6、ユーリとおやすみ
そして夜になりポールの目を盗んで本当にユーリの部屋に行くと面倒そうにでも拒否せずにちゃんと部屋へ入れてくれてあの社長室の奥の部屋の寝室に案内してくれた。
「お前はこっち側、俺はこっちで寝るから。怖いなら蝋燭の火はつけといてやるから。」
と大きなベッドの布団をめくってくれる。ユーリは私の分の掛布団も用意してくれていたようでキングサイズのベッドに2枚のっていた。ほんまに優しくない?最初のあれなんやったんめちゃくちゃいい子やねんけど!素直やし優しいしノリいいしなんやったん?
「ユーリってめちゃくちゃ良い奴だねありがとう。」
「普通だろって……まあ、その、すまなかったなお前の前にも婚約者の候補が居たんだが……まあ酷くてな。なんというか表裏が……。両親から色々言われてたんだと思う。」
「まあ5歳やし仕方ないんじゃない?」
「そうだがうるさい女は嫌いだ。お前は静かでいい。婚約者としては認めてはないが傍に居るのは許す。」
何かを思い出したように嫌そうな顔をして言う。
「私はうるさい方やと思うけどなぁ。まあ仲良くして。私も傍に居るのを許すわ。」
「ははは、許しを得たなありがとう。だがすまなかったな王が巻き込んでしまって。」
少し眠いのか子供らしく朗らかに笑う。
「良いって、意外と面白いしユーリは悪くないからこれに関して謝るのはもう終わり。それに前の世界には未練ないし全部失ったから。」
「……そうか。ならここを楽しんでくれ。その為なら俺も協力しよう。」
「ありがと。じゃあさ婚約者じゃなくて親友になろうぜ!」
「親友?友達か?」
「うん。ピートと3人で親友に。」
「……お前と俺はなれるだろうがピートと俺は無理だろうな。」
「なんで?」
「ピートは親の命令で俺と仲良くしてるからな。本当は俺と関わりたくないんだよ。」
俯いてしまったので表情は分からないが声は寂しそうだ。
「そうかなぁ?まあとにかく私とは遊んでね。」
「ああ、そういえばこっちの世界の事はポールに習ってるんだよな。なんとか馴染めそうか?」
「馴染むって?どこに?」
「社交界だよ。後数年もしたら社交デビューだ。」
「そっか助けてね。」
「黙ってればいいだろ。俺はそうする。お前もニコニコしてればいい。」
「分かった。そうしよ。」
「それと能力の事も知ってるのか?」
「えっ何それ?」
「あいつ割と大事な事を。」
ハアとため息をつき呆れたように説明してくれる。
「この世界の人間は何かしら1つ能力を持って生まれてくる。大抵は火を付けられるとか水を出せるとかなんだが。なるべく能力は誰にも知られないようにしてるんだ。もっと特別な能力だと利用価値が高いから他人にはなるべく言わないようにと両親や保護者に言い付けられる。」
「へーすごいね。」
「ああ、だがお前の能力は俺は分かったぞ。」
「えっ私あるん?」
「ああ。」
「なんなん?」
「多分だがその能力による干渉を一切受けないって感じだな。実際、俺の能力は全く効いていない。」
「えっすごいけど、特に私は何もできないって事よね?」
「まあそうだな。お前をいじめようと水をかけようとしたら水が出ないって感じでお前自体に何かできるようなものではないな。」
「えええええ、しょーもな。」
「まあそう言うな。さあ寝よう明日も何かするんだろ。」
「ふふん明日は絶対にパフェを食べよ3人で!」
「叶うといいな。」
「絶対無理って顔してるやん!」
「あはははまあ頑張れ、俺は寝る。おやすみ。」
と背を向けてしまったので仕方なく私も目を閉じる。
「明日もいい日になりますように。」