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4、ピートの登場


「だってぇ王子が女はどうとか言い出してぇ。」


「だからっていきなり気絶させるのはなしです!」


「でも決めたんです。私を傷付けてくるような奴がいたら傷付け返すって。元彼の事で傷付いて好きだったから、めちゃくちゃ泣いて悲しんで落ちる所まで落ちてふっと脳裏をよぎったんです。ああやっぱり力こそが全てだなって。」


「おかしい!絶対におかしいぞ!元彼の悪夢を見てたような人が行きつく答えじゃない!」


「うるせえな。早くパフェ出せよ!」


「なしに決まってんだろ!王子に謝りに行かなかったら明日もなしだからな!」


とバタンと扉を閉めてポールが出て行く。


「パフェ……。パフェ……。」


私は泣きながらベッドに入った。



そしてポールがパフェをチラつかせるので朝1番に1人で王子の部屋に謝りに出かけた。


「頼もー。」


と勝手に扉を開けた。いた王子だ。またあの椅子に座って本を読んでいる。隣に腹黒執事はいなかった。黒い髪に天使の輪ができている。キューティクルがすごいんだね。王子は白いワイシャツに黒いスキニーズボンで黒い乗馬ブーツを履いている。黒ばっかし。


「なんだ急に入ってくるなんて失礼な奴だ。」


「すみません。昨日の事もすみません。」


「もういい。それで今日は何しに来たんだ?」


王子は本から顔を上げずに言う。仲直りをしに来ただけなのでもう用事は終わってしまった。それに5歳の子供と話す内容とか知らないわ。


「ねえ王子。カレーってありますこの国?」


「あるぞ。食いたいのか?」


「私いっつも悩むんですけど、カレー味のうんことうんこ味のカレー究極ならどっちを選びます?」


王子がパタンと本を閉じて机に置き私をやっと見た。


「なんだ!その低俗な質問は!」


「いやでも!悩みません?どっちにするか……。」


「どっちもごめんだ!」


「いやそれはそうなんですけどね。」


とコンコンと扉を誰かがノックしている。


「どうぞー。」


「お前の部屋じゃないだろ!いい加減にしろ!」


扉を開けて入って来たのは王子と同じ歳くらいの男の子だった。深い青い色の短髪で白いワイシャツにベージュのズボンに茶色の乗馬ブーツ。


「王子やん。」


「えっとこの女の子は誰?」


「知らん。知らん女だ。」


「はいどうも知らん女です。こんにちは王子様。」


「えっとぉまず僕は王子じゃないよ。それに後ろの本物の王子に申し訳ないからやめてもらって良いかな?」


首を少し傾げ困った顔をする可愛い男の子。


「王子やん。」


「だから違うからね。聞いてる話?僕はピート。裁判官の息子で王子の幼なじみだから。」


「ええそうですね王子。顔が綺麗ですね。」


「いや聞いて!本当に!」


本当に困った顔が可愛らしいがいじめるのはやめよう。


「はいはいよろしくね王子。」


「だから!」


「もう良いだろピート放っておけ。今日はどうしたんだ?誰に言われた?」


「今日は少し庭で花を見ながら散歩をしませんか?あなたの執事が勉強の息抜きをしてくださいと。」


「執事がすまなかったな。もう帰っていいぞ。大丈夫ちゃんと庭に行ったと言っておく。」


「王子……。分かりました……それでは失礼します。」


「えっ。遊ばへんの?まだ昼前やで?」


「しっ王子がそうお望みなら僕は……。」


「はーんそんなん望んでる訳ないやん!子供は1に遊び2に遊び3、4がなくて5に遊びですやん!おいてめぇら行くぞついて来い。」


「えっ。」


「さっ行きましょピート。ユーリも。」


「俺は行かないぞ。ここで本を読む。」


「ほら僕が遊んであげるから王子は……。」


私はピートの言葉を遮り言う。


「ええっやっだぁー。ユーリさんもしかして子供の遊び知らないんじゃありませんことぉー。だっさーい。」


「なんだと?」


「えぇだってぇ。一緒に来ないんですよね?もしかしてーあれぇ?」


「行く!行ってやる!」


やっぱり子供だな。


「さすが王子!やっぱり国を背負う人は違うなぁ!行きましょう!」




「でここで何を?」


ピートが私に言う。ずっと困った顔である。そうここは調理室である。


「皆の者よぉく聞け。今日のおやつは昼食の前に食ってやろうではないか!見ろ!あの机の上にクッキーがあるだろうあれを2枚ずつ取りに行こう。大丈夫シェフは窓辺で居眠りしている。起きやしないよ!」


「「えっ?」」


「だから盗賊ごっこだよ。普通するだろお母さんの目を盗みつまみ食いする。では行ってくる。」


私は音を立てずゆっくりと移動し中央の机の上のカゴからクッキーを取り2人のいる入口の傍に戻ってきた。


「さあ次はどちらが?」


「こんな事を王子にさせる訳には。」


「ユーリ、ピートはこんな事言ってるけど?」


「俺が行く!」


ユーリも私と同じルートを通って少しだけ音を立てたがシェフを起こす事なく戻ってきた。


「おおーすごーい。はいいえーい!」


と両手を出すと同じように両手を出してハイタッチをしてくれた。なんだか嬉しそうだ。


「ユーリは完璧ミッションコンプリートやな。じゃあ次ピート。」


「えっ僕?」


ピートはとても困った顔をして私を見てユーリを見た。私は頷き、ユーリは顎で行ってこいと促す。ピートは腹をくくったのかゆっくりと歩き始める。クッキーのカゴの近くに置いてあったザルを落としてしまいシェフが目を覚ましてしまった。


「なんだ誰か居るのか?」


ピートが青い顔をして机の下に隠れる。私とユーリもじっと息を殺して隠れた。


「誰もいないな。昼食までもう少し休も。」


とまたシェフが居眠りを始めたのでピートはクッキーをカゴごと持ってきた。

そしてそのまま庭まで走って逃げた。


「ハアハアすごーいピートの優勝やん。カゴごととか。」


「ハアハアああそうだな。お前が1位だ。」


「ハアハアああドキドキしたぁ。しんどい。」


と座り込む。庭は広く花だけの場所や迷路になっている場所、周りが背の高い木々に囲まれた秘密の場所があってここはその秘密の場所のようだ。


「クッキー美味しいな。あのシェフのお菓子ほんま美味しいなぁ。」


「ああ美味いな。」


「ピートもう1個ちょうだい。」


「いいよ。っていうか名前教えてくれない?」


「ああごめんごめん。私は真由。」


「真由ね。よろしく。王子とはどんな関係なの?」


「ああ婚約者だよ。ねっダーリン。」


と腕を組むとうんざりとした顔でユーリが言う。


「残念ながらな。」


「婚約者。真由様?」


「やめてきしょいから。真由って呼んで。」


「じゃあ真由クッキーもっと食べていいよあげる。僕甘いもの苦手なんだ。」


とカゴごと渡してくれる。すると横からユーリが手を伸ばしてきた。


「ほう前言った事と違う気がするな。俺は好きだから俺にもくれ。」


ピートは少し俯きユーリから目を逸らした。ふむふむピートはユーリに気を遣い自分も好きなフリをしてたようだな。5歳だしすぐにボロが出るのだろう。


「まあまあユーリ黙って食えよ。」


2人でカゴいっぱいのチョコクッキーを平らげた。私は満腹になり芝生に倒れ込んだ。


「ああー疲れたぁ。お腹いっぱいやし昼寝しよ。」


「ああいいなそうしよう。たまにはいい。」


「ええっ見つかったら怒られるよ!王子良いんですか!」


「ピート見つからんかったらええねん。」


悪い顔で言うと諦めたようにピートも寝転んだ。


「もう知らない。」


3人肩を並べて居眠りを始めた。



「はーいみなさーんお昼の時間ですよぉ。」


出たポールだ。


「おはようボール。」


「おいコラァ。一体どれ程探したと思ったんだよ。ああ?」


「ボールちゃんユーリと仲直りしたお!パフェを出すんだお!」


「出す訳がねえだろうが、散々ぱらクッキー食ったろ!今日もなしだよ!」


「酷い!嘘つき!」


「さあ帰るぞ真由。ささっ王子とピート様はお部屋へお戻りください。」


「クソがァー。」



「王子。本当に婚約者なんですか?」


「ああ残念ながらな。面白いだろ。」


「おも…ええまあそうですね。」


「また自分の言葉を出さなかったな。そんな奴が信用されると思うなよ。」


「王子…本心です。」


「どうだか。じゃあな。」


「はい。お気を付けて。」


「ふん。」




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