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女の子を救うためにクイズゲームをします

 宇月さんの家を出てから御堂さんの待つゲームセンターへいく途中にインターネットで動画配信者のあれこれを調べる。成功者は巨万の富を得る一方で底辺配信者は毎日のように動画をアップしても1日に3桁も視聴者がつかない。成功するために過激な動画を作る人も続出し各地に迷惑をか売るけることもしばしば。おかしな方向にいかないように注意深く彼女の動画を監視しておかねばならないと、彼女が作ったチャンネルを登録する。


「御堂さんも動画作り始めたらどうしよう……宇月さんに比べると人気が出そうな分、冗長して変な方向に行くかも……ああ、でも親とかにバレるのを嫌ってるから大丈夫かな」


 二人がネットの玩具にならないように気を配りながらゲームセンターに到着し彼女を探す。クレーンゲームのコーナーにも、メダルゲームのコーナーにも見当たらずにうろうろすることしばらく、音ゲーの順番待ちをする人のための椅子に座って本を読んでいる彼女を見つけた。


「やあ御堂さん。音ゲー?」

「いや、もうすぐ中間テストだし、そろそろ勉強する時間を増やさないとね」

「じゃあ家に帰って勉強すればいいじゃない……」

「貴方が寂しがると思って」

「クラスメイトも寂しがってるから中間テストを機に学校に復帰してよ……前にも言ったけどもう一人の頭が残念な方を重点的にどうにかしないといけないんだから」


 学校に復帰してよ、という僕のお願いを華麗に無視し、参考書をカバンに仕舞った彼女は店内をぶらつき立ち止まる。その視線の先にはクイズゲームの筐体があった。


「私は何だかんだ言って真面目な学生。中間テストが近づいてくるとそわそわしちゃってとてもじゃないけど遊べないわ。けれどもクイズゲームなら遊べるし勉強もできる。素晴らしい発明ね」

「クイズゲームの問題が学校のテストに役立つことはないと思うけど……」


 僕の疑問を華麗に無視して筐体に座り、隣に僕を座らせて100円を投入する彼女。全国のユーザーとクイズでバトルするモード、協力してモンスターを倒すモード、一人で黙々と特定のジャンルのクイズをするモード等色々な遊び方があるようだ。メインのモードらしい他ユーザーとの対戦モードを選ぼうとした彼女だったが、ハッとしたようにその手が止まる。


「考えたのだけど、平日の昼間にゲーセンに来るのなんて、老人か年中夏休みのゴミクズよね」

「自分を卑下するのはよくないよ」

「そして老人は大抵パチンコやメダルゲームとかで遊んでいるから、必然的にこの時間帯にクイズゲームを遊んでいるのはゴミクズということになるわ」

「自分を卑下するのはよくないよ」

「ゲームでしか粋がれない、内弁慶ならぬゲームセンター弁慶達は、その豊富な時間を武器に毎日のようにゲームセンターに入り浸り廃人と化していることでしょう」

「自分を卑下するのはよくないよ」

「そんな連中に私達は勝てるかしら? ……いえ、そういうゴミクズ達を倒してチャットとかで煽るのが楽しいのよね!?」


 勝手に悩んで勝手に自己解決して他ユーザーとの対戦モードを選ぶ彼女。予習として化学のクイズをしながらどんなゴミクズと会えるのかしらと邪悪そうにマッチング結果を楽しみにしていた彼女だったが、しばらくして表示されたのは対戦相手は自分以外全員CPUという虚しい画面。


「……このゲーム不人気なのかしら?」

「どうもプレイヤーの成績に応じてランクマッチするタイプみたいだね。この時間帯に遊ぶ人で初心者なんてほとんどいないから、必然的にCPUとばかり当たっちゃったんだね」

「上等よ。たくさん遊んで上位ランクに食い込んでやるわ」


 筐体に設置されていたマニュアルを読みながらゲームの仕様を解説すると、彼女は燃えて来たのか財布を手に両替機へと向かっていき、大量の100円玉と共に戻ってくる。この分なら僕がお金を出す必要は無さそうだと一安心。最大16人のプレイヤーが予選で4人ずつ削られていき、最終的に4人で決勝戦をやるシステムのようだ。


『アンモニアを収集する際の方法と言えば?』

「馬鹿にしないで。下方置換よ!」

「か……ほうちか……」

「ほら、もっと早くタイピングする!」

「んはそっち側にあるんだよ……」


 問題に答える彼女と、実際に入力をする自分。彼女が右側、僕が左側に座っている関係上、『あ』とか『か』は押しやすいのだが後半の文字は身を乗り出さないと押すことができない。CPU相手で真面目にやらなくても勝てるからか彼女はさっぱり手伝ってくれず、無理な体勢で文字を押しながら気分はクイズゲームではなくツイスターゲームとなっていた。


『魔法少女ミラクルクールの本名と言えば?』

「わかるわけないでしょ……」

「久留見怜子だね」

「即答? 引くわ……」


 やがて問題のジャンルがアニメやゲームとなってしまい、お手上げ状態の彼女を後目に宇月さんに散々この辺の話をさせられていた自分はすらすらと答えてしまう。こんなところで宇月さんが役に立つとは。


『超変形スターカイザーの武器と言えば?』

「問題が偏り過ぎなのよ! もっと一般常識とか出しなさい!」

「薙刀だね」

「即答? 引くわ……」


 ロボットアニメの問題も出てくるが、丁度それは保崎さんの代わりに作っているプラモデルの対象であった。こんなところで保崎さんが役に立つとは。その後も何だかんだ言って二人の知識で協力しながらプレイを続け、ついに他人とランクマッチするようになったのだが、


「ちょっと! このままじゃ予選一回落ちじゃないの! もっと早くタイピングしなさい!」

「だから右側は御堂さんが押さないと遅いんだって……というか遊んでいるうちに右半分左半分どころか7:3くらいで御堂さんが座ってるせいで余計押しづらいんだよ。もう僕が全部押すから御堂さんは後ろで答えだけ喋っててよ」

「誰の金で遊んでると思ってるのよ!」


 二人のチームワークは壊滅的で決勝戦に行くどころか初戦敗退を繰り返し、湯水のように100円玉が消滅していく。別に他のプレイヤーに煽られたりはしていないのに彼女は勝手に画面の向こうにはニートがいて私達を笑っているなど危険な事を言い始めたので頭を冷やそうよとグレープシャーベットを手渡す。近くに椅子に座って不機嫌そうにシャクシャクしている彼女を後目に、大学生と思わしき暇そうなカップルが筐体に座る。


「今日はどうする~?」

「お、新しい検定が登場してるですな!? 80年代検定……ちょっと我々の年とは合いませんな?」

「え~でも私よく昔の動画とか見てるから詳しいかも~」


 自分達の視線なんて全く気にせずに二人の世界に入りながら、キャッキャウフフとクイズゲームを楽しんでいる二人。こっそり二人のプレイを覗き込むが、得意というわけでもないのか得点は芳しくない。それでも二人はお互いの知識を褒めたたえ合い、数プレイして満足そうに去って行った。


「御堂さん。クイズゲームはああやって遊ぶものなんだよ。全ての問題を丸暗記したり画面の向こうの相手をニート認定して張り合ったりしている時点で人生の敗北者なんだ。そしてこのクイズゲームに出てくる問題は芸能だったりアニメだったりテストに関係無い問題ばかり。一石二鳥とは行かないんだよ」

「私に説教するなら中間テストで私を超えて見せることね。いいわ、中間テストもクイズゲームも1位を獲ってやろうじゃないの。その辺の人間が協力プレイしたところで私には勝てないということを教えてあげるわ!」


 幸せそうなカップルのプレイを見て闘争心に火がついてしまったらしく、知り合いにバレないためのサングラスや帽子を着用して席のど真ん中に座り一人でクイズゲームを遊び始める彼女。きっと一週間遊び続けて、来週にはかつて自分が笑っていた廃人一歩手前まで行くんだろうなぁと、どうやって来週彼女が一歩を踏み出さないようにしようかと考えながら帰路につくのだった。



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