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女の子を救うためにファミレスで勉強会をします

「ファミレスならゲームセンターの近くにもありませんでした?」

「ほら、もうすぐ放課後になるでしょう? 私、病気で入院している設定になっているから生徒に見られるとまずいのよ。一応変装道具は持っているけど、宇月さんと久我君もいるしそこからバレてしまう可能性も無きにしも非ずなのよ」

「人気者の御堂さんはともかく、陰キャの私や久我さんじゃあクラスメイトに見られたって気づかれないと思いますけどね」


 ゲームセンターを出た僕達は電車に乗って数駅程先へ向かい、学校の生徒はまず来ないであろうファミレスへ足を運ぶ。テスト前に学生が勉強会をするなんて光景は珍しくも無いが、男一人に女二人という状況は周囲からすれば色々と勘ぐってしまうものなのだろう、


『修羅場かしら』

『きっと二股ね。まあ間違いなくあっちの綺麗な金髪を取るでしょうね』


 店員が僕達を見てひそひそと話をしている。もっとも、今は時間的に学生はまだ学校で勉強中で人がいないので、ひそひそ話が丸聞こえなのだが。修羅場でも何でもないのだが、綺麗じゃない方扱いされた宇月さんが若干ショックを受けている気がする。


「私はミートドリアとモンブランパフェとグレープシャーベットで」

「それじゃあ私はチーズハンバーグセットとカプレーゼにします」

「まだ夕飯には速くない?」

「どうせ数時間居座るんだし。引きこもってるとね、時間間隔おかしくなるのよ」

「不登校あるあるですね。おかげで深夜にご飯食べたりして体重が……」


 まだおやつの時間ですらないのだが、がっつりと夕飯を注文する二人。帰って親の作ったご飯を食べるつもりだったが二人に合わせて速めの夕飯を注文し、親に今日は遅くなるからご飯はいらないとメールを送る。


「……」

「……」

「……」


 その後料理が運ばれて来て3人での食事がスタートしたのだが、全く話が弾まない。御堂さんは宇月さんの方を見てはどんな話をすればいいのか悩んでいるし、宇月さんは完全に会話を諦めてスマホを見ながら食事をしている。二人と何回か会っている僕も、二人とも参加できるような話題が考え付かず、気まずい空気の中食事が進み、修羅場だと思っている店員さんのこそこそ話の格好の餌食となってしまう。


「ファミレスの料理もなかなかいいものね。それじゃあごちそうさま」

「ごちになります」

「しょうがないな……じゃないよ! 何帰ろうとしてるのさ、勉強会しようって言ったのは御堂さんでしょ?」


 この後繰り広げられる無言の気まずい勉強会を想像して耐えられなくなったのか、食事を済ませると勝手に僕に伝票を押し付けて帰ろうとする二人。それはあんまりだと珍しく声を荒げて二人を睨みつけ、店員を呼んでグラス以外のお皿を片づけさせる。


「わかったわよ……えーと、宇月さん? 去年の成績はどのくらい?」

「ちゅ、中の下です」

「200人170位だよ」

「200人170位は中の下なんです!」


 机に教科書とノートを並べながら宇月さんの成績を把握しようとする御堂さん。宇月さんがこんな時に見栄を張るので訂正してやると、物凄い勢いで睨まれてしまった。


「下の中ね。どの科目が苦手なの?」

「全部ですよ!」

「威張るところじゃないよ」


 無情にも下の中と言い放つ御堂さんも睨みつけながら、ほとんど書かれていないノートを広げる宇月さん。この二人を仲良くさせることでお互いの学校復帰にプラスに働かせるという目的も僕にはあったので二人の勉強風景を眺めていたのだが、


「で、ここはこの公式を使えば簡単に解けるわ」

「……?」

「数学の証明の問題は途中をきちんと書いていないと減点を食らうからオススメの記述方法としては……」

「……?」

「聞いてるの?」


 二人の学力に差がありすぎるからか、センスがありすぎるからか、普段から友達付き合いしている人もそれなりに成績優秀な人達なために宇月さんのような人に勉強を教える能力が養われていないのか、進捗は芳しくない。


「えと、久我さん……この問題なんですけど……」

「ああ、これ? これは絵で説明するよ。この三角形のこの部分がね……」

「ああ、そういうことだったんですね。ありがとうございます。それとここなんですけど……」


 自然と宇月さんは自分に聞くようになり、蚊帳の外となってしまった御堂さんが不機嫌そうに追加のグレープシャーベットを頼んでシャクシャクと僕達の勉強風景を眺める。


「私は帰ろうかしら。二人の邪魔をしても悪いし」

「え、いてくださいよ御堂さん。このまま二人でこんなところで勉強してたら勘違いされちゃいますよ」

「勘違いされても貴女は構わないんじゃない? 私と勉強している時より楽しそうだし」

「別にそんなんじゃ……」


 自分から勉強会を発案しておいて帰ろうとする御堂さん。修羅場のようになってしまったが、御堂さんは学年主席の自分を差し置いて宇月さんが僕に聞いているのが気に食わないし、自分の教える能力が低いことを認めたくないから宇月さんが僕に恋愛感情を持っているから聞いているに違いないと思っているのだろう。


「別に御堂さんの教え方が悪いわけじゃないよ。僕は宇月さんの相手を何度もしているから能力を把握してるってだけ。ほら、この問題なんて僕もさっぱりわからないよ。どうすればいいのさ御堂さん」

「仕方ないわね、見せなさい……ここはバルキスの定理を使えばいいのよ」


 御堂さんをおだてながら、御堂さんの解説を聞いてあたまにハテナを浮かべる宇月さんのフォローをさりげなく行う。さながら二股がバレたけどどうにかして両方の関係を保とうと必死に悪あがきをしているダメ男だ。


「ふぅ、疲れたわね……気分転換しましょ。ガールズトークよガールズトーク」

「いいですね、ガールズトーク。今期何見てますか?」

「?」

「……あ、はい。何でもないです」


 勉強が進んでいるのか進んでいないのかはわからないが時間は進み、一般客や他の学校のファミレス勉強会組もやってきて女二人に男一人という状況に居心地の悪さを感じたり周囲の視線を気にしたりする中、御堂さんはガールズトークを宣言し、宇月さんは早速アニメは何を見ているかなんて意図すら伝わらない質問をして自爆してしまう。


「御堂さんはゲームとかはするんですか?」

「今まではしてなかったけれど、学校に行かなくなってからゲームセンターに行ったりスマホゲーをやってみたりしているわ。格闘ゲームにメダルゲーム、UFOキャッチャー……馬を育てるのも楽しいわね」

「うう、見事にジャンルが違います……私はゲームセンターとか全然行ったことないんですよ、ゲームセンターに行くような活発な友達いなかったし一人じゃ行けないから……」


 その後も二人の会話を黙って聞いていたが、当然と言えば当然かどうにも噛み合わない。タイプの違う人間は案外合うのではと淡い期待を持っていたのだが現実は厳しいなあなんて考えていると、


「うーん、共通の話題……そうだわ、こいつの愚痴なんてどうかしら」

「それならいくらでも話せます!」

「やめてよ……」


 何故か自分に対する不満を言い合う場となってしまい、僕の存在を完全に無視したかのように話が盛り上がってしまう。トイレにでも逃げるべきなのか、逃げずに自分への不満を受け止めるべきなのか悩み続けたせいで結局二人の話の内容も頭に入って来ずに、学生はもう帰らないといけない時間になってしまった。


「あら、もうこんな時間。といっても私達は私服だし、何より不登校だからずっと居座っても問題ないわね」

「確かに。夜になってテンションも上がってきました。今なら勉強しまくれる気がします」

「問題ありありだよ。僕は普通に明日学校だし、私服だろうと見た目的に深夜までいたら追い出されたり補導されるから。二人とも仲良くなったみたいだし、宇月さんも基礎の部分はある程度学べただろう? 僕はもう帰るから、二人も補導されないうちに帰りなよ」


 1時間近く自分の愚痴で盛り上がったおかげで仲は深まったらしくアドレス交換をする二人を眺めながら、この調子なら二人が学校に復帰する日は遠くないだろうと伝票を持ってレジに向かい、お金が足りないので割り勘にしようと戻って来てお願いするという若干情けない姿を見せるのだった。


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