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5、ポール


「さあ今日は復讐だ!」


「「復讐?」」


「あいつボールの野郎毎日パフェを食わせてくれるって言うから婚約者になったのに!あーだこーだ言って全然パフェを食わせてくれねえんだ!」


昨日は結局、昼食さえなしだった。あいつー!


「えっそんな理由で婚約者になったの?」


ピートが困った顔で言う。ユーリはだるそうに、


「そんなしょうもない契約で俺の妃に?」


あの椅子に座ってやれやれというジェスチャーで言う。今日も朝からユーリの部屋に押し入るともう既にピートが居て2人で本を読んでいる最中だった。


「だから今日こそはあの球野郎に復讐してやるんだ。知ってる?あいつ幽霊が苦手らしいで。そこで思い付いたでござるよ!」


「なんだか嫌な予感がする。」


「僕も。」


「ババン!ボールを地下の牢屋まで連れて行き怖がらせて弱みを掴もう大作戦!パフパフ!」


「ああやっぱり。」


「俺は参加しないぞ。」


「いいえ参加してもらいます!良いんかなぁ昨日のクッキー盗難事件の事バラしても……。」


「バラすもなにももう知れ渡ってるだろ。」


「うん僕も怒られたよ。」


「……さあっ気を取り直して行ってみよー!」


無理やり2人の腕を掴み部屋から出た。ポールには手紙で地下の牢屋に来るようにと書き残した。勿論名無しで。


「あの牢屋もう使われてないんでしょ。だいぶ雰囲気あるよね。」


牢屋までの道中2人の間に入り腕を組んで歩く。2人は優しく腕を組んだまま歩いてくれている。


「あそこは昔は大罪人がいたんだ。そいつの霊が今も練り歩くという話を聞いた事があるな。」


平気そうなユーリ。


「ええ怖いなぁ。」


少し不安そうなピート。


「練り歩く?牢屋から脱獄したって事?」


疑問が浮かぶ私、の3人はボールが着く30分前に到着した。まず牢屋を散策しよう。


「中には何もないね。」


ピートが恐る恐る入り言う。


「うーん、私はシーツを被って声をかけるとして君達2人はどうしたものか。」


「俺はこの牢内でガタガタと音を立ててやろう。」


ユーリはやると決めればちゃんとノリがよく一緒にやってくれる。


「ナイス!ユーリ君は天才だ!」


「勿論だ王子だからな。」


「じゃあピートはぁ。」


「僕は?」


「ポールの後ろを練り歩く!見られそうになったら隠れてね。」


「分かった。じゃあ外の扉の裏に待機だね。」


そして私とユーリは牢内にピートは扉の裏に待機。


「ねえユーリ。」


「なんだ?」


「牢屋にシーツを被った子供の幽霊って正直変じゃない?」


「そうだな。言われてみれば変だな。」


「私ユーリの横で呻き声をあげるわ。」


「えっああ来たぞ。」


扉からゆっくりとボールが入ってきた。


「ポールです。僕を呼び出したのは誰ですか?」


ユーリがガタガタと音を立て始めたので、私も唸り始める。


「うぅぅぅああぁぁぁぁ。」


「えっ何?なになになになに。いやだ。出てきて!」


ポールが怯えている。すると急にひたひたと足音が聞こえ始めた。ピートやるな。


「ひえっ。ああ怖い怖い。」


そしてトドメにそっとポールの肩を叩いた。


「おい!」


「ピギャーーーーーーー!」


そしてポールは泡を吹いて倒れた。


「やったな真由。」


ユーリが少し嬉しそうに言う。そういえば昨日から何となく疑問に思っていた事を2人きりだし聞いてみる。


「おう。ねえユーリはなんでポールが嫌いなん?」


ユーリは少し目を見開き薄く笑って、


「よく気が付いたな。こいつは…俺には猫を被って嘘をつくそれがどうもな。」


「ええー私には全然。」


「ああ俺だけなんだよ。王にも王妃にも普通なのに俺には猫を被って嘘に嘘を重ねるんだ。」


「なんでなん?」


「何となく分かってるんだ。俺が怖いんだよ。」


とても悲しい笑顔で5歳とは思えない表情だった。彼は幼い頃に両親を亡くしているし私なんかが考えられない程辛い経験をしているのだろう。何となく悲しい気持ちになってユーリの手を握った。ユーリは少しビクッとした後、振りほどいたりせずにそのまま手を握り続けてくれた。やっぱり優しい子だ。


「お前は近くにいても触れても静かでいい。」


「よく分からんけど、球野郎に復讐できて良かったわ。さあ誰か呼びに行くか。」


「なら俺の執事を呼ぼう。きっと部屋にいる。」


「うん。」


扉の方に行くとピートが居たので左手でユーリ手を繋ぎ右手でピートと手を繋いで執事の部屋へ行ってポールの事を伝えた。


「私が声をかけたら寝ちゃったの!」


精一杯のぶりっ子で腹黒執事に言う。私が勝手に言ってるだけやけど、腹黒さは見た目だけやし。その執事は走ってポールを迎えに行った。執事が居なくなったのを見計らってピートが少し青ざめて言う。


「それにしてもあの唸り声怖かったよ。急に作戦変更したの?」


「うんシーツを被った子供の幽霊って牢屋には居ないかなって。」


「あーそうだね言われてみれば。」


納得という表情で頷く。少し余裕を取り戻したピートに私が言う。


「それよりピートのヒタヒタっていう足音最高だったよ!ねえユーリ。」


「ああ場を盛り上げてたな。」


「えっ僕あの唸り声が怖過ぎて扉の裏から動いてないけど。」


ピートが不思議そうに言う。


「「えっ。」」


私とユーリが顔を合わせて首を傾げる。その姿にピートは怖がらせるという仕事をしていないから私達が彼を責めていると思ったのか謝ってくれるがそれどころではない。


「ごめんね。僕怖くて動けなくてごめん。」


少し小声でユーリと話す。


「……。ユーリあの。」


「忘れろ真由これは2人だけの秘密にして忘れるんだ。」


「分かった。もう言わんとこ。」


「ああ忘れろ。」


「……今日一緒に寝てもいい?」


「ああひっそり俺の部屋に入って来い。」


「ありがとう。」


「えっ?どうして2人は青ざめてるの?怖いよやめて!」


「「あはははは。」」




「ポール何があったんだ?」


「手紙で呼び出されて急に声をかけられて。」


「そうか。真由様が声をかけたそうだぞ。王子も心配されていた。ピート様もだ。」


「そうですか王子……。本当に申し訳ありません。」


「……王子を敬うのはいいが度が過ぎると無礼だぞ。いつも言ってるだろ。」


「分かってますでも怖いんです。あの目、全てを見透かしていそうで。」


「……本当に失礼な奴だ。早く真由様の元へ戻れ。」


「はい。すみませんでした。」



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