五話 魔界でシェアハウス
ブゴス・インは魔界の国「ヘカトンケイル」にある古びた宿屋だ。ブゴス・インの店主、ブゴスは無類のゴブウィスキー好きという事で知られていた。
ローチがブゴスに渡したのは100年物のゴブウィスキー。ブゴスによると100年以上経ったゴブウィスキーは抜群に上手いという事だ。それ故に価値が高く、今ではほとんど手に入らない。
しかし、100年物のゴブウィスキーを渡せば2人だけで暮らせるというローチの思惑は、一人のボーンマンによって斜め上の展開へと進んだ。
そのボーンマンの名「ボンテッド」
二つ名は「おしゃべり骸骨」
ボンテッドの説得に、心を打たれたルナンは
「ボンテッドがいても構わない」
と言ってしまったのだ。
これより、
ルナン・ローチ・ボンテッド・ブゴスの共同生活が始まる!
五話 魔界でシェアハウス
「はぁ〜…」
ローチがため息を吐いた。すかさずフォローするのはボンテッドだ。
「どうしたんだいローチちゃん…俺様で良ければ相談に乗るぜ?」
「それなら今すぐこの宿から出て行ってください。悩みが解決します」
「ガビーン!俺様ショック!ねぇヒビ入ってな
い!?傷ついてヒビ入ってないかな!?俺の…」
ボンテッドは立ち上がり、着ていた服をずらした。
「ボディ…」
「ふふ…」
「何笑ってんの」
ルナンが笑うとローチに睨まれた。
「だって面白いから、ふふ」
「ローチちゃん、見て見て」
ボンテッドはローチの肩を叩いた。
「何よ…」
ローチが振り返ると、ボンテッドが顔芸をしていた。それも骨が曲がらない方向にまで曲がるくらいに。
「あははは!!!」
それを見て腹を抱えて笑うルナン。
「バカじゃないの……ふ」
「あー!今ローチちゃん笑ったー!」
「笑いましたねボンテッドさん!」
「笑ってないよ…」
「笑った!笑った!笑った!笑った!」
肩を組んで踊り出すルナンとボンテッド。「そんなに笑わせたかったの?」踊る2人を見てローチは不思議に思った。
「ふっふっふ、ところで」
ブゴスが100年物のゴブウィスキーを注ぎながら話し始めた。
「なんだって魔人と鬼人がつるんでんだ?」
「お、それは俺様も思ってたぜ!珍しい組み合わせだな〜てよ!」
ボンテッドの言葉の後、一瞬時が止まった気がした。
「私が、ルナンを気に入ったから」
ローチがそう話した。
「なるほどなぁ」
「ふっ、やるじゃねぇか坊主」
ボンテッドとブゴスがルナンを見つめた。当の本人は?という表情をしていた。その後も4匹は雑談を続けたのだった。
そしてボンテッドが眠りにつきブゴス・インに静寂が訪れた。ローチも自分の部屋を決めて眠ったようだ。ルナンも眠ろうとすると、ブゴスに声をかけられた。
「ちょっと来い」
ブゴスに連れられて、ルナンは外に出た。「まさか自分の正体がバレたのか」そんなルナンの思いは杞憂に終わる。
「あの嬢ちゃんには聞かれたくなかったからな」
「ローチに?」
「あぁ、こんな事言いたくないんだがよ」
ブゴスは息を吐いた。
「気をつけな。魔人が鬼人を好むなんて聞いたことがねぇ、何かあるぜ」
ブゴスはそれだけ言って宿に戻っていった。
たしかにローチは人間の自分を、襲う事無く助けてくれた。その理由は全く分からない。自分を助けて何か利益があるのか?ルナンは宿の前で考えたが答えは分からないままだった。
その日は眠気に逆らえず、宿に戻り眠りについた。