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8、誕生日おめでとう


「今日の主役がこんなとこで何をしてるの?」


私がボールルームから外に出て庭で休んでいるとピートが後ろから話しかけてくれる。わざわざ見えにくい場所まで出てきたのでピートは少し探してくれたんだと思う。優しいなぁ。


「ふふ今日の主役はユーリでしょ。私は添え物。」


そう今日はユーリの誕生日会だ。盛大なパーティーで親族だけを呼んでいるらしいが100人以上は居る。やっぱり次期王に顔を売りたいようで色んな人を連れてくるようだ。最初は社交ダンス?で始まり王のお話の後、乾杯してユーリは今プレゼントを受け取る時間とは名ばかりの媚びを売って王子に気に入られようタイムに付き合っている。


「そんな悲しい事言わずにさ……あのコレ。誕生日おめでとう。」


と薔薇の花束とリボンがついた小さな箱をくれた。


「ありがとう綺麗な花束と箱、嬉しい!」


「いや開けて。箱じゃないから。」


「ふふごめんごめん。」


一度花束は持ってもらってゆっくりとリボンをほどき箱を開けると中はピアスだった。燃える炎のような力強い赤い石のピアスだ。


「…本当はね6歳の誕生日で魔除けの為にピアスの穴を開けて両親にピアスを選んでもらって祈りを込めてもらう。それをお守りとして肌身離さず付けておくんだけど、転移者は別にしないんだってこの国の人間じゃないからって。だけどなんだかそれって寂しいなって思って……。君が嫌じゃなかったらあけてあげてもいい?痛くしないから。」


そういえばユーリは今日、私と会う前から昨日にはなかったピアスがついていた。深く濃い青の石のピアス。何も言わなかったけどそんな言い伝えがあったんだ。ピートはわざわざそれを私に。それに寂しいって…。


「うんじゃあお願いしようかな。」


私はゆっくりと髪を手で束ねて持つ。ピートは慣れない手付きで薬を塗りすっと耳に何かをあてたと思うと箱からピアス取ってつけてくれた。もう片方の耳も同様に行う。


「さあ終わったよ。」


「えっ全然痛くなかった!昔した時は痛かった気が。」


「この国ではこうやって子供にするから痛くないように開発されてるんだよ。」


ピートも耳を見せてくれる。ピートのピアスも私と同じ赤い石だった。


「お揃いやね。」


ピートは私の指摘に慌てて言う。


「ごめんね!石の色は家系によって決まってて買う時も自分の家系の色しか買えないんだ!だから僕はその赤しか買えなかったんだ。」


少しシュンとしてしまったので励ますように言う。


「すっごく嬉しい!ありがとう!大事にする。赤好きやし。」


「僕の家はこの燃えるような力強く透き通る赤だけど、赤にも種類がたくさんあって少し他の色が混ざってるとか濁っているとか光るとか色々あって、わざわざリストが作られてるくらいなんだよ。」


「じゃあこれをつけてたらピートの家の子やと思われるね。」


「ふふそうだね。まあ君は髪で隠れるしそんなに目立たないよ。でも僕がしっかり祈ったからちゃんとお守りとしてきっと真由を守ってくれる。」


「うんありがとうピート。」


「さあじゃあ中に戻る?そろそろケーキを食べるよ!」


「じゃあ一緒に戻ろ。」


私は花束を抱いて中に戻った。その後もユーリはずっと色んな人に挨拶していたので私はピートと一緒にケーキを食べてパフェを食べてパーティーを楽しんだ。




「はあーパフェ美味しかったなぁ。」


全てが終わりピートが私の部屋まで送ってくれて私は部屋にあるお風呂に入り早々とベッドにもぐった。


「いやぁでも城ってすごいなぁ。人も沢山いるし料理も美味しいしケーキも大きいし。」


誕生日会かぁ。昔は両親が私の好物ばっかり作ってくれて小さいケーキだったけど嬉しかったなぁ。プレゼントはいつも一緒にデパートへ買いに行って、その帰りに外食する。贅沢だったなぁ。

でもその両親も亡くなってそんな時に彼に会って。誕生日はいつも1人でケーキを買って食べたなぁ。でもそういうのが彼をイラつかせたのかも。素直に祝って欲しいと言えばよかった。彼に私の誕生日を伝えて一緒に居て欲しいって言えばよかったのかなぁ。


「でも少しでも幻滅するのが嫌だったんだよなぁ。」


扉をノックをする音が聞こえた。ベッドからノロノロと降りて扉を開けるとそこに居たのはユーリだった。


「夜遅くにすまないな入らせてもらうぞ。」


ズカズカと入ってくる。ベッドの近くの椅子に座ったので私も同じように座る。


「うんどうしたの?」


「俺の願いは叶えてもらったがまだお前の願いを叶えていないから。」


「やめて!つけないで。」


机の上の蝋燭をつけようとするのを止める。


「えっ暗いじゃないか?なんだ何かあったのか?」


椅子から立ち上がりユーリが私のそばに来て床に膝をつき顔を覗き込んでくる。


「泣いているのか?どうした誰かに何か言われたか?」


「ううん。違うの大丈夫。思い出しただけ。」


「ああーまあその泣くな。忘れろ、子供なんだから嫌な事や悲しい事は全て忘れて楽しい事だけを覚えていればいい。」


頭を撫でてくれる。


「ありがとう。ねえ今日一緒に寝てくれる?」


「ああ、もう寝てしまおう。またお願い考えておけよ。」


「うん。」



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