女の子を救うために説明をします
「不登校の説得ですか?」
高校二年生になって少し経ったある日の昼休憩、じゃんけんに負けて学級委員になった僕こと久我倫也は中年の担任教師に呼び出される。
「クラスの宇月さんと御堂さん、高校二年になってから学校に来なくなってね……おっさんが説得しに行っても効果は薄いだろうし、ここは同年代の力が必要なんだ」
「二人とも女子ですよね? なら僕が行くより保崎さんが行った方がいいと思いますけど。僕と違って彼女は立候補してますし」
不登校。小中高と今までは自分のクラスにそういった存在はいなかったが、そういうのがいることは理解していた。年頃の女の子が不登校になるのには色んな理由があるのだろう、それを40代の男の担任が理解して解決できるなんて、自分も担任も思っていない。なら生徒に任せようというのは自然な判断だ。けれども僕だって同年代の女の子の悩みを解決できるほど日頃から交友関係が広いわけではない。もう1人の学級委員である保崎さんは活発な人だし、交友関係も広い。彼女の方が適任なはずだと至極当然な理論を述べる僕に、担任はバツの悪そうな表情をする。
「あー、それなんだけどね、実は既に失敗してて……とりあえず明日、二人に会いに行ってくれないかな。学校は公欠ってことにしておくから。詳しいことは、保崎さんに聞いてね」
そういえば保崎さんは先週休んでいた。既に二人の不登校を説得するために会いに行って、失敗したということか。教室に戻り、僕の机を椅子にして友達とゲラゲラお喋りをしている保崎さんに声をかける。
「保崎さん」
「あ? 学級委員の仕事? 悪いけどウチは放課後友達と遊ぶ約束してっからパスで」
「そうじゃなくて、不登校の件で話があるんだけど」
「……あ~、そっちか。わかったわかった、放課後話してやるよ。つうわけで悪い、ウチちょっと遅れるわ」
もう一人の学級委員である保崎さんはいかにもといったギャル系の女の子で、学級委員に立候補したのも内申点目的らしくあまり仕事をしてくれない。放課後、彼女はターゲットであろう二枚の顔写真を僕に寄越した。
「こっちの根暗。こいつは友達が出来なくて引きこもったタイプみたいだから、まぁ友達になってやるか紹介してやればいいんじゃねえの? ウチとは相性がさっぱり合わなくて、口論になって出禁になっちまったけど、まぁアンタなら話くらいはしてくれるだろ」
「んで、こっちの真面目そうなの。成績優秀で二年になったら生徒会に入るものと誰もが思ってたらしいが、何故かグレちまったみたいで平日の昼間っからゲーセンに入り浸ったりしてる。ウチとは話が合いそうだったから優等生なんて辞めて友達になろうぜと言ったんだけど、一匹狼なのか拒否されちまったよ」
ターゲットの情報や、親御さんとの連絡手段を伝えてくる、普段に比べると随分と仕事をしている彼女。頼んだぜーと去っていく彼女を見送りながら、まずは彼女に根暗扱いされた一人目の少女をどう説得しようかと頑張って作戦を考えるのであった。