猫好きが反応を示してくれる。今更新規参戦して視聴者がつくのかという問題もあるが、そもそも猫がいなければ話にならない。


「ふっふっふ……さっきから聞こえませんか?」

『ナーオ! シャー!』

「……滅茶苦茶怒ってるみたいだけど。餌あげてきたら?」


 一階の方から聞こえてくる怒りの鳴き声が大きくなってくる。やれやれ食い盛りな猫ちゃんですと宇月さんが部屋を出て行き、片手に猫を、片手に猫缶を持って戻って来た。


「ほーらバステト、ご飯ですよー、食べた猫缶の分はしっかりと働いてくださいね」


 猫缶を開けると飼い主に似たのかガツガツと貪り始める、足の短い茶トラの子猫。いつのまにか持っていたビデオカメラで猫を撮りながら、ペットが可愛いからなのか金の生る木だと思っているのか目を輝かせる彼女。


「といわけで家族になったバステトちゃんです。そろそろ私も大きくなったしペット飼おうという話になってトントン拍子で進みました」

「子供が不登校だってのに呑気な家族だよ」

「それに学校でペットの画像を見てニヤニヤしてたらそのうち女子が『えー何その猫可愛い~』って話しかけてきてトントン拍子で友達になれると思いませんか?」

「クラスでぼっちな子がスマホ見ながらいきなりニヤニヤしてるシーンを想像してご覧?」

「去年の私ですね。というわけで女子高生と猫という究極コンビの動画を作るために撮影お願いします。ちょっと制服に着替えてきますね」


 都合のいい時だけ女子高生というステータスを活用したいらしく、学校に行かないのに制服に着替えるために部屋を出ていく彼女。トントン拍子で勉強も学校復帰も進めばいいのにと取り残された僕はため息をつきながらビデオカメラの操作方法をチェックする。


『マーオ♪』


 猫缶を食べ終えたらしく、猫の神様の名を冠する子猫がよちよちとこちらにすり寄って来て膝の上に乗っかってくる。人の膝の上で満腹そうにゴロゴロとくつろぐバステトを動画に収めていると、制服に着替えて、猫耳もつけて猫じゃらし等の遊び道具も抱えた、遊びに全力な彼女が戻って来た。


「さぁ一緒にビッグドリーム掴みましょうねバステトちゃん……って駄目ですよ久我さん、私の猫が可愛いからって捕まえて膝の上に乗せちゃ。虐待ですよ虐待、変態のオーラで怯えてるじゃないですか。さーバステトちゃん、抱っこしてあげまちゅよー」

『……』


 僕の膝の上からバステトを奪い取ろうとする宇月さんだが、バステトは彼女が近づくとひょいと僕の膝から離れて部屋の片隅に向かう。


「怯えてるんじゃない?」

「バステトちゃんが? 私に? バステトちゃんが家族になってから三日間、家にずっといることを活かして遊びまくったんです、そんな訳ありません」

「それが原因では……」


 怯えられていると言われてプライドを傷つけられたのか、『私達家族だよにゃん?』と人としてのプライドを捨てて猫語? で話しかけながら猫を抱こうとする彼女だが、猫は『シャー!』と子猫らしからぬ威嚇をした後にぴょんと僕の頭の上に飛び乗る。


「何で久我さんには懐いているんですか、ひょっとしてマタタビとか事前に身体につけてきましたね? この泥棒猫」

「猫も甲斐性無しには養われたくないんだよ。このまま宇月さんが学校に行かずに退学になってニートになったら、猫とペット枠を奪い合う訳だからね」

「だから一緒に稼ぎましょうよバステトちゃん、バステトちゃんの可愛さと私の動画編集能力が合わされば世界狙えるんですよ」

「動画編集能力あるの? 動画撮ろうとしては挫折してばかりじゃないか」


 ビデオカメラを持って僕の頭にしがみついているバステトを撮ろうとする彼女だが、動画編集能力以前に撮影技術も無いらしく抱えたビデオカメラが震えている。恐らくブレブレの動画になることだろう。その後も彼女には懐かないが僕には指を舐めたり餌をおねだりしたり懐いて甘えてくるバステトを、悔しそうに動画に収め続ける彼女だが、途中で衝撃の事実に気づいてしまったとでも言わんばかりのハッとした表情になる。


「そうでした……バステトちゃんはメスでした……だから女に嫉妬して男に媚びるんです。つまり久我さんが女装して私より可愛くなれば嫉妬して私に甘えてきます」

「しないよ」


 猫がこちらの性別を認識しているのかはさておき、この三日間で宇月さんへの好感度はすっかり下がってしまったようで、結局この日僕にばかりスキンシップをとってくるバステトを悔しさで手を震わせながら宇月さんが撮影するという何一つ勉強が進まない午前となった。


「バステトちゃん? 飼い主は私ですからね、私に甘えるんですよ。ほら、ちょーるとマタタビです」

『……』

「猫も家庭内序列を気にしてるのかもね。宇月さんは餌をくれる召使いなんだよ」

「ぐぬぬ……まぁいいです、今日録った動画で天下取りますよ」


 宇月さんが持って来た餌を何も言わずに奪い取りガツガツと貪る、学校にも行かない女より可愛い自分の方が価値があるとでも言いたげなバステト。そんな猫の価値で人気になろうと動画をパソコンに入れる彼女だが、1つ問題がある。


「この猫じゃ無理だと思うよ。炎上するんじゃないかな」

「はぁ? どこがですか、私への態度はクソですけど滅茶苦茶可愛いじゃないですか、久我さんには動物を愛する心が無いんですか」

「だってこの猫、マンチカンでしょ?」


 猫の品種に詳しくは無いが、幼い頃に家族がスーパーで買い物をしている時、ペットショップで動物を見てキャーキャー言っている妹のお守をしていたのでペットショップで人気の猫はよく知っている。スマホでこの猫について書かれた記事を探して彼女に見せる。


「この猫は突然変異した猫を人間が繁殖させた、作られた猫なんだよ。だから飼うこと自体を虐待だって捉えてる人も多いんだ。妹がペットショップで遊んでいるのを眺めている時に、よくスコティッシュフォールドとマンチカンを売るのを辞めろ虐待だとクレームをつけているおばさんを見かけたもんだよ」

「バステトちゃんの愛くるしさにかかれば問題ありません、プリティーイズジャスティスです」


 普通に飼う分なら問題は無いが、この猫を使って人気になろうなんて彼女の浅ましい考えは色んな人間の怒りを買うことだろう。そんな僕の忠告を無視して動画の編集をし始める彼女にどうなっても知らないよと僕は御堂さんの下へ向かう準備を始める。数日後、案の定彼女がアップロードした質の悪い猫の動画には大して視聴者もつかず、つくコメントは動物愛護団体の批判ばかり。これに懲りたら真面目に勉強して猫を養おうね、とコメントの通報をするのであった。


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