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9、ユーリの能力


「誰やろあの人?」


「知らん、とにかくあいつの傍には行きたくない。うるさ過ぎて具合が悪くなってきた。」


指の全てに大きな宝石のついた指輪をしてちょび髭を生やしたいかにも成金風な男が王と話している。王はいつもと変わらずにこやかにお茶をすすめ、私達に気が付いて、


「さあユーリ、真由こっちにきて挨拶しなさい。」


と私達に言った後、王付きの執事が急用ですと呼び、近くだが声は聞こえない所まで行ってしまった。


「やあやあ可愛いお似合いの2人だね。私はビーアという者です。」


「うっ。」


急にユーリが横で吐きそうなのか口を手で覆う。私は咄嗟にユーリの背中をさする。


「おや大丈夫ですか?王子?」


その男が近付いて来ると余計にユーリに顔色が悪くなる。王は執事と話をしていて気が付いていない。


「本当に申し訳ありませんビーア様。王子は少し具合が悪いようでして大変失礼なのは承知ですが挨拶をせずに下がらせていただきますね。」


「ええ仕方ありませんよ!お大事に。」


「優しいお言葉ありがとうございます。お時間をとらせてしまって申し訳ありませんでした。それでは失礼致します。」


深く頭を下げてユーリに肩をかして部屋に戻った。ユーリはあの人から離れると段々と顔色が戻って1人で歩けるようになった。とりあえずユーリの部屋に連れて行きあのいつもの椅子に座らせ私はお茶を入れた。


「大丈夫?」


ティーカップをユーリの前に置き声をかける。まだ少し青ざめているが吐き気は治まったようだ。


「ああ…本当に…すまない。あいつの対応をさせてしまった事もあわせて礼を言う。ありがとう。」


何故か落ち込んでいるので励ますように言う。


「体調悪かったんやろ?別に落ち込まなくても。」


「……の…俺の能力が原因なんだ。こんな、こんな能力のせいで!俺はきっと一生まともに人と接する事ができないんだ!」


叫び暴れ始めた。机の上の物を全て落としティーカップを割り机を蹴り椅子を蹴り飛ばしインク入れを投げ床の絨毯を真っ黒にしてそのまま床に座り込み泣き始めた。


「もう、もうどうでもいい。王とか王家とかどうでも。1人になりたい。誰とも関わらなくて済むような場所で1人で生きていきたい。」


私も同じように床に座り込みユーリの目線に合わせて話す。


「ほんまに?全て捨てて?」


「全て捨てて……そうだなそうしたい。もう辛い。人の悪意に触れるのも人の本心も見たくない。」


「ユーリ私の傍に居るっていうのは忘れた?」


「……お前は…俺と居たって仕方ないだろう。俺が全てを捨てて王子という身分も捨てたら俺に価値はない。」


「ううんそんな事ない。ユーリは優しいし良い奴やし私がここに来た事を気遣ってくれたし…じゃあ!王子じゃなくなっても傍に居る事を許す!」


と急な命令口調が面白かったのか吹き出し笑い始めた。


「ふっははは。真由は本当に馬鹿だなぁ。俺もお前が傍に居る事を許すよ。」


「ふふふっ。」


「…俺の能力は人の心の声が聞こえるんだ。相手がどう思っているのかすぐに分かるし、想像した事とか鮮明にそのまま見える。それであいつ想像したんだ…俺と…お前に…触って…本当に気持ち悪い。」


「うわぁあの人……気を付けよ。」


「前も言ったがお前の声は聞こえない。だから楽だ。」


「そっか……ねえ私、裏表がないだけじゃないよね?それやったらはずいねんけど。私に能力とかなくて単純なだけとかじゃないよね?」


「えっそんな筈は……。ちょっと今何か考えてみてくれ。」


「分かった。」


ワンちゃん可愛い!ワンちゃん可愛い!


「いや分からないな。静かだ。」


「そっかちなみにワンちゃん可愛いって思ってた。」


「なんだそれは。ははっ本当にふふふっ。」


ユーリは本当に優しい笑い方だなぁ。これを皆に見せればいいんだけど、会話よりも先に色々聞こえると確かに辛いよなぁ。こんな子供なのに。大変な人生やなぁ。


「ねえ私が前に街で能力に話しかけた時、あの時は聞こえなくなったの?」


「ああ、静かだった。もしかしたら転移者は能力が効かないと分かっていたから王は真由を俺の婚約者にしたのかもな。あんな事ができるとは思わなかったが。」


「ふむふむ。」


でもユーリは私を婚約者としてではなくて親友として見てくれているし、それならもっと賢くて可愛くて素直な女性と結婚して幸せになって欲しいと思う。


「現実逃避をしても仕方ないどうにか能力を抑えていかないと。」


「じゃあ一緒に鍛錬しましょう。剣と一緒、毎日一緒に。どうにか能力を自由自在に使えるようになれれば!」


ユーリはもう少し生きやすくなるはず。


「鍛錬?」


「ええ。最初は私が能力を封じ込める。その感覚を掴んで自分でもできるように。」


「……分かった。よろしく頼む。」


「うん頑張ろ。」


それから剣の鍛錬と合わせて能力の鍛錬も毎朝行い始めた。



「そんな事言ってたら学校に入る時困っちゃうよ真由。」


「いいの私、騎士コースに進むから。」


「良いんじゃないかお前は体力馬鹿だから。」


「お前また落とされたいか?」


「やめろ馬鹿。」


「ふふふっ王子は法律・政治コースですか?」


「まあ多分そうだな。だが学校は15からだろゆっくり決めるよ。」


「あっという間ですよきっと。」


「お前が言うならそうかもな。」


「ええ。」


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