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ルナンの魔界生活記録  作者: アフ ロウ
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二話 紫の瞳

今から300年前、天界・地上界・魔界は突如融合。戦いが続く中、天界の天使と地上界の人間は手を結ぶ。天使の加護を受けた人間は1日限定で死ぬ事が無くなり、少しずつ魔界の住民を追い詰めていくのだった。天使と人間の間に産まれた子、サンは始めての魔物狩に参加していた。






「おらぁ!」


サンの父親、ドラゲンが魔物に向かって斬りかかる。魔物は苦しそうに断末魔をあげて倒れた。


「どうだサン!お父さんかっこいいだろ!」


「うん!さすがお父さんだ!」


「へへっ、まだまだいくぜぇ!」


ドラゲンは息子の応援に喜び、バッタバッタと魔物を倒していく。サンは父親の勇敢な姿を、キラキラとした瞳で見つめていた。


「おーいドラゲン!向こうでかなり強い魔物が出たそうだ!」


「分かった!すぐ行くぜ!…サン、一人でも大丈夫か?」


「うん!いってらっしゃい、お父さん!」


「おう、すぐ戻ってくるぜ」


そう言うと、ドラゲンは人とは思えぬスピードで走って行った。サンは自分の父親が頼りにされている事を誇らしく思った。サンが今いる場所は世界地図で見ると東側、魔界の住民の陣地だ。橋の下には、ゴルディ川という小さな川が流れていた。


「やっほ!サン、またあったね!」


サンが振り返ると、ドルミラン王国で出会った少女アイリスがいた。


「アイリス!」


「サンはもう魔物倒した?私は3匹も倒しちゃった!」


「はは…僕はまだ1匹も」


「そうなの?うーんと…」


アイリスは辺りを見渡した。


「あ、あの魔物なんかいいんじゃない?」


アイリスは橋のそばにいる小さな魔物を見つけてそう言った。魔物には長い耳が生えている小動物で、ウサギの様な見た目をしていた。


「えー…橋から落ちるかもしれないし」


「落ちて死んじゃっても天使の加護があるから大丈夫だって!」


「う、うん」


サンは剣を手に取った。サンは、ウサギの様な魔物が自らの持つ剣を見て怯えている様に見えた。


「あれは魔物…あれは魔物…」


自分に言い聞かせながら、サンはウサギとの距離をジリジリと詰めていく。お父さんからは始めて魔物を倒すと、次からは躊躇なく倒せると言われていた。つまり始めて魔物を殺す時が、一番罪悪感を伴うのだ。


「こいつを、殺せば…」


サンと魔物の距離が剣を振れば届く距離にまで縮まった。魔物は倒れて涙目になっている。


「こいつは魔物…殺さないと…」


魔物は目を瞑り頭を抱えている。


「頑張って!サン!」


アイリスの声で頭が真っ白になった。


「ごめん!」


サンは目を瞑り魔物に剣を突き刺した。

目を開けると剣の先には倒れた魔物が…


いなかった。


代わりに自分の肩を激痛が襲う。魔物が最後の力を振り絞り反撃に転じたのだ。肩を噛みつかれながら魔物を離そうと掴む。しかし自分の命がかかっている魔物は簡単には離さない。サンの体から血が吹き出した。


「ぐっ!」


「サン!」


アイリスが魔法の詠唱を始める。詠唱はすぐに終わり魔物に狙いを定める。


「嬢ちゃん!それは…!」


近くにいた人間の詠唱を止めようとする声が届く前に、アイリスは魔法を放った。


「ピギャアアア!」


魔法は見事に命中し、魔物は血を流して川へと落ちた。


「え?」


サンはアイリスの放った魔法でバランスを崩した。そしてそのまま川へと体が投げ出される。


「うわあああ!!!」


サンは勢いよく川に落下していくのだった。






二話 紫の瞳







「う、うーん…」


サンは砂利だらけの川沿いで目を覚ました。


「死んだ、訳じゃないのか…」


辺りを見渡すと、自分が流れてきた川と見たことのない草花や木が見えた。


「ここは…どこだろう」


岩にぶつかったのだろう、体中に打撲ができていた。


「助けを呼ばなきゃ…」


サンは体を起こし、ふらふらと草木が生い茂る森に向かって歩き出した。

半日ほど歩いているとお腹が空き、喉も乾いてきた。


「食べ物…水…」


サンは歩きながら食料と水を探した。自分が倒れていた川に行くにしても場所が分からない。ふらふらと歩き続けると木の上に実った果実を見つけた。


「食べ物…!」


サンは無我夢中で人生初の木登りをして、果実の元まで辿り着いた。果実をもぎ取りまじまじと見つめる。


「見たことない果実だ、毒があったらどうしよう…」


食欲が失せるほど、怪しい模様の果実。


「いやいや、ここで食べないと…」


ここで食べないと生きられない。


「いただきます…」


サンは果実をかじった。


「おいしい…」


この果実、見た目に反してとても美味しい。甘味が強くて食感もシャリッとしている。

サンはまだまだ実っている果実を次々に食べていった。


「ふぅ〜!お腹いっぱいで水分補給にもなって最高〜!」


木の上で転がりお腹をさすった。木の間から見える夜空を眺めていると、いつの間にか涙が滲み出てきていた。


「なんでこんな…一人で…」


これまで無理やり考えてこなかった感情が溢れ出した。


「怖いし寂しいよぉ…」


一度涙が溢れるともう止まらない。サンは夜の月に照らされながら号泣した。


「誰かいるの?」


木の下から声をかけられた。

慌てて涙を拭くサン。木の上からソーっと覗いてみると紫の綺麗な瞳をした少女がこちらを見つめていた。








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